ロボットと仲よく暮らす未来がすぐそこに!?
「ロボット付き合い」を良くするコツ教えます。

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2023.3.20
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案内用ロボットや掃除用ロボット、配膳用ロボットなどロボットが身近な存在になってきた昨今。 製造工場で動く産業用ロボットはすでに普及期に入り、今後、ロボットと一緒に暮らす世の中になるのは必至です。では、ロボットが社会に溶け込むためには何が必要なのか。そのカギは「ロボット付き合い」にあると梅谷智弘准教授。知能情報学部でロボット研究に取り組む梅谷先生に、これからのロボットと人の関係について伺いました。

 

 

KONAN-PLANET 記者

 

梅谷先生、今日はよろしくお願いします!

 

2022年3月、甲南大学図書館のヘルプデスクに

かわいいロボットが登場したそうですね。

 

 

 

梅谷先生

 

はい、図書館お助けロボットです。

KONANプレミア・プロジェクトの一つである

『AIロボット学びプロジェクト』の一環として、

知能情報学部の学生たちによって開発されました。

 

※甲南大学「プレミア・プロジェクト」とは

 

 

 

 

 

 

KONAN-PLANET 記者

 

このロボットはどのような役割を果たしているのでしょう。

 

 

 

梅谷先生

 

図書館司書が行う業務の一部を代行しています。図書館を利用される方と音声でコミュニケーションを図りながら、蔵書を検索したり、お勧めの本を紹介したりすることができます。たとえば、PLANET記者さんがヘルプデスク前にセットされたイスに座るとしますよね。その様子をカメラで認識し、ロボットの方から話しかけます。ロボットには数パターンの会話のシナリオが用意されていて、ロボットがリードする形で利用者の要望を聞き出し、リクエストに応える仕組みになっています。

 

 


開発のきっかけは、新型コロナウイルス


 

 

KONAN-PLANET 記者

 

そもそも、どうして図書館にロボットを

導入しようと考えたのですか?

 

 

 

梅谷先生

 

新型コロナウイルスの感染拡大にあたり、図書館でもできる限り人と人が接触する機会を減らそう、ということになり、ヘルプデスクへのロボットの導入が発案されました。

 

 

 

KONAN-PLANET 記者

 

人との接触を減らすためにこんなにかわいいロボットが

導入されたとは素敵ですね!

どういう仕組みになっているのですか?

 

 

 

梅谷先生

 

本をお勧めする場合なら、利用者のリクエストをロボットが聞き取り、インプットされた音声をデータに変換してインターネット検索するという仕組みになっています。検索結果をコンピュータが読み取り、ロボットに発声させるので、できるだけ自然に人と会話ができるよう開発しました。

 

 

 

KONAN-PLANET 記者

 

たとえば、どんな工夫があったのでしょう。

 

 

 

梅谷先生

 

人の声や話し方には個人差がありますよね。同じコロナ関連の本を探す場合でも、話し方は人それぞれ違います。

 

 

 

 

 

梅谷先生

 

このように、表現は異なっていても本質的な意味が

読み取れるような認識技術を構築しています。

さらに、マスク越しの声でも聞き取れるようにテストを重ねました。

だから人と自然に会話できるのです。

 

ちなみに、ロボットを動かすプログラムはクラウド上にあります。そのため、処理はすべてインターネット回線を経由してクラウドで行われています。プログラムに使われている言語は「Python(パイソン)」です。

 

 

 

KONAN-PLANET 記者

 

ロボットが実際に稼働するまで

どれくらいの期間がかかりましたか?

 

 

 

梅谷先生

 

3名の学生が開発に携わり、初期構築に約3か月、それから2か月ほどテストと調整を繰り返しました。とはいえ、担当するのは学生ですから、一日中作業にかかりっきりだったわけではなく、実際の開発時間はかなり短く抑えられています。

 

 


ロボットを賢く動かすには、状況とニーズの把握が必要。


 

 

KONAN-PLANET 記者
KONAN-PLANET 記者
ロボットはどうすれば賢く動くようになるのでしょう。

ロボットを賢く動かすために何より必要なのは、ロボットが置かれる場所と使われる状況、そして使われ方などを事前にしっかり把握しておくことです。図書館のヘルプデスクロボットの場合は、ロボットの利用者である図書館職員の方々にロボットを理解してもらうと同時に、どのようなサポートが望ましいのかニーズを聞き出す必要があります。
梅谷先生
梅谷先生

KONAN-PLANET 記者
KONAN-PLANET 記者
確かに、置かれる場所や使い方によって求める機能が違ってきますよね。

利用者にイスに座ってもらう理由は、相手が立っているとロボットが認識しづらいからです。座るか立つかは、人間にとっては些細な問題ですが、ロボットにとっては大違いなんですね。このようなきめ細かなシチュエーションの設定が、ロボットをスムーズに動かすための重要なカギとなります。
梅谷先生
梅谷先生

また、最優先すべき課題は、図書館利用者のリクエストに的確に対応することです。そのために、まずはロボットが対応しますが、ロボットだけで対処しきれない場合は図書館職員を呼ぶなどの措置も必要となります。

そもそもコンピュータは融通が利かず、プログラムした通りに動く機械です。だから、プログラムがきちんと挙動するためのお膳立てを、人が十分に考えておかなければならないのです。

梅谷先生
梅谷先生

KONAN-PLANET 記者
KONAN-PLANET 記者
ロボットの設置後は問題なく稼働しているのですか?

これまで8か月ほど稼働し続けてきましたが、ソフトのバージョンアップやセキュリティ関連のバージョンアップの際に一時的に止めたほかは、基本的に大きなトラブルもなく動き続けています。それも、事前の状況を把握して開発したおかげだと思っています。
梅谷先生
梅谷先生

 

 


ロボットとの「付き合い方」は人が決める


 

 

KONAN-PLANET 記者

 

これから、人とロボットの関係は

どうなっていくのでしょう。

 

 

 

梅谷先生

 

今後は、日常生活のさまざまなシーンでロボットが活用されるようになるでしょう。とはいえ人が、ロボットに使われるような世界には、絶対にしたくありません。あくまでも人が、ロボットを使うのです。

 

これから登場するロボットについては多種多様なものが考えられます。中には、映画に出てくるような人型アンドロイドに近いものが出てくる可能性もあります。そんなロボットからサービスを受けるときでも、「このロボットを使っているのは人間だ」という認識をもつ必要があります。確かにロボットは自動で動くけれども、最初にその動き方を決めるのは人なのです。

 

 

 

 

 

KONAN-PLANET 記者

 

ロボットの先には人がいることを忘れないようにします!

 

 

 

梅谷先生

 

ロボットたちとのかかわり方、つまり「ロボット付き合い」は、これからの社会の重要課題となります。ロボットがどんどん人に近づいてくると、そもそも「人とはなんぞや」という問いに向き合う必要も出てくるでしょう。まさにロボットを通して人を知る社会が、すぐそこまで来ています。

 

良いロボット付き合いをし、

ロボット技術を社会で活用していけば、

人の多様性がより生かされる社会になると思います。

 

例えば、言語や身体的特徴の違いといった「人と人の違い」をロボットを活用して補っていけば、誰もが暮らしやすい社会になる。そんな未来を見据えて、研究に励んでいます。

 

 

 

KONAN-PLANET 記者

 

今やロボットがいる生活はあたりまえ。

良い「ロボット付き合い」をして、

より豊かな社会を目指していきたいですね。

 

 

 

本記事は学園広報誌『KONAN TODAY NO.63』に 掲載中の「甲南アカデミア」を再編集しています。

今回お話しを聞いた人
知能情報学部 知能情報学科 准教授 梅谷 智弘

大阪大学大学院基礎工学研究科システム人間系専攻博士課程修了。前職の名古屋市立大学助教時代にデッサンから製品設計やプロダクトデザイン演習など、デザイン教育にもかかわっていたこともあり、今も趣味は美術館巡り。優れたデザインをたくさん見てインプットすることが、ものづくりにも生きている。

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