甲南大学の研究力

生体内で機能する高分子材料の創製と
新しい医療技術の開発
生体内で機能する高分子材料の創製と新しい医療技術の開発

フロンティアサイエンス学部 生命化学科 准教授

長濱 宏治
細胞を素材するゲル材料の開発と再生医療への応用

私たちは、細胞を化学素材として用いることで“生きている機能性材料”を創ることについて研究しています。具体的には、様々な種類のほ乳類細胞に本来細胞が持たない反応性官能基(アジド基)を生化学的手法により導入し、アジド基と特異的に反応するアルキンを修飾した生体適合性高分子と反応させることで、細胞を主成分とする“生きている”多機能性ハイドロゲルを開発しました。細胞ゲルの応用例として、再生医療への応用を検討しています。マウス大腿筋(骨格筋)の損傷部位に投与した細胞ゲルは、骨格筋組織の再建及び機能回復をもたらしたことより、細胞ゲルは新しい細胞移植・組織再生技術として、再生医療分野への貢献が期待できます。

生体に注射投与可能なゲル材料の創製と再生医療への応用

生体への細胞移植技術は再生医療の実現・普及のために必要不可欠であり、その技術には、移植した細胞の生着 ⇒ 増殖 ⇒ 三次元組織化 ⇒ 機能発現を支持することが求められます。私達は、体温(37℃)に温めると液体からゲルになる高分子を合成し、その温度応答性を利用して、細胞を注射移植できるゲル(インジェクタブルゲル)を開発しました。このインジェクタブルゲルを用いて、大腿筋損傷マウスに筋芽細胞を移植すると、数日後から筋力の回復が始まり、2週間後には損傷前と同等の筋力に回復したことより、高い治療効果が示されました。現在、このインジェクタブルゲルを用いた細胞移植により、様々な損傷組織を再生させることに取り組んでいます。

細胞核指向性ナノ粒子を用いた細胞核ドラッグデリバリーシステムの開発

細胞核内は遺伝子発現や複製・転写が活発に行われており、細胞にとって重要な反応場です。核内に不要な物質が侵入してくることを防ぐため、核と細胞質間の物流は核膜孔のバリア機能により高度に制御されています。私達は、核膜孔のバリア機能を自在に突破して核内に薬物を輸送するナノ粒子を世界で初めて作製することに成功し、DNA、ポリメラーゼ、ヒストンなども核内物質を標的とする薬物の送達システム(ドラッグデリバリーシステム)の開発を目指しています。これまでに、細胞レベルで様々な薬物を細胞核内に送達することに成功しています。現在は、動物レベルで様々な薬物を細胞核内に送達し、治療することに取り組んでいます。

【研究助成】

○科学研究費助成事業若手研究(A)(2017年度~2020年度)

細胞核ナノトランスポーターの開発および細胞核ドラッグデリバリーシステムへの応用

 

2018年度より掲載