甲南大学の研究力

遺伝子の隠れた能力を引き出して
未来生活を改善する
遺伝子の隠れた能力を引き出して未来生活を改善する

先端生命工学研究所(FIBER) 所長・教授

杉本 直己
核酸の特殊構造による遺伝子複製の制御

FIBERの高橋俊太郎講師と共同で、遺伝子(DNA)が複製される際の核酸構造の影響を研究しています。DNAは、正しく複製されないと間違えた遺伝情報が蓄積されることになり、様々な病気の原因になります。私たちは、英国のReading大学との共同研究により、特殊な核酸構造の違いがDNAの複製の制御に大きく関わっていることを明らかにしました(成果は、米国科学アカデミー紀要(PNAS)誌に掲載)。さらにスロベニア国立NMRセンターと韓国浦項工科大学との共同研究で、特殊核酸構造を核酸材料を使って誘起させることによる、複製反応の制御法を開発しました(この研究成果は、米国化学会誌「Journal of the American Chemical Society誌」に掲載されSupplementary Journal Coverに選定されました)。これらの研究成果は異常な複製を防ぐ新薬の開発につながると期待されます。

核酸の非二重らせん構造によって制御される“がん”の発症

FIBERの建石寿枝講師と共同で、がん化に伴う細胞内の環境変化がDNA構造や転写反応に及ぼす影響を定量的に解析しています。本研究では、正常な細胞内で形成されている四重らせん構造が、細胞の悪性がん化によって不安定化(または解離)することを見出しました。このような四重らせん構造の構造変化が、がん悪性化に関わる遺伝子の転写に及ぼす影響を解析した結果、四重らせん構造は正常細胞内では転写を抑制し、細胞のがん化、悪性がん化に伴って、転写量を大きく増大させることを見出しました。本研究成果は、がんの活性化に関わる新規の機構が解明されたと注目されています。(この研究成果は、米国化学会誌「Journal of the American Chemical Society誌」に掲載されSupplementary Journal Coverに選定されました)。

翻訳反応と核酸の特異構造

FIBERの遠藤玉樹准教授と共同で、タンパク質を作る翻訳反応における核酸構造の影響を解析しています。これまでに、翻訳反応の鋳型となるメッセンジャーRNA(mRNA)に安定な核酸構造が形成されると、発現されるタンパク質の量が減少することを見出しています。また、A. RODE博士(FIBER特任研究助教)とも共同で、mRNAの構造が別のRNAによって調節され得ることも見出しました。さらに、米国ニューヨーク州立大学Binghamton校のEriks Rozners教授との共同研究では、ペプチド核酸と呼ばれる人工核酸分子を開発し、mRNAに安定な三重鎖構造を誘起させて細胞内での遺伝子の発現を抑制することに成功しました(これらの研究成果は、独国化学会の学術誌「Angewandte Chemie International Edition」に掲載され、掲載号の中裏表紙および表紙にそれぞれ選定されました)。

科学研究費助成事業 基盤研究(A)(2016年度~2018年度)
 核酸構造の多様性に基づく新規の遺伝暗号Dimensional Codeの解析

甲南学園平生太郎基金科学研究奨励助成(H26年度~平成28年度)
 甲南DNAドックによる疾病リスクの革新的早期診断システムの構築

 

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2016年度より掲載