甲南大学における教員養成の理念

 甲南学園は、甲南大学、甲南高等学校・中学校を設置する学校法人である。学園の創立は1919年の旧制甲南中学校開設にさかのぼり、その創立者は平生釟三郎である。平生は、「真の教育というものは人格の修養と健康の増進を第一義とし、これにそなえるに各人がうけたる天賦の特性を啓発指導するにあり」という教育理念を掲げた。
 平生は、知育偏重の詰め込み主義・画一主義を排して、「徳育」と「体育」を重んじ、「知育」に関しては各人の持つ天賦の才能を引き出し、個性を尊重する教育を行うことを建学の精神とした。そして、「たんなる知識の増大でなく、胆力気力の涵養に意を注ぐ教育」を唱導するとともに、「健全なる常識を持った世界に通用する紳士(淑女)」の育成を目指した。「人間の魂が人間をつくる」が、教育における平生の信念であった。
 このような建学の精神を受け継ぐ甲南大学は、「人物育成の教育」を旨とする大学である。このことは、「教育力の甲南」という基本方針として、現在まで脈々と引き継がれている。
 本学は、教職課程においても、建学の理念・目的に基づき、以下のような教員像を具現すべく教員養成を行うものとする。

【幅広い教養と深い専門性を追求する能力を有する教員】
 本学は、旧制高等学校以来の伝統を有する、文理系8学部及び5研究科からなる総合大学である。その広範囲な専門領域を土台に、幅広い教養を身につけるとともに、各学部・学科における高度な教育を通じて、深い専門性を追求しつづける教員を養成する。人文科学、社会科学、自然科学のいずれの分野においても、そこで得られる知識・技能は、「健全なる常識」を備えた人間が駆使するものでなければならない。

【専門職として「教え育てる」能力を有する教員】
 学習面や生活面における生徒のつまずきをいち早く察知し、あるべき方向に教え導く能力を有する教員を養成する。教員は、自身の「できなかったことができるようになった」ときの喜びを忘れることなく、常に生徒と共に歩み、彼らの成長を促す指導力を身につけねばならない。

【生徒の個性を伸長させる態度・姿勢を有する教員】
 生徒の個性を引き出し、伸長させるために、生徒の人権を尊重し、一人ひとりの生徒に寄り添い、しっかり向き合うことができる教員を養成する。このことを可能とするのは、教員自身の人間的魅力、他者を思いやる気持ち、教員と生徒との間での信頼関係である。