
1. アリ科女王の長期間にわたる大量の精子貯蔵メカニズム
アリ科女王は寿命の分だけ精子を内部生殖器である「受精嚢」という袋状の構造の中で生かしたまま貯蔵します。
彼女らの寿命はとても長く、多くの種で10年以上(記録では30年の種も!)生きます。つまり、それだけ長い間精子を常温で貯蔵できるということで、そのメカニズムを探っています。今はこれがメインの研究です。
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2. 社会性ハチ目昆虫(アリ・ハチ)の受精嚢形態とカースト差
社会性をもつアリやハチ(社会性ハチ目昆虫)では、繁殖メス(女王)は羽化後すぐの限られた時期にしか交尾しないため、交尾から死亡するまでの期間、コロニーを形成するのに十分な精子を一度に貯蔵する必要があります。社会性が発達した種ほど大きなコロニー(=膨大な精子数)とコロニー寿命の長期化(=女王の精子貯蔵期間の長期化)がみられるため、精子を長期間にわたり、大量に貯蔵するという特徴が社会性の発達に必要不可欠であったといえます。一方、機能的な受精嚢を失ったメスはコロニーの主要メンバーである娘を生産することが不可能であるため、機能的な受精嚢を持つことはメスが繁殖者としてふるまうために必要です。そのため、社会性ハチ目昆虫では、繁殖メスと非繁殖メスの受精嚢の形態や機能差は本質的なカースト差であるといえます。本研究では社会性ハチ目昆虫の受精嚢のカースト差がどの程度かを網羅的に調べ、それらの形態がどのような形態形成過程を獲得したことで進化したかを調べています。
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3. アリ類オスの精子形成が中断されるメカニズム
多くの動物のオスは生涯にわたって精子を作り続けますが、社会性膜翅目(アリ、ハチ)のオスは、幼虫期や蛹期に精子生産を停止します。これは、少ない交尾機会と短い寿命により、過剰に生産する必要がないからだと考えられます。
一部の種では、例外的に、精子をつくり続けるオスとつくり続けないオスが同一巣内に共存しており、これらは幼虫期に環境によりどちらのオスになるかが決定します。繁殖戦略によって精子形成プログラムを変更しているという点で進化発生学的に興味深いので、オスの精子が中断されるメカニズム、されないメカニズムを分子生物学的・生理学的に明らかにしようとしています。

4. アリ類における繭の形質の多様性と機能
多くの昆虫は繭を形成して蛹期を過ごします。
アリ科では、繭をつくる種とつくらない種がおり、つくる種の中でも繭の形態、糸の太さ、色、強度(密度)が近縁種であっても多様で系統と一致しません。繭は病原菌や捕食者への抵抗に機能していると考えられますが、実際にそれぞれの種でどのように機能しているのでしょうか?本研究は、繭の形成コストと病原菌の関係や社会性昆虫のコロニーレベルでの病原菌への抵抗進化という点から興味深いので、誰か研究しませんか?
右図:ハリアリ亜科に属する種の繭。上段の左からLeptogenyssp. 28、L. mutablis、L. parvula。
下段の左から、Pachycondyla leeuwenhoeki、Odontomachus rixosus、Hypoponera sp.。
