寒さや暑さに慣れる仕組みを線虫を使い調べています。理工学部生物学科 久原 篤 (生体調節学)

分子遺伝学、光遺伝学、温度生物学、動物生理学、神経行動学の専門家で、線虫を使用して環境に対する耐性や適応を研究している久原篤教授にお話しを伺いました。

About Me ( KUHARA Atsushi )

私たちの周りには様々な環境の情報があふれていまして、それらの環境情報は、例えば、光や匂いや空気や温度などで構成されています。 そのなかでも、温度は地球上に必ず存在し、生体の化学反応にも直接影響を与える重要な環境情報ですので、生物の温度に対する応答や適応は生命の維持と繁栄にとってとても重要です。

久原 研究室では、動物がどのように温度を感じて記憶して、環境に対する耐性や馴化、そして適応や進化をおこなっているかをシンプルな実験動物である線虫をつかい研究しています。

これらの研究から、ヒトを含む動物が脳神経系においてどのように感覚や記憶が制御されているのかや、体が温度になれるための体内組織の仕組みや、どのようにして環境に適応や進化してきたかなどの重要な仕組みが明らかになります。実用面では、私たちの実験系は、ヒトの生体調節に関わる新しい薬の開発にも関わっています。また、神経活動を解析する光学装置を企業と共同で開発しております。

Research

Nematode Research

地球温暖化は避けられない世界的な問題です。動物がどうやって環境の温度を感じて記憶し適応するのかを、ちいさな線虫C. エレガンスの温度への慣れと低温・高温耐性を使って研究しています。(1)動物が温度を感じる仕組みと、(2)温度に慣れる体の仕組みを解析したところ、温度を感じる新しい受容体の遺伝子が見つかってきました。さらに、ヒトでも同種の受容体が温度を感じていました、つまり、線虫の研究からヒトの温度を感じる仕組みが分かってきました。

これでの研究が、将来的に (3)温暖化や局所的寒冷化に耐えられる畜産物の開発のお役に立てればと思います。さらに、低温耐性の研究成果からは、例えば臓器移植を待つ患者さんのための人工移植臓器の低温保存の方法の開発に将来お役に立てればと思います。生命の機能は予想以上に複雑ですが、目指す先にはしっかりとした光が見えます。

KONAN’s Value

理工学部生物学科の学部生や大学院生に対して、脳神経系や体の温度適応(恒常性)などの講義や実習をおこなっております。
研究室では、学生と研究員と共に最先端の研究を進めております。
授業では自作のイラストを使って、分かり易く説明しております。

日本でも有数の最先端の顕微鏡装置があります。
大学院生の研究成果が毎年のように世界レベルの論文誌に公表され、学生さんがマスコミでもたくさん報道されております。
http://kuharan.com/publications/press.html#n2017
ライフサイエンス系では日本で年間に2名しか受賞できないロレアル-ユネスコ女性科学者日本奨励賞に、2年連続で久原研究室から受賞者を輩出しています。
フィギュアスケート部の顧問をしております。
所属選手の三原舞依さんは、2022年グランプリファイナルで優勝しました。
久原研に来て頂いて線虫を見てもらったことがあります。

ロレアルユネスコ女性科学者 日本奨励賞、日本学術振興会育志賞
ロレアルユネスコ女性科学者 日本奨励賞
YouTuberヨビノリさんと
久原研の学生の紹介
【模擬講義】理工学部 生物学科 小さな生き物から学ぶ脳神経系のしくみ

Private

・研究室をアジアンカフェスタイルにしております。
・実験室もキレイな色合いにしています。顕微鏡カバーも久原がミシンで自作しました。
当研究室では、女性研究者や子育て中のメンバーの割合が多いです、久原自身も子育て中で、日曜日の朝に娘とプリキュアを見て楽しんでいます。水泳が好きで週に2回、朝、授業や講義の前に泳いでおります。

研究室をアジアンカフェスタイルに

Profile

理工学部生物学科 教授

久原 篤

KUHARA Atsushi 

専門領域
生体調節学

キャリア
日本学術振興会特別研究員
名古屋大学大学院理学研究科
国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)
革新的先端研究開発支援事業 PRIME

所属学会
日本遺伝学会
日本神経科学会
日本分子生物学会
日本動物学会
比較生理生化学会
日本生物物理学会

受賞歴
2021花王科学賞
2018日本学術振興会賞
2012文部科学大臣表彰 若手科学者賞 など