南地伸昭(経営学部)『巡礼の科学-聖なる旅が綾なす経験価値』

巡礼の科学-聖なる旅が綾なす経験価値
弘文堂, 2024.2
■ ISBN 978-4-335-16108-7
■ 請求記号 186.91//2002
■ 配架場所 図書館1階・教員著作コーナー
■ 著者(所属) 南地伸昭(経営学部・特任教授)

<自著紹介>
神仏への祈りを基本とする伝統的な巡礼は、宗教権威の後退等を背景に、経済財である巡礼ツーリズムとして商品化されるようになった。ツーリストが神聖な時空に身を委ね、自分探しを行いつつ巡礼ツーリズムを経験消費する過程は、思い出として記憶に残る経験価値を内包していると考えられる。本書では、巡礼ツーリズムの多彩な魅力を定量的に捕捉するための測定尺度モデルを開発し、日本の代表的巡礼ツーリズムの経験価値の構成要素を明らかにする。

松下豊久(卒業生)『平生釟三郎の栄光と苦悩』

平生釟三郎の栄光と苦悩 』
■ 松下豊久著, 甲南大学出版会, 2024.3
■ ISBN 978-4-9912975-1-9
■ 請求記号  289.1//3532
■ 配架場所 図書館   2F 甲南サロン
■ 著者所属  松下豊久(卒業生・元甲南小学校事務長)

知る人ぞ知る戦前・戦中の政財界第一級のリーダー
「人類共存」と「報国尽忠」を信条に明治・大正・昭和の時代を駆け抜けた生涯
その壮絶な人生を描いた新しい伝記

平生釟三郎は、甲南学園や甲南病院の創立者であると共に、東京海上専務、川崎造船所社長、日本製鉄会長などを歴任した実業家であり、文部大臣や大日本産業報国会会長にも就任した戦前日本を代表する指導者の一人である。
しかし他方では、日露戦争から第一次大戦そして満州事変から昭和20年の敗戦に至るまで、戦争の時代と真摯に向き合って格闘した人物でもあった。
本書は、その時代背景を詳しく辿るとともに平生釟三郎の苦悩と揺れ動く心の動きにも迫った画期的な伝記であり、戦前戦中の日本を多方面に知るためにも、是非とも多くの方々に読んで頂きたい一冊である。

<松下豊久氏から学生皆様へ>
 私は、甲南大学経済学部を卒業後民間企業に勤務していた者で、学者や教員ではありませんが、会社を退職後、平生釟三郎先生のことをあらためて勉強してこのような本を出すことが出来ました。
 皆様方もいつまでも学び続けて挑戦するという気持ちを持ち続けて下さい。
平生先生は、一流の財界人であり甲南学園の創立者でありますが、それだけではなく、日中戦争
から太平洋戦争へと向かう難しい時代に、様々な要職に就いて戦争の終結を願い苦悩した人でした。
そのことに焦点を当てた平生先生の新しい伝記を是非とも読んで下さいませ。

松下豊久 (まつした・とよひさ)
1949年生まれ。兵庫県在住。
甲南大学経済学部卒業後、三菱銀行に入社、大阪、ニューヨーク、東京で勤務。その後繊維商社を経て、2015年から2018年まで学校法人甲南学園甲南小学校の事務長を務める。

第一部 生い立ちから東京海上で活躍するまで
第一章 生い立ち・就学・就業
第二章 東京海上時代の釟三郎
第三章 釟三郎の転機

第二部 釟三郎の教育事業
第四章 拾芳会の設立と発展
第五章 甲南小学校の設立 参加から経営へ
第六章 旧制甲南中学校・高等学校の設立
第七章 釟三郎の教育理念

第三部 社会への関心の広がりと社会事業の開始
第八章 政治的・社会的関心への広がり
第九章 甲南病院の設立

第四部 政治経済活動の展開と多方面での活躍
第十章 釟三郎の政治的活動
第十一章 川崎造船所社長
第十二章 ブラジル移住者支援と貿易の拡大
第十三章 貴族院議員と文部大臣

第五部 戦時体制下での苦闘
第十四章 北支最高経済顧問
第十五章 日本製鉄会長・社長、鉄鋼統制会会長
第十六章 大日本産業報国会会長
第十七章 釟三郎の大東亜共栄圏観と戦争拡大回避の努力
第十八章 日米開戦後の釟三郎
第十九章 釟三郎の晩年
終章 釟三郎が残した事業 その後

★本書は、神戸新聞総合出版センターから発売されています。

藤本建夫(名誉教授)『実業家平生釟三郎の社会奉仕の理念 』

実業家平生釟三郎の社会奉仕の理念 : 画一主義教育の弊害と産業・貿易の保護干渉からの解放
■ 藤本建夫著, 甲南大学出版会, 2024.3
■ ISBN 978-4-9912975-2-6
■ 請求記号  289.1//3531
■ 配架場所 図書館   2F 甲南サロン
■ 著者所属  藤本建夫(名誉教授・元経済学部教授)

大正から終戦までの日本社会の実像を平生日記で読み解く――

<序章より抜粋>
私はこの書物を通してまさにこの時代を生き抜いた実業家平生釟三郎という一人の人物の生き様を多方面に描くことによって、彼が身を以て生きた時代そのものを明らかにして見たい。その作業を行う上で格好の極めて重要な資料を彼は後世の我々に残している。それは彼が日々の出来事を克明に書き記した日記である。彼は大正2(1913)年10月7日に筆を起こし、昭和20(1945)年10月12日に筆を擱くまで、この激動の32年間を彼が実際に体験し、見たまま、感じたままをこの日記に記していて、今我々はこれを通して、通常の歴史書や偏った思想書とは違った興味深い生き生きとした事実や人物に接することができる。その意味でこの日記は日本の近現代史にとって第一級の史料であると言っても過言ではないだろう。

第1部 消滅する武士道精神と商道徳の退廃
第1章 第一次大戦前夜の軍部の疑獄事件
第2章 第一次世界大戦と成金の叢生
第3章 商道徳の退廃と誤った金融政策が大正9年の大恐慌を誘発する
第4章 関東大震災と火災保険問題
第5章 昭和金融恐慌 ―万策尽きた神戸の雄傑金子直吉と松方幸次郎―

第2部 平生釟三郎、日本社会をliberateする
第1章 学校教育を官僚的干渉よりliberateする
第2章 労働・社会運動と購買組合
第3章 療病を営利的医術よりliberateする
第4章 産業・貿易をliberateする
第5章 川崎造船所をliberateし、労使協調体制を実現する
第6章 訪伯経済使節団の成功と日伯貿易の増大
第7章 文部大臣として国字を漢字の禍害からliberateする

第3部 戦争責任を皇室に転嫁する軍部とその軍部に翻弄される平生釟三郎
第1章 満州国の建設と国際社会からの孤立
第2章 北支方面軍司令官最高経済顧問平生釟三郎
第3章 日本製鉄株式会社のフューラー(Fȕhrer)平生釟三郎
第4章 「日満一如の精神」とは平生にとって何だったのか
第5章 日米軍事力格差の現実と太平洋戦争への道
終章 敗戦と平生の「日記じまい」

★本書は、神戸新聞総合出版センターから発売されています。

[藤棚ONLINE]図書館長・杉本喜美子先生(マネジメント創造学部)コラム「想いを繋ぐ 言葉を紡ぐ」

図書館報『藤棚ONLINE』
図書館長・杉本喜美子先生(マネジメント創造学部) コラム

 新入生のみなさん、ご入学おめでとうございます!
 そして在校生のみなさん、図書館の窓が、桜の咲き誇る春の美しい一瞬を切り取れること、すでにご存じでしょうか。

 甲南大学の特徴の一つが、彩り教育です。理解力や創造力を身につけ、社会で羽ばたくためには、専門分野以外の学びも欠かせない。一人ひとりが興味を持つ内容に、できる限り応えたい。こうした想いが形になったもので、「知のインフラ」と呼ばれる図書館こそ、こうした学びの軸となれたらと思っています。
 彩り教育の一つとして展開されるKONAN ライブラリ サーティフィケイトで、昨年度1級を取得された2023年度卒業生(なんと100冊の本を読破!)に、「2024年度入学生へ、もし一冊だけ本を紹介するなら、どの本を薦めますか?」と質問しました。その答えが、最初に紹介する辻村深月さんの『ツナグ』『ツナグ-想い人の心得-』です。ベストセラーであるこの2冊を、昨日読み返し、数ある本からなぜ彼女がこれを選んだのか、私なりの答えを、今回のタイトルで表現してみました。

      辻村深月著, 新潮社 , 2010                辻村深月著, 新潮社 , 2019

 自分の人生に責任を取る、ことは、当たり前ながら難しいことです。どう生きていくべきか、何に適性があるのか、どんな才能を持っているか、これを頑張ってどうなるのか。大学生になると、悩むことは膨大にあります。それぞれの悩みに応じて、その答えを知っている(であろう)先達に答えを聞いてみたい。両親、兄姉、先生、先輩、友達。こうした相談に適う相手は、正直な自分の心を安心して委ねられる人物なのではないでしょうか。
 常日頃から温かい気持ちで自分を見守り、激励してくれる人物。こうしたかけがえのない相手が「もはや生きていない」とき、どう相談できるのか。詳しくは本を手に取っていただけたらと思います。現実を生きるみなさんには、身近にいる「生きている」相手から学び、そしてもし大切な相手が「もはや生きてはいない」のなら、その存在を心に感じながら、その相手が望み、時には驚くような成長を遂げて生きていってほしいと願っています。
 図書館にある膨大な書籍もまた、実態はなくともあなた自身を支えています。答えの見つからない問いに悩んだときは、ぜひ一度図書館にきてくださいね。

 さて、自分の学びのなかで関心のある本を紹介します。

『技術革新と不平等の1000年史』
ダロン・アセモグル、サイモン・ジョンソン著 鬼澤忍、塩原通緒 訳

 開発経済学の視点で興味深い本です。最近のデジタル技術・AIの発展が、大多数の人々に豊かさをもたらすのか、それとも、所得格差を広げるのか。これを改めて問いかけています。人間の活動を補完し、人の役に立つ仕事を新たに生みだすために、こうした技術を開発し、活用することはできないだろうか。未来は、我々の選択次第なのだから、その処方箋たるべく、望ましい選択肢とは何なのかを考えさせてくれます。どのような世の中であっても、希望は人の選択がもたらすことを、経済学の視点からも明らかにしてくれている、素晴らしい本だと思います。


【図書館事務室より】
 藤棚ONLINE2024年度第1号は、図書館長のマネジメント創造学部教授・杉本喜美子先生より、コラムとおすすめ本をご紹介いただきました。テーマは「繋ぐ、紡ぐ」です。
 「紡ぐ」と言えば、甲南大学図書館で実施しているKONANライブラリサーティフィケイトで使用する読書記録ノートの表紙が新しく素晴らしいデザインになります。マネジメント創造学部のご卒業生であり書家でもある方が、デザインしてくださいました。

 「Journal」は旅日記という意味があります。たくさんの読書を通じて、様々な旅の記録を紡いでみてください。読書記録ノートはエントリー時に1部お渡ししていますので、ぜひ手に取ってみてください。
 また、図書館では、図書館HPだけでなくX(旧Twitter)やこの図書館ブログでも情報発信していますので、定期的にチェックしてみてくださいね。学生の皆さんのご利用をお待ちしています。

エントランス展示「うるう年~星の運行と人の営み~」

 新しい年度に合わせて、図書館エントランス展示を更新しました。題して「うるう年~星の運行と人の営み~」です。
 2024年はうるう年。うるう年にまつわる素朴な疑問を集めました。

 みなさんは「うるう」を漢字で書けますか?そもそも「うるう」って何でしょうか?31日あるの月もあるのに、なぜ2月の日数が少ないのでしょう?

 調べてみると、 天文学、 言語学、歴史学、法学、文学、物理学などなど、いろんな分野の知恵と工夫が、時代を超えて重ねられていました。展示では、図書館の資料を使って調べるコツと合わせてご紹介しています。

 ちょっとしたことでも、興味を持ったら、 ぜひ 図書館で調べてみてください! 深くて楽しい世界が広がりますよ。

[藤棚ONLINE]全学共通教育センター・山本貴揚先生コラム

図書館報『藤棚ONLINE』
全学共通教育センター・山本貴揚先生コラム

 僕は、法律学という、現実社会を対象とした学問をやっていますが、10年ほど前のことだったでしょうか、懇意にしている洋品店で立ち話をしていた相手(他の客)から、「あなたはあの世とこの世の間にいる人です」と言われたことがあります。もちろんその時は、「何を言っているんだ、この人」と思いましたが、その言葉の影響でしょうか、今となっては、文字どおり“夢か現か”という感覚がつねに傍にある、という感じで生きています。

 昨年、知人から、僕たちの住むこの三次元世界は、宇宙の彼方の二次元平面に元データがあって、そのデータが投影されたホログラムに過ぎない、というような世界(宇宙)の捉え方があることを教わりました(理系の方にはずいぶん不正確な理解だとお叱りを受けそうですが、そこは文系人間がそんな感じで理解に努めている、ということで、どうぞお許しください。よい入門書をご紹介いただけますと幸いです)。イーロン・マスクも、この世は仮想現実と考えてほぼ間違いない、という趣旨のことを言っていますが、いずれの考え方も、この世界は僕たちが考えているような実体としてそこに存在するわけではない、と捉える点では同じような考え方なのだと思います。こういった捉え方を否定する主張も存在するようですが、“夢か現か”の僕にはわりと自然に受け入れることのできる観念で、こういう話を聞くにつけ、僕の感覚は“現”よりも“夢”に近づいてしまうのです(ちょっと他人の話に影響され過ぎでしょうか・・・苦笑)。

 さて、こういった世界観では、人の意識も作られている、ということまで言われているようなのですが、これにはさすがの僕も抗いたい気持ちがあります。自分はいるのかいないのか、という考えがよぎって怖くなった時には、そっと法律の本を開いて、“現実”への引き戻しをお願いする次第です。

 (日経サイエンス 2006年2月号より)

※図書館よりあわせて読みたい記事をご紹介!
時間と空間の起源」(Nature ダイジェスト Vol.10 No.11 ※オープンアクセス)
「重力は幻なのか? ホログラフィック理論が語る宇宙」(日経サイエンス, 2006/2号, P.20〜28)
「ホログラフィック宇宙 時空の本質に迫った四半世紀」(日経サイエンス, 2023/11号, P.70〜74)

※『Natureダイジェスト』や『日経サイエンス』は、学内ネットワークに接続した端末より閲覧できます。学外から利用する場合はVPN接続をご利用ください。学外アクセスの詳細はこちら。
※甲南大学図書館HPでは電子図書館を公開しています。特に雑誌コーナーは学生向けの電子ジャーナルをすぐに閲覧できるようにピックアップしていますので、ぜひ楽しんで読んでみてください!