経済学の専門家で、マクロ経済学、労働経済学、ネットワーク科学について研究している荻巣嘉高講師にお話を伺いました。
About Me ( OGISU Yoshitaka )
「経済学を学べばお金持ちになれるかもしれない!」と思って経済学を学び始めてはや10年以上経ちますが、お金持ちになれる兆しは全くありません。高校ではいわゆる理系的な勉強をしていたのですが、当時は「モノ作りには関心がないな」と思い、理系でも受験ができそうな経済学部を選びました。大学受験に失敗して、「1年浪人するよりも、学部卒業後に2年大学院の修士課程に行った方が良さそうだな」と思って大学へ進学したため、大学入学時から大学院への進学を多少意識していました。そんな中で大学の先生たちに大学院への進学相談をするうちに、「研究者って楽しそうだな」と感じるようになって、真面目に勉強をするようになり、大学院を経て現在に至ります。現在はマクロ経済学を中心として、経済学のさまざまなトピックスにチャレンジしています。

Research
私は経済学の中でも、とりわけネットワーク科学と呼ばれる分野を応用した研究を主に行なっています。ここではそのうちの2つの研究をご紹介します。
(1) コネ採用がもたらす格差の分析
人を点、友人関係を線として人々を結ぶと、社会ネットワークと呼ばれるネットワークになります。人々は友人から仕事の紹介をしてもらうことも多いです。さて、友人が多い人と少ない人、どちらの方が仕事を得るのに有利でしょうか?当然、友人が多い人の方が仕事を紹介してもらう可能性が高いので、仕事を得やすいでしょう。同じように考えてみると、友人数が同じ人たちなら、たいてい同じくらいに仕事を得やすいことが予想できますね。それでは、大阪の人たちと兵庫の人たちをそれぞれグループとして見たとき、大阪の人たちの平均的な友人の数と、兵庫の人たちの平均的な友人の数が同じだとしましょう。このとき、大阪の人の仕事の得やすさと兵庫の人の仕事の得やすさは同じくらいになりそうな気がします。しかし、実はそうなるとは限りません。これは、社会ネットワークがその内部で“どのようにつながっているか”によって変わってきます。このようなケースを考えて、どんな社会ネットワークのつながり方が人々にとって有利なのか?ということを研究しています。
(2) 銀行・企業間のリレーションシップ貸出の検出
企業は銀行からお金を借りて営業しています。銀行から企業へのお金の貸付をデータで毎年観測していくと、やけに取引をしているように見える銀行と企業のペアが出てきます。企業がお金を借りるとき、どの銀行から借りるかは、本来自由です。また、どんな銀行に行っても、大抵借りる時に必要なコストは一緒です。それにもかかわらず、このように企業が特定の銀行から借り入れを行い続けるのは、その銀行と仲良しにしているから、と考えられます。こういった“仲良し”であることを利用した貸出を(広義の)リレーションシップ貸出と呼んだりします。では、何千件、何万件と行われている企業と銀行の取引のうち、どの取引がリレーションシップ貸出だといえるでしょう?実はこの問いに答えることはかなり難しいです。なぜなら、企業と銀行の“仲良し度”は数値として見ることができるものではないからです。この問題を解決するために、統計的な手法を使って、どの取引がリレーションシップ貸付であるかを判別する方法を提案したりしています。ちなみに、企業がお金を借りるときに、仲良しの銀行からはたくさんお金を借りられることがわかったりしました。


KONAN’s Value
“すごい人”になりたいと思ったことはありますか?もし思ったことがあるのならば、甲南大学はかなり良い環境だと思います。すごい人になるためには、すごい人たちと過ごすことが肝要だと思います。ここで言う「過ごす」というのは、単に同じ場所で過ごすということではありません。積極的にコミュニケーションを取り、自分がすごいと思う人たちがどのような思考をしていて、どのような議論をしていて、どのように過ごしているのかなどを学んでいくことが重要です。甲南大学では教員と学生さんとの距離がとても近いことが特徴的です。また、多くの教員は学生さんとのコミュニケーションをとることを楽しんでいます。このような環境ではきっと、皆さんがすごいと思える人たちとの出会いがあり、その人たちとのコミュニケーションを通じた充実した学生生活が待っているでしょう。
Private
ゲーム、アニメ、温泉旅行が好きです。昔見ていた「SHIROBAKO」というアニメは、すごく頭に残るシーンとセリフがあって、今でもとても好きです。最近は大学のアメフトやサッカーの観戦に行ったりもしています。ゴルフもたまに行きますが、下手です。釣りにも行きたいのですが、道具一式を準備するのが面倒で、結局まだ行っていません。甘いモノが好きで、学内でもよくセブンティーンアイスやフードトラックのクレープを食べたりしています。あと、動物が好きですので、猫カフェには定期的に行っています。
Profile

経済学部 講師
荻巣 嘉高
OGISU Yoshitaka
専門領域
マクロ経済学、労働経済学、ネットワーク科学
キャリア
神戸大学大学院経済学研究科博士課程後期課程 修了
所属学協会
日本経済学会
日本応用経済学会
日本金融学会