甲南大学の研究力

感覚と記憶に関わる遺伝子と
細胞ネットワーク
感覚と記憶に関わる遺伝子と細胞ネットワーク

理工学部 生物学科
統合ニューロバイオロジー研究所 教授

久原 篤
脳の仕組みをシンプルな動物で研究する!

私達人間などの動物は、匂いや温度などの周りの環境を感じたり、記憶したりすることで、その状況にあった応答をすることができます。そのような環境に対する応答は、脳神経系のはたらきで制御されています。しかし、人間の脳はおよそ1000億個の神経細胞を持っているため、その仕組みを解明するためには、膨大な時間がかかると思います。そこで、私の研究室では、わずか302個しか神経細胞をもたないC. エレガンスとよばれる小さな線虫をつかって、動物がどうやって周りの環境を感じ、記憶し、そして適応するのかを解き明かそうとしています。

目や鼻や精子が体全体の温度適応に関わる!?

具体的な研究としては、C. エレガンスの温度に対する応答に着目して、(1) 動物が温度を感じるメカニズムや、(2) 適応や記憶するメカニズムを解き明かそうとしています。これまでに、人間の目や鼻に相当する光や匂いを感じる感覚ニューロンが温度を感じて、体全体の温度適応を調節していることが分かってきました。さらに、驚くべきことに「精子が頭部の温度受容ニューロンを調節」していることも見つかってきました。現在、温度を感じるための未解明の遺伝子を見つける研究も行っています。

記憶をシンプルな神経回路で解析する!

記憶は脳の中でどのように作られるのでしょうか?その仕組みもC. エレガンスを使って研究しています。C. エレガンスの温度適応には神経細胞内の温度記憶が書き換えられることが必要です。そこで、その記憶に関わる遺伝子とシンプルな神経回路を見つける研究も進めています。  このように私の研究室では、シンプルな実験系を利用して温度感知と記憶の分子と神経の仕組みを解き明かしたいと考えています。エレガントな動物のエレガントな応答のメカニズム、それを解き明かす研究は果てしないですが、目指す先にはしっかりとした光が見えます。

【研究助成】
科学研究費助成事業 基盤研究(B)(平成27年度~平成29年度)
 低温環境への馴化を司る生体内サーキットの分子生理システム

甲南学園平生太郎基金科学研究奨励助成(H26年度~平成29年度)
 動物の温度適応の分子神経メカニズム

国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)『 革新的先端研究開発支援事業』

「メカノバイオロジー機構の解明による革新的医療機器及び医療技術の創出」領域(平成29年度~平成32年度)

『新規温度センサー分子の単離とそれを用いた応用技術の創出』

 

【関連情報】

○生体調節学研究室 あらまし
○久原教授 ホームページ

○久原教授が日本学術振興会「最近の研究成果トピックス」に選ばれました!

久原教授「動物の低温適応における精子から頭部の温度感覚神経へのフィードバック制御」

参考 ・日本学術振興会賞「線虫を用いた温度応答を司る分子細胞機構の解明」

日本学術振興会「科研費NEWS」

 

2016年度より掲載