植物のいろいろな運動のしくみを探る
植物のいろいろな運動のしくみを探る
理工学部 生物学科 准教授
植物細胞の中は忙しい
植物は動き回ったり鳴いたりしないため、静かな生物だと捉えられがちです。しかし、その細胞内は動物細胞の10倍以上の高速で運動しています。この運動は原形質流動と呼ばれ、モータータンパク質ミオシンXIが細胞内の構造をつかんでアクチンレール上を滑ることによって引き起こされます。私たちは、ミオシンXIがネットワーク状に膜系を張り巡らせている小胞体をつかみ、自分でアクチンレールの向きを調節しながら走っていることを見つけました。小胞体は最大の膜表面積をもつことから、細胞内をかき混ぜるには最適です。私たちの研究室では、小胞体が原形質流動の原動力であるというモデルを提唱し、小胞体が運動するしくみの解明を目指しています。
小胞体が編み出す美しい網目模様
小胞体は膜でできた袋状の細胞小器官で、チューブ状に伸びた袋やシート状に扁平になった袋が複雑につながって、まるで網カゴのように細胞を包んでいます。植物細胞では、顕微鏡を覗いている間にこの網目構造がみるみる作り変えられていく様子が観察されます。興味深いことに、細胞から取り出したバラバラになった小胞体のかけらをスライドグラスの上に置いておくと、細胞の中と同じような網目構造が自然に再構築されます。私たちの研究室では、小胞体が美しい網目構造を編み出すしくみの解明を目指しています。
植物の姿勢を決める力
普段私たちが目にする植物では、茎などの器官がまっすぐに伸びています。私たちの研究室でたまたま見つけたシロイヌナズナ変異体では、まっすぐに伸びる性質が損なわれており、環境変化(光・重力など)に振り回されて「姿勢の曲がった植物」になってしまいます。当たり前と思われた植物の姿は、実は植物がアクチン・ミオシンXIという細胞骨格タンパク質を使って、「曲がる力」と「まっすぐになる力」のバランス調節を行った結果だったのです。私たちの研究室では、植物がどのように自分の姿勢を感じてまっすぐに伸びるのか、明らかにしようとしています。
【研究助成】
○科学研究費助成事業新学術領域(研究領域提案型)(2018年度~2022年度)
○科学研究費助成事業基盤研究(C)(2019年度~2021年度)
2019年度より掲載