損害賠償の事例を解析し、指針となる統一ルールを導き出す。 法学部 法学科 金丸 義衡(民法)

民法の専門家で、その中でも損害賠償の範囲に関する諸問題を研究されている金丸義衡教授にお話しを伺いました。

About Me (KANAMARU Yoshihira)

民法の中で特に損害賠償法を専門に研究しています。
たとえば、楽しみにしていた旅行の前日に交通事故にあってしまった場合、治療費は当然賠償の対象ですが、無駄になった旅行代金はどうなるのでしょうか。
加害者に賠償してもらえる金額はキャンセル料の範囲に限定されるのか、それとも別の日に同等な旅行に行く代金まで賠償の対象になるのでしょうか。
このような損害賠償範囲の問題が研究対象です。

Research

Signed Ball and Accident

損害賠償は金銭賠償なので、最終的に金額として見積もらなければなりません。
今の日本は貨幣経済ですので、なんでも金銭として評価することができそうなのですが、まだ評価が難しいものがたくさんあります。
例えば、有名なスポーツ選手のサイン入りボールがあるとします。
興味がある人ならば100万円払っても欲しいと思うかもしれませんが、ボール自体の価値は1,000円かもしれませんし、興味がない人にとっては何の価値もないものと言えそうです。
こういった場合、何を基準に金銭評価したらよいのでしょうか。
この問題が顕在化するのが、人身事故の場合です。
「人の命は全て等しく重要である」と言われて否定する人はまずいないと思います。しかし、損害賠償の局面になると、そうとも言い切れません。
具体例を挙げると、年収500万円の人が1年間働けなくなったという場合に、500万円の損害賠償をしなければならない、他方、年収2,000万円の人だったら2,000万円だ、というようには考えられないでしょうか。それとも、誰が被害者になっても一律年収1,000万円として計算するという方がいいのでしょうか。
また、現在のルールでは、死亡事故の場合には、平均稼働年齢までの年数分の損害賠償が認められることになっていますが、あと20年や30年といった期間、同じ会社で同じ地位にいられる可能性がどれだけあるのか、今のような不確実な時代にも、このようなルールは妥当と言えるのでしょうか。
こういった損害賠償制度の妥当性を考えていこうとするのが、現在の損害賠償法の一断面と言えるでしょう。

Attraction of Law

法学の魅力の一つに「全部の事象を並べてみたときに、統一できるルールを見つける」という楽しさがあります。
点と点でしかなかったそれぞれの要素を俯瞰的に考察し、一つの線でつながるように統一されたルールを導き出す事ができたときには満足感があります。
その際には、理論だけではなく、実務で使ってもらえるような具体的な内容に落とし込む作業をするように気をつけています。
その結果、最高裁判所でも判例がないケースの事例を考える場合などもあり、知的好奇心が満たされていくことを実感します。

KONAN’s Value

法律問題を考えていくためには、その背後にある社会情勢や価値観を学んでいくことも必要になってきます。
先ほどの例では人の存在を損害賠償においてどのように評価するのか、という問題でしたが、倫理学や経済学といった考え方も必要になってきます。
甲南大学法学部では、法学・政治学の科目だけではなく、総合大学であるという強みを活かして、他学部開講科目も広く履修できるようなカリキュラムを展開しています。
多面的なものの見方ができる人材を育てたいという本学の考え方の一つの表れであると考えています。

授業風景
授業風景

Private

最近の趣味は、読書、ゲーム、ガンプラです。学生の頃は、時間を持て余していたのでいくらでも趣味に費やす時間があったのですが、購買力がありませんでした。
ところが就職してから自由になるお金ができて、今はその逆です…一時期はプラモデルの未開封の箱が50個以上積み上がっていました。
読書は電子書籍を買うようになってからは置き場所に困らないので、iPadに1,500冊。読み放題です!

積み上がったガンプラ

Profile

法学部 法学科 教授

金丸 義衡

KANAMARU Yoshihira

専門領域
民法

キャリア
京都大学 大学院 法学研究科 博士後期課程 民刑事法専攻 単位取得退学
姫路獨協大学 法学部 講師
香川大学 大学院 連合法務研究科 准教授

所属学協会
日本私法学会