人間の振る舞いからシステムとのスムーズな連携を行うインタフェースをデザインする。知能情報学部知能情報学科 准教授 山中 仁寛(ヒューマンインタフェース/人間信頼性工学)

ヒューマンインタフェースの専門家で、メンタルワークロードを研究している山中仁寛准教授にお話しを伺いました。

About Me ( YAMANAKA Kimihiro )

専門分野はヒューマンインタフェースの研究で、人と機械/システムの関わりをデザインする研究を行っています。企業との共同開発なども行っており、日々実験を繰り返しながら人間と機械、さらには社会にとって最もよい関わり方を探っています。ヒューマンインタフェースの研究は、現在進歩が著しいAIとの関わりも深く、新しい発見も多いので楽しく研究ができています。実用化にも近い位置での研究なので、研究成果が世の中に役立つ実感もあり、満足感も高いです。

Research

Determine a Person’s Condition

自動車メーカーとの共同研究では、様々なセンサから得た情報によりドライバーの状態を推定して人と自動運転技術との安全でスムーズな切替方法を探求しています。
自動運転の技術革新は目を見張るものがあり、これまでは補助的な役割としての自動運転が行われてきましたが、今後は高速道路などでの運転を車だけで行うような時代になっていきます。
その時代では、車の制御の基礎部分が人から機械に移っているわけですが、車から人に制御権が移る場合に懸念事項が多々考えられます。
例えば、車の制御権が車から人に移るタイミングで人が寝ていたら危険ですし、運転に注意が向いていない状態で制御権を渡されると、注意散漫な状態で運転を開始することになるので事故の原因にもなります。
そのため、安全かつスムーズな自動運転を実現するためにはリアルタイムでモニタリングすることで人の状態を常に把握し、判断することが必要になってきます。
人の状態を判断するためには、ドライバーの何をどうやって測るかが問題になってきます。
脳波測定や心電図のデータを活用するケースも考えられますが、その場合は導入のためのコストが高くなりますし、ノイズへの耐性が弱いといった問題もあります。そのデータを取得するためには利用者側で測定のための時間や行動が必要になるため、実用化のハードルは高いといえます。
工学は実学なので、実用化されなければ意味がなく、人が容易に受け入れられるものや、導入コストが安価なものなど、実現できることが必須です。眠気や緊張などを個別に検出する方法は、検出漏れのおそれがあるため実用化が困難です。そこで、余裕度を総合的に評価できる「メンタルワークロード」の考え方が重要になります。
今回の場合では、「どこをみるか」ではなく、「どのような見方をしているか」を測定することで余裕度を評価する方法を採用しています。
人がものを見る場合、余裕があるときは広い範囲(視野が広い)に注意を向けていますが、余裕がないと狭い範囲(視野が狭い)にしか注意を向けていません。
この考え方を応用すると、視線の動きと頭の動きから視野の広さを推測することができ、実際の車の運転を行う場合に照らし合わせて運転者の状態を判断することができます。
ヤマハ発動機のLMWの実験に参加した際には、「前輪が2つあるから余裕がある=視野が広い状態ではないか?」という仮設を立て、実験を行い実際のデータを得るテストを実車両を使用して行い、仮説は正しかったということも実証済みです。

LMWの運転は疲れにくい!?Fact 2『何故なら視野が広いから』
LMWの運転は疲れにくい!?Fact 3『何故なら精神的負担が小さいから』

Human-Robot Interaction

ヒューマンインタフェースの研究として、人の感情推定も必要となっています。
人とロボットのインタラクションは、人と人のコミュニケーションと同じように行われることが好ましいと考えています。
今のロボットは人の感情とは関係なく、センサで反応してプログラムされた行動を起こしていますが、例えばその人が不機嫌な場合でも同じコミュニケーション手法を取るようになっています。
人間同士のコミュニケーションの場合を考えると、不機嫌そうな人には話しかけるかどうかをまず判断しますし、話しかけるにしても顔を見たことをふまえて話す内容や行動を変えると思います。
そう考えると現在の人とロボットのインタラクションは十分とは言えず、表情や動きを検知して人間の状態を判断し、それに合わせたコミュニケーション手法を選択する事が必要になってきます。
車内での目線の動きと頭の動きから人の状態を判断することと同じように、行動や表情から人の状態を測ることも可能なのですが、この考え方を発展させると人の感情を判別できるようになります。
人の感情を判別できるようになると、空間上のエンタメについてのフィードバックをユーザーのリアクションから取ることも可能になり、これまでフィードバックに必要だったユーザーインタビューなどが不要になるなど、新しい利用用途も見えてきます。

KONAN’s Value

私の研究室で行っている研究は応用分野であり、実用化が近いものが多いので、研究の成果が実務に応用できるのはやりがいを感じます。
学生のみなさんにとっては、研究が実用化される場面に立ち会えるケースはあまりないと思うので、貴重な経験をすることができると思っています。
企業との共同研究を行っているため、インターンに行く学生もいるのですが、インターン先から帰ってきた学生の成長した姿を見ると、とてもうれしく感じます。
いろいろな経験を積み、世間への見識を広めることができる甲南大学での学びは人生に役立つ経験になると思っています。

Private

今ハマっているのは、リフォームとDIYです。
自宅に小さな離れがあるのですが、その離れをリフォームして自分の部屋にしようとしてYouTubeの動画などを参考に試行錯誤してやっています。時間を忘れるほど楽しんでいます。
最初は粗大ゴミの処分をしたのですが、そのままでは大きすぎてゴミとして出せないものをノコギリでバラバラにしたりするなどを夢中になってやっていました。先日、ついに一つ目の壁を抜きましたが、大変すぎて少し後悔しはじめています(笑)。
目標としては、全ての壁を抜いて一部屋にしたり、土間を作ったりしたいと考えていて、プランを練っている時間もすごく楽しく過ごせるので休みの日はずっとしています。
まだまだ先は長いですが、一つ一つのプロセスがとても楽しいのでこれから先も楽しみです。

DIYの様子

Profile

知能情報学部知能情報学科 准教授

山中 仁寛

YAMANAKA Kimihiro

専門領域
ヒューマンインタフェース/インタラクション関連/感性工学/人間信頼性工学

キャリア
首都大学東京 システムデザイン学部

所属学協会
日本人間工学会
日本感性工学会
ヒューマンインタフェース学会