知能情報学部 教授 山中 仁寛 × 理工学部生物学科 平谷 悠

知能情報学部 教授 山中 仁寛 × 理工学部生物学科 平谷 悠

どのような研究を行っていますか?

山中教授

私は人とコンピュータが関わる部分の設計であるヒューマンインターフェースを専門としています。
その中でも、近年の自動運転の発展とともに重要視されているドライバの状態推定についての研究を⾧年続けています。
自動運転である自動車の制御からドライバの制御へ切り替わるとき、ドライバの意識や注意が十分であるか、眠気を感じていないか、などを測ることは安全を担保するために重要です。
従来からドライバの状態推定法は提案されていますが、測定装置が大掛かりで費用も高く、ドライバの制約も多いため実用的ではありませんでした。
この問題に対して私の研究では、視野の中にある物を見る際、余裕がある場合は目から動き、余裕がない場合は視野が狭くなっているため顔から動くという特徴に注目し、カメラで目の動きと頭の動きを捉え、どちらが先に動いているのかだけを判別するシステムを作り、ドライバの状態推定を簡便に精度よく評価する研究をしています。
また、自動運転がさらに進歩すれば、移動時間は自由時間になるため、自動車がエンタメ空間になる時代が来ると思います。
その際に、自動車が提供するコンテンツをユーザーが楽しんでいるかを理解する必要があり、カメラやマイクでユーザーの感情を推測する研究も行っています。

なぜその研究を行おうと考えたのでしょうか?

山中教授

私の学位論文では、有効視野を定量的に測る研究をしていました。
当時は主観的な方法で見えるか見えないかを評価して有効視野を測るしか方法がなかったのですが、材料の強度試験に使われている方法を応用して人の感覚応答に当てはめ、人間の視野を確率的に測る方法を提案しました。
これを応用してヤマハ発動機と共同研究を始め、ドライバやライダーの視認行動の評価をしています。
これが現在の研究に繋がっています。

研究の楽しさは何でしょうか?

山中教授

研究者としては、基礎研究から開始し、現在では実用化に近いところで研究ができているという充実感、満足感、期待感があり、そこが楽しいです。
また、教育者としては、学生が成⾧する姿を見ることが楽しいですね。
学生が、企業との共同研究への参加、共同研究先の企業へのインターンシップを通じて成⾧し、その結果、学生が希望する企業への就職を実現する姿を見ると、やりがいを感じますね。
若い学生と一緒に研究に取り組めることが、研究を続ける活力にもなっています。

研究を行う上で苦労する点はなんでしょうか?

山中教授

私の研究は、シミュレーションではなく人を対象とした実験が中心の研究なので、泥臭く作業を続ける必要があります。
同じ人から何度もデータを取りますが、実験の対象が人であるため個人差や日によるばらつきがあり再現性が低い点が苦労しますね。

甲南大学で研究するにあたってこの大学だからよかったことはなんでしょうか?

山中教授

私は出身大学も甲南大学で、学生時代に所属していた研究室を使わせてもらっています。
恩師が使っていた研究室に研究者として戻ってくることができて、感慨深いです。
また、指導を受けた先生方も数名いらっしゃるので、緊張感をもって仕事ができていることも、この大学で研究を行う利点です。

話題を変えて、先生のキャリアについてお伺いいたします。大学院に進学しようと思った理由、大学の研究者を目指した理由はなんでしょうか?

山中教授

学部3年生から研究室配属がありました。これまでの受け身の学びから、研究活動という自発的な学びに変わったことがとても面白く感じたため、研究を続けたいと思い大学院に進学しました。
また、企業に就職をすると、必ずしも自分の興味のある分野で研究できるわけではないため、自分の興味のある分野を研究し続けるために大学の研究者になることを志しました。

研究面での今後の目標はなんでしょうか?

山中教授

人が楽しんでいる、面白いと感じていることを測定することができれば、これまでの研究成果である、人の負担度を測定する技術と組み合わせて、個人にフィットしたインターフェースが実現可能ではないかと考えています。
これを実現することが今後の目標です。
ただし、私一人の力ではこれを実現することはできません。
研究室の学生や様々な分野の研究者の方々と協力して実現したいですね。

インタビューをした感想

山中教授からお話を聞き、自分は今まで触れたことのない分野であったのでとても興味をもちました。
人と人との関係のなかで無意識に読み取っていた感情や精神状態をコンピュータで読み取ることができるということに驚きました。
また、情報の分野に触れたことのない自分にも理解でき、山中教授の講義を受けてみたいと思いました。

インタビュアー 平谷