障害者の創作活動における
芸術家の役割の検証
障害者の創作活動における芸術家の役割の検証
文学部 人間科学科 教授
服部 正
欧米におけるアウトサイダー・アート/アール・ブリュットの研究
アウトサイダー・アート/アール・ブリュットとは、文化の主流から距離を置いた独学の創作者による独創的な美術作品を指す言葉です。ヨーロッパでは1920年代から徐々に注目されるようになり、近年では美術の一分野として高く評価されるようになっています。私は、20歳の頃にこのようなアートに初めて触れて、その魅力に引き付けられました。以来、このアートについての研究と、展覧会や本などを通じた紹介に努めています。
日本における障害のある人の創作活動の歴史的研究
アウトサイダー・アート/アール・ブリュットの起源は、19世紀ヨーロッパの精神科病院で制作された統合失調症患者の作品です。そのため、私の研究は精神疾患の患者や知的障害・発達障害のある人の創作物にも及んでいます。特に、日本で障害のある人がどのような環境で創作を行い、その作品が社会的にどのように評価されてきたかを歴史資料に基づいて研究し、近代日本社会における障害者に対する偏見の諸相を明らかにすることは、私の研究における重要なテーマです。
芸術と福祉の関係を探る
アウトサイダー・アート/アール・ブリュットの作り手の半数以上には、精神疾患や何らかの障害があります。そのような作り手について考えることは、現在の医療制度や福祉制度について考えることにもつながります。それと同時に、美術という領域において「障害」はどのような意味を持つのかを考えることも重要な課題です。私の研究は、芸術と福祉という、一見すると無関係に思える二つの領域に実は様々な共通点があるという観点から、芸術と福祉の狭間で起こっている現代社会の数々の事象にも及んでいます。
【研究助成】
○科学研究費助成事業基盤研究(C)(2014年度~2018年度)
○科学研究費助成事業基盤研究(C)(2018年度~2021年度)
2018年度より掲載