【甲南のリカレント教育】
「地域社会に彩りを加える、小さなビジネスを創り出そう」
ソーシャルビジネス・アントレプレナー育成プログラム
受講生インタビュー

みんなの「世界」をおもしろく > スタディー
2024.3.21
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「人生100年時代」。刻々と変化する社会や経済環境の中で、充実した人生を送るためには、時代に即した新たな知識を身につけ、学び続けることが重要です。甲南大学では、これまで培ってきた教育力を結集し、2020年にリカレント教育センターを開設しました。学びを通じてより豊かな人生を送るために、社会人の学び直しのためのリカレント教育を実施しています。
今回は、プログラムの1つで2022年9月に開講した「ソーシャルビジネス・アントレプレナー育成プログラム」に注目し、受講生のお二人にそれぞれの取り組みについてお話を伺いました。

 

 

 

「ソーシャルビジネス・アントレプレナー育成プログラム」とは?

 

「社会のために何かをしたい」

 

 

本プログラムは、「地域社会の課題解決や新たな魅力を創出するスモールビジネス(=地域社会のためのスモールビジネス)」を受講生が実際に実現することを目標にした実践型の起業家育成プログラムです。 地域や身近な人のために何か始めたい、という意欲のある人が本プログラムを受講し、地域の魅力づくりや課題の解決に向けたビジネスを始めることで、兵庫・神戸の活性化につなげることをめざしています。ビジネスの立ち上げに必要な知識・思考力を習得し、ビジネスの実現に向けて専門家チームの助言が受けられます。

※2024年度は2024年9月17日から2025年9月16日の1年間で開講予定

 

 

 

KONAN-PLANET 記者

 

今回は1期生と2期生のお二人にお話を伺います。

 

 

 

 

 

KONAN-PLANET 記者

 

本プログラムを受講したきっかけを教えてください。

 

 

1期生 松井 有里加 さん

 

会社勤めをしていたころ、二度の出産を経験しました。配偶者は単身赴任中で、頼れる身内も近くにおらず、ワンオペ育児の日々が続きました。気づけば子育てを楽しむどころか負担に感じることも増え、「このまま会社勤めをしながら育児を続けていいのか」と思うようになり、「同じように孤独で辛い思いをしているママたちをサポートできたら」「住んでいる地域で仕事ができたら」と考えていたころ、出合ったのが本プログラムでした。

 

 

2期生 森實 香苗 さん

 

私は甲南大学を卒業し、卒業生に郵送される学園広報誌「Konan Today No.62」に掲載された本プログラムの紹介記事を見たことがきっかけでした。息子は難病による知的障がいがあり、地域の中学校か特別支援学校のどちらへ進学するか、また、その先の将来にある就労についても考えていたころでした。夫婦で「いつか障がいのある人もない人も一緒に働ける場をつくれたら」と話していたこともあり、本プログラムの受講が障がい者のための働く場づくりに役立つのではと思い、出願を決めました。

 

 

KONAN-PLANET 記者

 

ご自身で検討中のビジネスプランについて教えてください。

 

 

1期生 松井 有里加 さん

 

「ママたちをサポートしたい」

自分自身を振り返りながらビジネスプランをかたちに

受講によって、より強く意識するようになったのが、それまで漠然としていた「ママたちのサポートをしたい」という思い。実現したいビジネスプランをまとめるにあたり、グループワークや研究発表などを通して、自分の考えを突き詰めていく機会が何度もありました。育児中は仕事との両立が大変で、ホッとできる時間がほしかったこと。子育ては身体が資本と痛感して、育休中にヨガトレ®インストラクターの資格を取得したこと。当時の自分を振り返り、考えをまとめて「ママたちがいつでも立ち寄ることのできる場をつくりたい」と中間発表でプレゼンテーションしました。受講生には、お子さんのいる男性や起業した大学生などさまざまな立場の人がいて、自分では思いもよらない視点の意見をいただけます。おかげで「一人でやろうとせず、誰かの力を借りてはどうか」「どんな場所ならママたちがホッとできるか」など、実現に向けてより具体的に考えるようになりました。

 

 

2期生 森實 香苗 さん

 

必要とする人に情報が届いていない。

問題としっかり向き合い、取り組むことで見えてきた課題

20年間、三児の子育てに専念してきた私は、正直なところ、起業なんて自分にできるだろうかと不安もありました。しかし、開講式で石川路子先生(プログラムコーディネーター)の「起業は夢の実現のための手段の一つ」「本当にしたいことは何かを考えることが大事」ということばに背中を押され、挑戦してみることに。 「障がい者が働ける場づくり」を考えようと思ったのは、就労の面で障がい者には壁があり、経済的な面で不安を感じたからです。障がいがあってもやりがいを感じて働きたいと考える人が、それぞれ特性を生かして働ける場を作ることを目標にプログラムを受講し、情報収集も行いました。すると私が知っていた以上に、障がい者就労についてさまざまな取り組みがされているとわかりました。障がい者の家族であっても知らなかった情報がたくさんあり、必要とする人に情報がどれだけ届いているのか、障がいのある人が自立生活を送るうえでの課題として感じました。「情報を必要としている人へ届けたい」「たくさんの人に助けられてきたからこそ、今度は誰かの役に立ちたい」と、考えるようになりました。

 

 

 

KONAN-PLANET 記者

 

プログラムの受講によって、ご自身の考えられていたビジネスプランに変化などありましたか。

 

 

1期生 松井 有里加 さん

 

拡張プランを受講する中で実現へと動き始めたビジネスプラン

アドバイスを得て念願のイベント開催へ

私のように身内が近くにいないなど、ママたちは頼る先の少ない中で、いつも気を張っています。ママ同士が集まって悩みを共有できるような、ホッとくつろげる会を開きたいと考えました。プランは明確になったものの、実現するために何 から手をつければ良いのかはわかりません。拡張プランには講師と一対一で相談する時間があり、アドバイスをいただいたことが参考になりました。市の窓口を教えていただき、すぐに向かうと開催場所の提供や助成の仕組みなどを知ることができました。そして昨年秋、「身体と心をととのえて安心して子育てをスタートできるお手伝い」を目的に、同じ志をもったママ友と「ととのうフェス」を開催。産休中に取得したヨガトレ®インストラクターの資格を生かした体を整える運動や、キッチンの収納をプログラムに盛り込み、温かい手作りのランチを食べながら、参加者のママたちと子育ての悩みなどゆっくり語り合いました。

 

 

 

2期生 森實 香苗 さん

 

障がいのあるなしは関係なく

すべての人に共通する「食」を通してがんばる人を応援したい

障がいのあるなしは制度上区分されており、障がいのある人は守られ、支援されています。しかし、障がいがあるからといって支援されるばかりではなく、環境や状況によっては、個々の特性を生かしてできることもたくさんあります。それなら環境や状況のほうを変えていくことで、障がいのあるなしに関係なく、みんなが支え合って生きることができるのではないでしょうか。そんな思いから、次第に私はがんばる人みんなを応援したい、と考えるようになりました。今、すべての人に共通する「食」を通じた活動で、誰もが特性や個性を生かして働くことができ、かつ情報交換もできるような場をつくれないかと考えています。受講によって自分の考えを整理し、実際にビジネスプランを立てた経験が、今後プラスとなってくると思います。

 

 

KONAN-PLANET 記者

 

受講を経て、印象に残っていることや今後の取り組みの目標などを教えてください。

 

 

1期生 松井 有里加 さん

 

「起業だけがゴールではない」

自分が何を問題としているか、どのように解決していくかが大切

受講当初は「ビジネスとして稼ぐ仕組みをつくらなくては」と肩に力が入っていました。しかし先生が常々おっしゃっていたのは「起業だけがゴールではない」ということ。生活の中で自分自身が何を問題としてとらえているのか、どう解決していくのかを考えることが大切だと教わりました。受講することで、自分が何を感じ、どんな社会を実現させたいのかを徹底的に考え、自分と向き合う時間をもてたことが貴重であり、人生の棚卸しになったと思います。これからの自分が進むべき明確な目標ができたことで、人生がさらに楽しくなりました。

 

 

2期生 森實 香苗 さん

 

受講は家族にとってもプラスに

夫や息子の世界を広げ、私の学びたい意欲も深まりました

受講によって家族にも良い影響がありました。物流関係の仕事に従事している夫は、人手不足の解決策として開発を進めるロボット機器を、誰でも簡単に操作できる仕様にすることで障がい者雇用につなげようと動き始めました。私が受講生の方から教わった「LLブック」は、知的障がい者や日本語が得意でない方など誰にとっても読みやすい本で、息子の読書の幅を広げてくれました。私自身、誰でも読む権利、知る権利があると改めて痛感し、受講生の方と一緒にグループでLLブックを広めるイベントを企画中しました。もっと学びたいと意欲が湧き、プログラム修了後は拡張プランも出願するつもりです。

 

 

KONAN-PLANET 記者

 

さまざまな学びがカタチになるほど、 今後の活動にも注目ですね!

本日はありがとうございました!

 

 

 

リカレント教育プログラムに関する詳細は 甲南大学 社会連携機構 リカレント教育センターのホームページをご確認ください。

 

本記事は学園広報誌「Konan Today No.65」に掲載中の「今だからわかる学びの楽しさ、いくつになっても成長できる喜び リカレント教育プログラム」に掲載の「ソーシャルビジネス・アントレプレナー 受講生インタビュー」を 再編集しています。

 

 

 

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