幹細胞の老化を知ることで、再生医療へ貢献する。フロンティアサイエンス学部 石川 真実(幹細胞生物学、免疫学、歯学)

幹細胞生物学の専門家で、免疫学、歯学について研究している石川真実助教にお話を伺いました。

About Me ( ISHIKAWA Mami )

専門分野は幹細胞生物学です。幹細胞を知り、そして活用することで人々の健康に貢献できるように日々研究を行っています。

私は大学院博士後期課程を修了後、企業の研究職で歯の神経組織を再生させる研究や効率よく幹細胞を製造する研究を行っていました。その中で、研究をより深めたいという気持ちと共に、これまでの経験を学生に教育という形で貢献できればと考え、フロンティアサイエンス学部に着任しました。

Research

Understanding Stem Cells and Aging

2006年にiPS細胞が誕生したことにより、幹細胞という言葉を耳にする機会が増えたと思います。幹細胞は私たちの身体の中にも存在しており、組織の保護・修復や免疫調節など行うことで組織恒常性維持にとても重要な役割を果たしています。

私は幹細胞と老化をキーワードに研究を進めています。幹細胞の老化を知ることで、私たち個体の老化を知りたいと考えており、さらに老化が関わる病気について、老化した幹細胞をターゲットにする、もしくは幹細胞を用いた治療法を開発することで、皆さんのQOL向上に貢献することを目標に研究を行っております。

幹細胞の老化については、現在私は「糖化」に着目して研究を進めています。糖化はタンパク質と糖が結びつく反応のことです。糖化反応が進むと、最終的に老化を促進する物質であるAGEs (Advanced Glycation End products) を作り出します。AGEsは糖尿病、動脈硬化、認知症など様々な疾患との関わりも報告されていますが、幹細胞とAGEsの関係性はまだまだ不明な点が多いのが現状です。

そこで私は幹細胞とAGEsの関係を明らかにすることで、幹細胞の新しい老化メカニズムの発見を目指しています。また、抗糖化作用をもつ物質を見つけ、糖化によって低下した幹細胞の機能を回復させることで糖化が関わる疾患に対する新たな治療法開発への貢献も期待できます。

Development of Safe and Effective Regenerative Therapies

現在の自由診療内で行われている再生医療はエビデンスの乏しい治療も多く見受けられます。今後再生医療が普及していくための要因の一つとして、エビデンスのある安全な治療法であることが必須だと考えています。現在私は幹細胞を使用した皮膚老化治療の研究を行なっておりますが、使用する幹細胞の種類や培養条件の最適化や、治療効果メカニズムを詳細に解析していく予定です。

研究室を立ち上げたばかりでゴールはまだまだ遠いですが、新たな再生治療法を開発する際に「簡単に培養できて、よく使われている細胞を使う」ではなく、「効果のある細胞を簡単に製造できる技術を開発する」ことに重点を置き、応用研究も力を入れて進めていきたいと思っています。

KONAN’s Value

本学のフロンティアサイエンス学部はバイオ・ナノ・ケミカル・ナノバイオなど幅広い専門分野の教員がおり、大学1年生の時からその幅広い分野の基礎知識を学び、さらに実験も行います。また、学部内で分野を超えての共同研究も行われており、異分野の融合について受け入れやすい環境になっているのも魅力の一つだと思います。

社会に出た時に自分の行ってきた研究分野を継続できることは稀で、新しい分野の研究を行うことがほとんどだと思います。そんな中で、土台として幅広い分野の知識を持ち、さらに異分野融合に対する抵抗感をなくしておくことで、社会に出て新しい何かを創造する時の助けになると思います。

Private

お休みの日は友達や元職場の方と少し遠出して、お酒の工場見学やその土地の地酒を飲んだりしています。土地や酒蔵によって味が異なるのはもちろんですが、それぞれのこだわりを感じるのも楽しいです。私自身お酒がそこまで強くなく、年々二日酔いになりやすくなってきているので対策を考え中です。

また、所謂「丁寧な暮らし」に憧れており、少しずつ生活に取り入れようと頑張っています。昨年は梅を買ってきて梅干しを作ったのですが、梅を塩漬けにする際に使用する塩の種類で味が変わるのかが気になり、4種類の塩で漬け比べをしてみました。結局実験と同じようなことをやっており、途中からこれは丁寧な暮らしなのか?と思いながら作っていました(ちなみに塩の種類によって味(塩味)は少し違う気がするけど、大きく変わらないという結果でした)。

Profile

フロンティアサイエンス学部 助教

石川 真実

ISHIKAWA Mami

専門領域
幹細胞生物学、免疫学、歯学

キャリア
日本学術振興会特別研究員 (DC1)
甲南大学大学院 フロンティアサイエンス研究科 生命化学専攻 博士後期課程 修了
エア・ウォーター・アエラスバイオ株式会社 研究部

所属学会
日本再生医療学会
日本抗加齢医学会