甲南大学の研究力

「電極の界面現象」を理論で探ろう!
「電極の界面現象」を理論で探ろう!

理工学部 機能分子化学科 教授

山本 雅博
化学結合は量子力学でしか説明されない

以前友人の中学生のお子さんに、共有結合、イオン結合、金属結合等々の違いは、どのように区別したらいいのか質問された。中学はもとより、高校、大学の教科書においてもこれらの結合についての説明は極めて定性的な表現しかない。物質の結合を定量的に表現するには、電子に対する力学である量子力学の原理から、膨大な数値計算をしてその全エネルギー、原子間力を求める「第一原理計算」のみが解答を与える。従って化学の理論を扱うにはこの第一原理計算が基本中の基本であり、我々はこの計算手法を用いて特に表面・界面の物理化学について検討している。図には、 Si原子から電子がSi-Si間の中間領域に集まって、Si-Siの共有結合が成立していることを示している。

界面には必ず電位差が発生する:電気二重層を解明する

異なる物質が接する界面の厚さは、nm以下の狭い領域であることが多く、そしてその界面には電子、イオン等の居心地の良さの差に起因する電位差が発生する。例えば、1 nmに1 Vの電位差が発生するとその電場は109 V m-1もの強い電場が印可されていることになる。これは雷雲中の電場が105 V m-1と測定されているので、その値よりも4桁も高い値となっている。我々はこの界面に必ず発生する電気二重層を理論的に求めることを行い、それが界面の多くの現象にどのように影響があるのかを検討している。図には、末端に解離基をもつAu(111)面上の自己組織化単分子膜上の電気二重層がどのような空間分布をしているのかを、モンテカルロシミュレーションで求めた結果を示している。

界面での反応が極めて大事。しかしよくわかってない!

今や日本の産業のコメであるリチウムイオン電池では、正極|電解質|負極の界面近傍での化学反応である電極反応をどのように制御して、大電流・大容量を得てかつ安全性も維持するかということが最大の問題となっている。ただし、この界面での反応は未だに多くのことが明らかになっていない。その理由は、反応がおこる反応面への物質移動が10-3-10-6 mの長距離古典現象で、電子移動反応は周りの溶媒分子との分子間相互作用があり、電子移動そのものは量子的な過程で起こるというように多くのスケールがからむ複雑な現象(図参照)であるためである。我々は、量子レベルでの固液界面の物性計算、分子動力学法やモンテカルロ法などの分子シミュレーション、拡散方程式やポアソン-ボルツマン式のような古典的連続体モデルを用いてこれらの現象を明らかにしようとしている。

【研究助成】

○科学研究費助成事業基盤研究(C)(2018年度~2020年度)

積分方程式/第一原理計算結合理論を用いた電極界面現象の解明

 

2017年度より掲載