特定プロジェクト研究所紹介

概要

プロジェクト研究所は、本大学の専任教員(特任教授を含む。)が企業・官公庁・公的機関等から獲得した研究資金によって、一定期間、研究活動を推進するにあたり、本大学の研究活動の強化及び新研究教育分野の展開に役立つことを目的として、当該の研究プロジェクト名を冠して設置されています。

非電離放射線生体環境総合研究所

所長(フロンティアサイエンス学部 准教授) 臼井 健二

ICT(Information Communication Technology)は、クラウド技術やSNSなどの発達に伴い、現代社会の生活基盤となっています。その中核的技術が非電離放射線に関する技術です。しかしその非電離放射線は、WHOが発がんリスクを指摘したり、渡り鳥への影響が指摘されたりと、生物学的な安全性が未だに議論されており、科学的な基礎研究が求められています。一方で、非電離放射線の安全利用の観点からは、その基準や評価方法が電波防護指針等で規定され、有効利用の観点からは、周波数の割り当てや出力の規制などが電波法等により規定されており、社会制度としての再整備も求められています。非電離放射線は情報通信機器などへの利用に留まらず、医療機器や自動運転の車など、様々な機械・機器への展開が期待されており、今後もさらに我々の生活に不可欠の存在となっていくと考えられています。その上で、人体への安全性の確認や医療・生体環境分野、ナノバイオ分野など他分野への有効利用促進を図ることは、今後の社会・経済の発展にも資するものであり、なによりも我々の生活をより豊かにしてくれるものと期待されています。当研究所は、非電離放射線がもたらす生体環境への影響、効果について、科学的基礎研究を行い、その知見から、応用開発・発明、社会制度の整備や政策提言など、様々なかたちで非電離放射線の安全・有効利用を推進する研究を行っていくことを目的とし、その活動や成果を学部・大学院の学術教育・キャリア教育にも反映させていきます。

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ヒトの健康科学研究所

所長(フロンティアサイエンス学部 教授) 西方 敬人

マクロファージは、生体防御の最前線で異物を貪食する細胞であり、ガンやアレルギーの治療に活用できる細胞として注目されています。皮膚の真皮細胞も異物を貪食し、外界からのバリアとして重要な細胞です。これらの利用も含めた細胞レベルの研究は、免疫や代謝、抗老化をターゲットとした研究基盤としても重要であり、予防・先制医療の視点に立った応用研究としての価値も高いです。当研究所は、ヒトの健康寿命を延ばし、QOLの高い生活をもたらすことに資する知見と製品を提供することを目的とし、医学分野や美容分野に貢献し、その活動や成果を学部・大学院の教育にも反映させていきます。

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統合ニューロバイオロジー研究所

所長(理工学部 教授) 日下部 岳広

近年の技術革新により、生物学はめざましい進歩をとげています。その一方で、先端化と細分化が進み、全体を見通すことが難しくなっています。生命現象は分子・ゲノム・細胞のレベルから個体、集団、地球環境にいたるまで連続的で、どれか一つを取り出して詳しく理解しただけでは、大切なことを見落としてしまう恐れがあります。ここで必要とされるのが、各分野の深い知識を基礎としながらも、全体を概括的に評価する統合生物学の視点です。統合ニューロバイオロジー研究所は、統合生物学の視点から「動物個体が環境の変化に対して応答し順応するしくみ」を理解することを目指しています。生物が環境の変化に対して応答し順応するしくみの理解は、地球環境の変化やヒトの医療・健康につながる重要な課題です。シンプルなモデル生物である酵母・シロイヌナズナ・線虫・ショウジョウバエ・ホヤ・メダカ等を用いて、生命科学に関連する多様な分野の研究者の連携による共同研究を推進し、生物が環境変化に応答し対処するしくみを解明します。また、理工学部や大学院自然科学研究科と連携し、専門性と広い視野を兼ね備えた人材を育成します。

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歴史文化研究センター

所長(文学部 教授) 東谷 智

2017年5月1日、甲南大学は東大阪市と受託契約を結び、東大阪市域の古文書について整理・調査を行い、その結果を市民への普及を行うこととなりました。 プロジェクトを進めるための「特定プロジェクト研究所」として、文学部歴史文化学科・東谷智研究室内に「歴史文化研究センター」が設置され、東谷を研究代表者として学外研究者の参画も得て、調査・研究を進め、成果を報告書としてまとめるほか、市民への還元として講演会や市役所でのパネル展示やなども予定しています。

エネルギー変換材料研究所

所長(理工学部 教授) 町田 信也

様々な形態のエネルギーを相互に変換する科学・技術は我々の生活を豊かにするためには欠かせないものです。たとえば、電気工ネルギーを化学物質のエネルギーに変換して蓄えるとともに、その逆変換により電気工ネルギーとして取り出す蓄電池、光エネルギーを電気工ネルギーに変換する太陽電池、ならびに光エネルギーを化学物質のエネルギーへと変換する光触媒などは、その例です。
本研究所では、エネルギー変換に係る科学技術について研究を進めることを目的として、各種エネルギー変換を行う上で必要となる材料を中心に、関連企業とともに研究を進めています。また、その成果を特許や論文、学術講演などを媒体として社会へ公表するとともに、甲南大学生・大学院生を主なる対象として啓蒙し、エネルギー関連分野への理解を促しています。

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核酸医薬研究所

所長(フロンティアサイエンス学部 教授) 川上 純司

DNAとRNAは核酸と呼ばれ、あらゆる生物の中でタンパク質の設計図として利用されています。これまでの医薬品は病気の原因となるタンパク質を標的とし、そのタンパク質に結合して機能を増強したり抑制したりする化合物が探索され、利用されてきました。しかし、人間の体の中にある数万種類ものタンパク質の中から標的タンパク質にだけ結合する化合物が見つかることは稀であり、通常は目的以外のタンパク質にも結合してしまい副作用をもたらします。核酸医薬品は、一本鎖核酸が自分の運命の相手(相補鎖核酸)とだけ結ばれて二重らせん構造を形成する性質を利用し、タンパク質の設計図(遺伝情報)を標的とするため、既存の医薬品よりも特異的に標的タンパク質を抑制することができ、副作用がほとんどない医薬品になると期待されています。本研究所では、30以上の産官学の研究機関と協同して、どのような戦略で分子設計すれば優れた核酸医薬品となるかを明らかにし、これまで効果的な薬がなかった様々な病気に対する治療薬開発に資する情報の提供を目指して研究を進めます。得られた成果は広く社会に還元するだけでなく、本学の学部生・大学院生の教育にも活かします。

フォール・プリベンション・リサーチ・センター

所長(全学共通教育センター 教授)曽我部 晋哉

我が国は、世界でも稀に見る超高齢化社会に突入しようとしています。2022年、65歳以上の人口割合は28.7%であり、実に3.5人に一人が高齢者です。23年後の2045年には、総人口の36.8%が65歳以上の高齢者が占め、高齢者と生産人口(15~64歳)の比率は、1:1.4となります。長期化する介護の問題は、今後私たちの社会に大きな問題となることが予想され、高齢化社会において避けて通ることは出来ません。介護の原因の第3位には「骨折・転倒」が挙げられていますが、同じく「転倒」が原因で亡くなられる人の数は、交通事故の4倍にも上ります。身近に起こり得る転倒は、一瞬でその人の人生を変えてしまうほどの危険性があることを理解し、その危険性を回避しなければなりません。

そこで(公財)全日本柔道連盟は、「転ばない」「転んでも安全に受け身をする」といった柔道の特性を生かし、転倒予防に特化した「転び方プロジェクト」を立ち上げました。そのプロジェクトの理論を開発する研究機関として、本学に「フォール・プリベンション・リサーチ・センター」が設立されました。当センターが目指すのは、単に柔道を利用した転倒予防法の確立ではありません。また、健康体操の一環でもありません。これから進めていくことは、柔道に内在する価値を細かく分解し、それらが、どんなことに、なぜ有用なのかといったことを、医学・力学・心理学・社会学の観点から明らかにしていくことです。そこから得られた知見をもとに、確固たる方法論を確立し、誰もが安全かつ科学的な知見をもって利用できる、そういったマニュアルを2025年の完成に向けて、研究チーム全員で創り上げていきたいと考えています。

私たちが創造するのは20年後の、笑顔に満ちあふれた世界です。