松下幸之助著 『道をひらく 』

 

 

知能情報学部 4年生 Kさんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名 : 道をひらく
著者 : 松下幸之助

出版社: PHP研究所
出版年:1968

人生について考えていると、努力しているはずなのに先が見えず、不安になることがある。生き方や選択について考えれば考えるほど、どの道が正しいのか分からなくなり、立ち止まってしまう人も多いだろう。松下幸之助の『道をひらく』は、そうした迷いを抱えたときに、考え方を静かに見直すきっかけを与えてくれる一冊である。

本書は、日本を代表する経営者である松下幸之助が、人生や仕事について書き残した文章をまとめた随想集である。経営の成功法則を語る内容ではなく、日々の出来事にどう向き合い、どう考えるかといった姿勢が中心に描かれている。短い文章で構成されており、難しい言葉は使われていないが、一つ一つの言葉には長年の経験を通して培われた考えが込められている。

読んでいて印象に残るのは、物事が思い通りに進まないときの受け止め方である。先の見通しが完全に立たなくても、ある程度の確信があれば行動してみること、失敗そのものよりも、真剣に向き合わない姿勢を戒める考え方が繰り返し示される。また、同じ失敗を繰り返す背景には、自分自身に問いを投げかけることをやめてしまう点があるという指摘や、視点を変えることで新た な道が見えてくるという考え方は、行き詰まりを感じている読者に新しい見方を与えてくれる。どれも特別な考え方ではないからこそ、日常の中で意識しやすい内容だと感じられた。

本書を読んでいると、明確な答えを与えられているというよりも、自分自身に問いを返されているような感覚になる。何を選ぶか以上に、選んだ道にどのような姿勢で向き合うかが大切なのだということが、静かに伝わってくる。

『道をひらく』は、読んだその日から何かを変えさせる本ではない。しかし、迷いや不安を感じたときに読み返すことで、考え方を整理し、自分の立ち位置を見直すきっかけを与えてくれる。将来について考え始めた大学生や若者が、立ち止まったときにそっと手に取ってみてほしい一冊である。