宇宙物理学の専門家で、銀河における星の形成過程、超新星爆発による高エネルギー宇宙線の加速について研究している井上剛志教授にお話を伺いました。
About Me ( INOUE Tsuyoshi )
宇宙物理学の理論の分野で研究をしています。とりわけ超新星爆発のような現象で発生する衝撃波が引き起こす宇宙現象に興味を持っていて、それをコンピューター上に再現することで理論的に研究しています。衝撃波は地球上でも、爆弾が爆発した時や、戦闘機が超音速で飛行した時に発生することが知られています。宇宙で衝撃波が発生すると、例えば宇宙を漂っている水素ガスが衝撃波で押されて集まることで、次世代の星を生み出す分子雲と呼ばれる天体が形成されたりします。また、衝撃波の近傍では激しい磁気嵐が発生し、その影響でプラズマ粒子が加速され、宇宙線と呼ばれる超高エネルギーの粒子が発生したりもします。物理法則をうまくプログラミングできれば、これらの宇宙現象を実際の観測と見まがうほど正確に計算機上に再現することが可能になります。
物理学の分野は理論と実験を比較することで大きく発展することが歴史的に証明されています。私は常に望遠鏡での観測と比較可能な理論的予言を行うことを研究のゴールにしているので、観測家(普通に人が思い浮かべる天文学者)とも深く付き合いながら研究を進めています。

Research
宇宙は真空だと思っている人が多いのではないかと思いますが、例えば銀河の中だと平均で1立方センチあたり1個の水素原子が存在しています。これは地球上の大気(1立法センチあたり10の19乗個以上)とは比較にならないくらいの低密度ですが、実は空気と同じように流体力学という物理学を応用して、宇宙の中で星々の材料になるガスの性質を研究することができます。もっとも地球上の流体力学とは異なり、宇宙に特化した効果を加える必要があるのですが、それでも物理学という学問を武器にして宇宙を理論的に探検することが可能なのです。具体的な研究内容については研究室のホームページで詳しく解説していますので、ここ(http://tpweb2.phys.konan-u.ac.jp/index.html)をみてください。
KONAN’s Value
甲南大学の良いところはやはり少人数教育にあると思います。他の私立大学よりも実感として倍以上の時間を学生との研究上の相談や議論に使えているのではないかと思います。何に興味があって、何がしたいのかという目標がしっかりと決められれば、その実現はAIの力を借りれば簡単にできる時代になってきています。臆せずに大きな夢を持って甲南大学に進学してきてください。その実現を大学で一緒にしていきましょう。
Private
家族と祖父母の家の近所にある秘境のような河原でバーベキューをするのが1年の中で1番の楽しみです。飼っている猫を河原に一緒に連れて行けないのだけが残念です。猫にバーベキューで焼いた肉をおみやげに持って帰ってあげたいのですが、いつも娘に止められます。

Profile

理工学部物理学科 教授
※2026年度より
理工学部宇宙理学・量子物理工学科
井上 剛志
INOUE Tsuyoshi
専門領域
理論天文学、宇宙物理学、流体シミュレーション
学位
博士(理学)
キャリア
京都大学大学院理学研究科物理学・宇宙物理学専攻博士後期課程修了
国立天文台 理論研究部 研究員
日本学術振興会 特別研究員(国立天文台)
青山学院大学 理工学部 物理数理学科 助教
国立天文台 理論研究部 助教
名古屋大学大学院 理学研究科 素粒子宇宙物理学専攻 准教授
所属学会
日本天文学会
受賞歴
日本天文学会研究奨励賞、アジア太平洋物理学会連合プラズマ部門若手研究者賞、日本天文学会欧文研究報告論文賞


