「常二備ヘヨ」は、学園創立者の平生釟三郎が、昭和13年(1938年)に発生した阪神大水害を記憶するために石碑に刻んだ訓示です。この水害で、甲南小学校では4名の生徒と付き添い者1名が喪われ、甲南高等学校・甲南中学校も校舎やグラウンドが土石流によって破壊されました。
そして、平成7年(1995年)1月17日の阪神・淡路大震災。再び襲った大災害によって、甲南学園は、大学院生1名、大学生15名、高校生1名、中学生1名、同窓生、家族、友人、地域の方々を喪い、校舎の半数が全壊する甚大な被害に見舞われました。
必ず、そして繰り返し起こる災害に、我々はどう備えればよいか。
被災と再生の記憶から、これからの備えへのメッセージを寄せていただきました。
- #1 甲南学園理事長 長坂 悦敬
- #2 甲南大学学長 中井 伊都子
- #3 甲南高等学校・中学校校長 山内 守明
- #4 甲南大学名誉教授 (前理事長) 𠮷沢 英成
- #5 甲南大学名誉教授 藤本 建夫
- #6 職員 林 正樹 (当時入試事務室)
- #7 元職員 渡辺 眞理子 (当時図書館)
- #8 職員 狭間 宏明 (当時図書館)
- #9 職員 青木 久子 (当時入試事務室)
阪神淡路大震災から30年がたち、このたび、図書館から、デジタルアーカイブを立ち上げることとなりました。これまでも、甚大な被害を受けた大学の教育と研究を支える機関として、学び舎の崩壊状況を、震災時の写真や動画形式で保存・公開してまいりました。しかしながら、写真やビデオテープの劣化に加え、震災を経験した教職員の退官/退職が続き、こうした知見を本学の学生・生徒に伝える「すべ」を失うという危機感を持つにいたりました。
他機関でも、震災資料は大事に保管されています。震災資料のデジタル化を通して、甲南大学図書館でなければできないことは、未来への希望溢れる学生・生徒に、自らの学び舎の崩壊と再生を確認してもらうことで、学ぶことの幸せを改めて実感する機会を提供することに尽きるのではないでしょうか。
震災後30年を経ての「常ニ備ヘヨ」。物がなくても、声がなくても、学ぶ幸せは永遠ではないのだと、このページから常に発信していけたらと思います。そして最後に。このページを見つけてくださったみなさまと、この経験を共有することが、広い社会のどこかに役立つことを祈っています。
2025年1月
甲南大学図書館長 杉本 喜美子
甲南学園震災アーカイブ 『学園が震えた日』は、甲南未来サポーターズ募金により開設いたしました。ご支援いただき、誠にありがとうございます。また、震災資料の電子化の事業は、KONANプレミア・プロジェクトで継続して行っています。