光で水からエネルギーを生み出す材料をつくる。理工学部機能分子化学科 池田 茂(触媒化学、光化学、電気化学)

光触媒を用いて水から水素をつくる研究を進め、触媒化学・光化学・電気化学の分野で活躍する池田茂教授にお話を伺いました。

About Me ( IKEDA Shigeru )

はじめまして、池田 茂(いけだ しげる)です。私は、太陽の光エネルギーを使って、水から水素というクリーンなエネルギーを取り出す材料の研究をしています。ちょっと難しそうに聞こえるかもしれませんが、「光の力で水を分解して、エネルギーに変える」というアイデアを、化学の力で形にしようとしています。これまでに、東京工業大学で博士(理学)を取得したあと、北海道大学や大阪大学でエネルギーや材料に関する研究・教育に取り組んできました。2016年からは甲南大学で教員として働き、2026年に始まる「環境・エネルギー工学科」の設立にも関わっています。

これからの社会では、地球にやさしいエネルギーの使い方がとても大切になります。私は、光や材料の性質を上手に使って、太陽のエネルギーをもっと有効に活用できる未来をつくろうと考えています。みなさんも一緒に、材料科学の可能性を広げていきませんか?

Research

私の研究では、「光」や「材料」の力を使って、環境にやさしいエネルギーを生み出す方法を探っています。なかでも、水を光で分解して水素を取り出す光触媒や、太陽電池につかう材料の研究に長く取り組んできました。たとえば、太陽の光で反応する半導体材料に、電子の動きを助けるような“仕掛け”を加えて、より効率よく水素をつくるための工夫をしています。材料の表面に別の材料をくっつけたり、ナノサイズ(とても小さなサイズ)の構造をつくったりして、性能を高めています。
また、これまでにはこんな研究にも取り組んできました。

かんたんな方法でつくる次世代の太陽電池
銅やインジウム、ガリウム、セレンからできた「CIGS薄膜太陽電池」は、軽くて発電効率もよく、将来の太陽電池として注目されています。私は、特別な装置を使わずに、スプレーや電気を使って材料をつくる“かんたんな製造法”を研究していました。また、使われる材料の中にある貴重な金属を、もっと身近で安全な元素に置きかえる工夫もしていました。

ナノ構造を使った新しい触媒づくり
とても小さな金属や酸化物の粒子を、炭素やシリカ(ガラスに近い物質)のうすいカプセルで包んだ「触媒」をつくる研究も行ってきました。この構造にすると、材料が長持ちしたり、必要なガスだけを通して反応させたりすることができます。空気のよごれを分解する材料としても役立つ、応用の広い技術です。

これらの研究は、「どうすれば太陽のエネルギーをムダなく使えるか」「材料の力でエネルギーや環境の問題をどう解決するか」といった、とても大きなテーマにつながっています。材料科学を通じて、持続可能な社会をつくる未来を目指しています。

KONAN’s Value

甲南大学のいいところは、学生と先生の距離がとても近いことです。研究室に入った学生とは、一緒に実験をしたり、なぜこうなるのか、どうすればもっと良くできるかといった本質的なことを一緒に考える時間を大切にしています。

2026年から始まる「環境・エネルギー工学科」では、「材料」だけでなく、「エネルギー問題」や「データサイエンス」など、これからの社会で必要とされる視点を幅広く学べます。自分の関心を深めたい人、身近な問題に取り組んでみたい人には、きっと楽しくてやりがいのある学びの場になるはずです。私たちと一緒に、未来のエネルギーをつくる研究に挑戦してみませんか?

Private

高校時代は陸上部で、800 m走を専門にしていました。大学に入ってからはスキーにはまり、大学院生のころから北海道大学に勤めていた時代までは、毎週末スキー場に通っていたほどです。雪質の良い北海道でのスキーは、今でも大切な思い出です。
その後、大阪大学に移ってからはスキーに行く機会が減り、健康のためにジョギングを始めました。気がつけば、フルマラソンだけでなく、100 kmのウルトラマラソンや山の中を走るトレイルランニングにも挑戦するようになりました。自然の中を走ると、頭がすっきりして、自分と向き合えるような時間が流れます。今は少しお休みしていますが、また走りたくなる日が楽しみです。
研究もランニングも、「昨日の自分を少しだけ超える」という点では、どこか似ているところがある気がしています。

Profile

理工学部機能分子化学科 教授
※2026年度より
理工学部環境・エネルギー工学科

池田 茂

IKEDA Shigeru

学位
博士(理学)[東京工業大学]

専門分野
触媒化学、光化学、電気化学など

経歴
北海道大学助手、大阪大学准教授などを経て、2016年より現職

所属学会
日本化学会、応用物理学会、触媒学会、ニューセラミックス懇話会、日本太陽エネルギー学会 など

研究室サイト
https://www.chem.konan-u.ac.jp/MCP