AIの専門家で、自然言語処理の金融・経済分野への応用について研究されている関教授にお話を伺いました。
About Me (SEKI Kazuhiro)
もう20年以上前になりますが、学部生のときにコンピュータで人の言葉を扱う自然言語処理に面白さを感じ、そこから関連分野として、情報検索、テキスト/データマイニング、機械学習などの分野で研究を行ってきました。学部と修士課程は日本の(今はなき)図書館情報大学で学び、博士課程は図書館情報学分野で有名な米国のインディアナ大学に進学しました。アメリカ留学中の4年間は本当に学位が取れるのか分からず、将来への不安や研究で大変な日々でしたが、今振り返ると自分の成長につながる非常に良い経験になりました。留学しようか迷っている人がいたら、是非チャレンジしてみてください。
Research
上にも書きましたが、もともとは自然言語処理(NLP)という分野に興味を持ち、(学生として)研究生活が始まりました。日本語ではよく主語が省略されますが、そのような省略をどのように補完するかというのがそのときの研究テーマでした。話は逸れますが、当時、論文の読み方、研究の進め方、発表資料の作り方、発表の仕方、日本語/英語での論文の書き方など、指導教員の先生がしっかりと指導してくださったことが研究者としての自分の基礎を形作ってくれました。その後もNLPの研究は継続して行っており、文章から固有の名称などの表現を抽出する「固有表現抽出」、文章が好意的/否定的に書かれているのか等を分析する「感情分析」などの研究を行ってきました。
甲南大学着任前後からは、金融・経済分野へのNLPの応用を行ってきました。数年前から本学および他大学の経済の先生方と共同で研究を進め、ウェブニュースから景況感をリアルタイムで予測する手法を開発しました。景況感とは、企業や消費者が景気の状態に関する印象を数値化した指標であり、金融政策や企業の生産計画の作成、機関/個人投資家の投資の判断などの基礎資料として重要です。ウェブニュースから予測したこの景況感(S-APIR指数)はアジア太平洋研究所のホームページで公開され、同研究所の月次レポートで景気の分析にも利用されています。
NLPを含むAIの研究分野では、近年GPTやStable Diffusionのような基盤モデルの登場によって、日進月歩でその技術が進歩しています。特に、ChatGPTのような大規模言語モデルで可能になった自然言語の理解や生成は、私たちが日々行う知的活動のあらゆる場面で応用可能であり、その影響は計り知れません。今この時代にAIの研究に携わり、その進歩を間近で見られることは、非常にエキサイティングです。
KONAN’s Value
甲南大学は私立大としては良い意味でサイズが小さく、学生と教員の距離が近いことが特長です。知能情報学部では初年度からのインタラクティブ教育やプレミアプロジェクトでの課外活動を行っていますので、学生の意欲に応じて、研究室配属以前から学生が教員と一緒に学んでいけるような環境があります。例えば、プレミアプロジェクト(KONANスーパーIT人材育成プロジェクト)の今年度のサブプロジェクトとして、私は「ディープラーニング入門」を実施しています。このサブプロジェクトでは、学生が中心になって生成AIの勉強会を週一回行っており、正課授業では取り扱っていない最新の技術をその数学的な意味から学んでいます。
Private
妻、高校生の子2人、犬2匹と暮らしています。子どもたちは、昨年の8月から今年の6月までアメリカに留学していました。その間、子ども部屋が空いていたこともあり、スウェーデンから来た高校生のホストファミリーをしました。子どもたちも留学先ではホームステイしていたことや、妻も私も大学生の時に短期留学でホームステイしたことがあったので、その恩返しのような意味合いもあります。日本の家は狭いので他人と暮らすのは大変な面もありましたが、その高校生も無事に留学を終えて帰国し、少しばかりですが草の根の国際交流に貢献できたかなと思っています。(写真は、留学生が実家のレシピで生地から作ったジンジャーブレッドハウス。)

Profile

知能情報学部 教授
関 和広
SEKI Kazuhiro
専門領域
AI、自然言語処理、データサイエンス
キャリア
図書館情報大学図書館情報学部(学士)
図書館情報大学大学院情報メディア研究科(修士)
Indiana University, Bloomington(Ph.D.)
神戸大学大学院システム情報学研究科助教・准教授など
所属学会
人工知能学会
情報処理学会
日本データベース学会