
あなたも社会起業家に!?
社会課題をビジネスで解決するソーシャルビジネスの今。
社会課題をビジネスで解決するソーシャルビジネスの今。
最近よく耳にする「ソーシャルビジネス」。さまざまな社会課題を解決する糸口として注目されていますが、ちゃんと説明できる人って、意外と少ないのでは?そこで、甲南大学で2023年10月14日に開催された「SOCIAL BUSINESS FES HOPE2023」を主催する株式会社ボーダレス・ジャパンの竹下友里絵さんにインタビュー。社会起業に興味のある人も、自分で何かを始めたい人も ピンとくるヒントが見つかるかも・・・・!?
ソーシャルビジネスとは
KONAN-PLANET 記者
竹下さん、今日はよろしくお願いします!
竹下友里絵さん
よろしくお願いします。
KONAN-PLANET 記者
まず、自己紹介からお願いしてもいいでしょうか。
竹下友里絵さん
私は、株式会社ボーダレス・ジャパンの事業開発局で、いろいろなソーシャルビジネスの立ち上げに取り組んでいます。ボーダレス・ジャパンは、ソーシャルビジネスを通じて社会問題の解決に取り組む社会起業家たちが集まる共同体です。10月に甲南大学を会場に開催された「SOCIAL BUSINESS FES HOPE2023」には企画の段階から関わりました。
KONAN-PLANET 記者
ソーシャルビジネスについて、 わかりやすく教えていただきたいのですが・・・
ソーシャルビジネスは「社会課題の解決」が最優先
「利益の追求のみを目的として進める仕事」がビジネスと定義されてきたのに対して、ソーシャルビジネスは「社会問題の解決を、利益の追求と両立しながら実現する仕事」をいいます。一般的なビジネスでは主に「利益の最大化」を追求しますが、ソーシャルビジネスは「社会問題を解決すること」を最優先に考えます。
KONAN-PLANET 記者
なるほど、「社会課題の解決」がキーワードなんですね。
竹下友里絵さん
そもそも、始まる「起点」が違います。一般的なビジネスは暮らしていく上での不満や不便、不快を解決したいとか、市場規模が見込めるから、というところから始まりますよね。ソーシャルビジネスは、貧困問題や地球温暖化、限界集落、人種・性差別、難民問題など、社会の不条理から生まれる「社会課題を解決したい」というところが起点になるので、「どんな問題を解決するのか」がスタート地点になります。
KONAN-PLANET 記者
非営利のNPOとは違うのでしょうか。
竹下友里絵さん
社会課題をビジネスの力で解決するので、ソーシャルビジネスは「営利」です。利益の追求もするけれども、社会課題の解決も追求する、その両立が重要になります。ビジネスの力を使って、さまざまな課題を持続的に解決できるのであれば、社会としてもその方がいいですよね。
KONAN-PLANET 記者
ソーシャルビジネスという概念は、いつ頃から始まったのでしょうか。
2006年、グラミン銀行のノーベル賞受賞がきっかけに
ソーシャルビジネスは、1980年代頃のイギリスで始まったといわれています。 日本では、1998年の特定非営利活動促進法(NPO法)の施行をきっかけに、ソーシャルビジネスの動きが始まりました。 「ソーシャルビジネス」という言葉と概念が世界で広く知られるようになったのは2006年。バングラデシュのグラミン銀行とその創設者のムハマド・ユヌス総裁にノーベル平和賞が贈られたことで、より多くの人に知られるようになりました。
具体的なソーシャルビジネスの事例紹介など
KONAN-PLANET 記者
ボーダレス・ジャパンでは、現在、
どのような事業が立ち上がっているのですか?
竹下友里絵さん
現在、世界13ヵ国で48の事業が稼働しており、年間の売上げは2022年度で75億円に上ります。領域は貧困や差別、環境問題など多岐にわたります。いくつか紹介しましょう!
バングラデシュの貧困問題を産業で解決
BLJ Bangladesh Corporation
北海道ほどの面積に1億6000万人が住むバングラデシュは、主な産業がなく貧困問題が多発。人びとの貧困を解決するために、何か産業をつくっていけないかと現地に渡ったところ、宗教上の関係で牛革が大量に余っていることに着目。革小物製造の事業をスタートし、現地で製造し日本国内で販売している。家族のために出稼ぎに来ている人やシングルマザー、障がいのある人など、社会的に厳しい状況におかれた人を未経験から革職人へと育て自立をサポート。自社工場では900人を超える職人たちが、革小物やバッグの製造を行っている。
自然エネルギー100%の社会の実現へ
ハチドリソーラー
初期費用0円の太陽光発電サービスを提供し、自然エネルギー100%の電力を供給。個人・企業・地域が自然エネルギーの普及に関われる仕組みを創ることで、自然エネルギー100%の社会を実現を目指す。
家畜の健康に配慮した自然放牧
宝牧舎
動物福祉をテーマに、妊娠しづらくなったなどの理由で農家が手放した母牛を、自然の中で放牧。雄牛との自然交配により再び繁殖ができるようにして、自然の中で家畜と人間が共生する牧場を創造する。
建築業界を、もっとサスティナブルに
HUB&STOCK
建築業界の課題である資材ロスを削減するため、工事会社から余剰資材を回収し、新たなユーザーへ提供。資材をリユースすることで廃棄物を減らし、資源を有効活用し、資源循環の文化を創造している。
具体的なプランニング方法

KONAN-PLANET 記者
学生や社会人のなかにも、社会起業家になりたい人がいます。
まず、何から始めたらいいでしょうか。
竹下友里絵さん
やはり大事なのは、しっかりとした「ソーシャルコンセプト」があるかということです。コンセプトを導くために、私たちが使っているシートをご紹介しますね。
というような流れで「ソーシャルコンセプト」を導き出します。コンセプトが明確になったら、それを実行するうえで「必須となる条件」が出てくるので、それを押さえたうえで、どういうビジネスモデルを使って解決していくのかを考えていきます。
ボーダレス・ジャパンの目指すこと
KONAN-PLANET 記者
ボーダレス・ジャパンが目指していることを教えてください。
社会の課題を、みんなの希望へ変えていく
社会を変えるという大きな目的はあっても、一人で変えることはやっぱり難しい。そうしたなかで私たちは、「社会の課題を、みんなの希望へ変えていく」を合い言葉にひとりではできない大きなことを、仲間とともにやっていこうとしています。仲間である起業家たちは、出資から事業のプランニング、ノウハウの共有、アイデアの助け合い、法務や経理のバックアップ、仲間とのつながりまで、さまざまなサポートを受けることができます。
また、新たな社会起業家の挑戦をサポートする取り組みとして「ボーダレス・アカデミー」があります。5年間で400人が参加し、卒業生たちが各地で頑張っていますよ。学割もありますので、みなさんもぜひチャレンジしてください!
大学生へのメッセージ&竹下さんの経歴

KONAN-PLANET 記者
ちなみに、竹下さんは、どうしてこの道に入られたのですか?
竹下友里絵さん
もともと国際協力に興味があって、大学は総合政策学部で学びました。そこで、「社会課題を解決するならビジネスの持続可能な力を使って解決したい」と思ったのがきっかけです。大学を一年休学してフードロスの解決に取り組む会社のインターンとしてソーシャルビジネスを体験し、自分でも起業したいと思い、ビジネスコンテストに参加。フードロス問題をなくすために規格外野菜を販売するという企画でボーダレス・ジャパン賞をいただき、大学卒業直前に当社の出資を受け起業しました。神戸で4、5年事業をしていましたが、いろいろな意味で限界が見えてきて、もう一度学び直したいとボーダレス・ジャパンに入社しました。
KONAN-PLANET 記者
ご自身もそんな経歴があったのですね。 大学生のみなさんにメッセージをお願いします。
竹下友里絵さん
大学生はいろんなことを経験できる期間でもあるので、関心がある会社にインターンに行ったり、そのサービスや体験にふれてみたり、最初のステップはそういうところから始めるといいと思いますよ。
イベントについて
KONAN-PLANET 記者
甲南大学で10月14日に 「SOCIAL BUSINESS FES HOPE2023」というイベントを開催されたと聞きました。どのようなイベントだったのでしょう。
「できっこない」を「できっこある」に変えていこう
メインメッセージは「社会に希望を作る100のアイデアと出会う」で、当社の48事業の全社長が集合しました。いろんなアイデアと出会うことで、「できっこない」を「できっこある」に変えていこう、がテーマです。トークセッションは、事業アイデア、経営者のリアルな声やお金の話など、さまざまなテーマで展開しました。ソーシャルビジネスに気軽にふれて、何かしらヒントを得られる場となりました。
KONAN-PLANET 記者
なぜ甲南大学で開催することになったのですか?
竹下友里絵さん
私が神戸出身でもあり、全国開催する中でぜひ神戸でやりたいと思ったんです。甲南大学さんはTEDxKobeの会場にもなっていてソーシャルビジネスに力を入れている印象があり、お声がけさせていただきました。快く引き受けていただき感謝しています。
〈当日の様子〉
これからのソーシャルビジネス

KONAN-PLANET 記者
最後に、これからのソーシャルビジネスは どうなっていくと思われますか。
社会全体として、ソーシャルな視点は要素として取り入れなければならない風潮になってきていると思います。 アパレルの大量廃棄や農業の児童労働などにも注目が 集まっていますし、これからは、きちんとしたものづくりを しているところが選ばれ、残っていくでしょう。 SNSで製造の裏側を知れるようになったために、 まず消費者が黙っていませんよね。 これから、ますます事業に社会課題が含まれていることが 当たり前になり、ソーシャルビジネスと 一般的なビジネスの垣根がなくなっていくかもしれませんね。
2022年、新たなリカレント教育プログラムとして、「ソーシャルビジネス・アントレプレナー育成プログラム」を開講しました。このプログラムは、「地域社会の課題解決や新たな魅力を創出するスモールビジネス(=地域社会のためのスモールビジネス)」を受講生が実際に実現することを目標にした実践型の起業家育成プログラムで、地域の魅力づくりや課題の解決に向けたビジネスを始めたい受講生の学びを支援しています!
↓詳しくはこちら!↓