KONANライブラリ サーティフィケイト学生企画『未知の場所に踏み込む人へ向けたナビゲーションプロジェクト』

行ったことがない場所に行くときは、ちょっとした勇気が必要ですよね。ルートを調べるだけでなく、どんな場所か見ておけるという点でも、地図アプリは便利です。
普段はポートアイランドキャンパスに通っているフロンティアサイエンス学部3年生の島村大地さんが、甲南大学図書館をGoogleMapに搭載してくれました。
「春から甲南」の皆様も、「改めて甲南」の皆様も、ご体験ください。

 新入生になったとき、まずはどこに何があるかを把握しなければならないのは必須である。自分も岡本キャンパスにて授業がある際に、何号館がどこにあるのかが分からず迷ってしまったこともあった。迷いそうなときには、GoogleMapなどの地図アプリケーションを使用するが、これを図書館内でも使えるようにすることによって、はじめて訪れるときでも図書館内部の地形把握ができ、上級生になった際でも、新たな発見につながるのではないかと考えた。
 先ずは、地形の整理から行った。図書館の職員さんと打ち合わせをして、撮影する階や各階のどこまで映すか等を決めていった。特に、撮影枚数は多くとりすぎるとマップ上での操作に影響が出るため、適切な枚数になるようにした。
 次に撮影は、許可を得て、人がいない閉館日に行った。撮影者自身が映り込み過ぎず、適切な高さを維持しながら撮影することに気を付けた。 撮影当日は雨模様だったこともあるが、公園等の屋外での撮影とは違い、光の加減に注意しなければならなかった。
 ぼかしを入れたり撮影者を消すなど、写真を加工し、GoThruというツールで撮影位置情報を確認しながら写真を配置していった。この作業が一番難所であり、位置が変わると 1階 なのに2階の景色が見えたりしてしまう。写真から写真をつなげる際に階層から逸れないように設定を加えたり、そういったことを一つ一つ行うのが少々大変だった。方角についてもGoogle Mapsでは一つ一つ設定しなければいけないため慎重にかつ丁寧に行うのがまた大変だった。
 こうして完成したものを実際にアップロードし、都度ぼかしを入れたり等の修正を行い完成させた。今後は、キャンパスごとに利便性向上のための写真撮影等を行い、それらで培った経験を活かして、社会で各々利用者に向けた情報提供を行いたいと感じた。

フロンティアサイエンス学部 島村大地

湊かなえ著 『告白』

 

 

知能情報学部 4年生 Tさんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名 : 告白
著者 : 湊かなえ著
出版社:双葉文庫
出版年:2010年

「愛美は死にました。しかし事故ではありません。このクラスの生徒に殺されたのです。」中学校内で娘を亡くした教師が、ホームルームでクラスメイトたちに告白するところから物語は幕を開ける。教師は娘を殺した生徒A,Bとした。この二人が協力して娘を殺したことを知った教師は、エイズ感染者である夫の血液を牛乳に混ぜて二人に飲ませることで制裁を下し、教室を去った。教師の告白をきっかけにクラスメイトは二人をいじめるようになっていく。のちに牛乳は教師の夫によりすり替えられ、二人がエイズを発症することはなかったが、教師の復讐はこれで終わりではなかった。

この物語では、登場人物が交代で語りてを担い、それぞれの告白をしていく。教師の校内での事件の真相の告白から始まり、教師が去った後の教室の異様さを語る学級委員長、家庭内で起きた事件の経緯と、弟に制裁を下した教師への怒りについて語るBの姉、Aと共に教師の娘を殺し、その裁きを受け精神が追いつめられる様子や、日常的に母親から理想を押し付けられていたことに対する苦悩について語るB、母親への歪んだ愛を抱き、母親の気を引きたいがために教師の娘を殺害したことを誇らしげに語るA…。別々の視点から事件の一連について語られることで、その真相が浮き彫りになっていく。

端的で分かりやすい説明、展開の速さ、構成の見事さにより、読者のページをめくる手は止まらず、そのスピードは次第に速くなっていくに違いない。登場人物の狂気さには目を背けてしまいたいが、その登場人物ひとりひとりにもしっかりとした行動原理があり、読者の同情を誘う顔もある。人間も少しの思い込みやタイミングの違いで、一歩間違えれば異常と化すことが感じられる。物語の終わり方も衝撃的で、ある意味では救われ、ある意味では救われないといった印象を持った。生まれ育った家庭環境や、教師の下した制裁から生み出される人々の狂気、恐怖を、ぜひ味わっていただきたい。

角田光代著 『八日目の蟬』

 

 

知能情報学部 4年生 Tさんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名 : 八日目の蟬
著者 : 角田光代著
出版社:中公文庫
出版年:2011年

希和子は浮気相手とその妻が出かけた自宅に忍び込んだ。部屋で泣く赤ん坊を抱き上げようとした際に、赤ん坊が希和子に向って笑いかけた。希和子は夫婦の間に生まれた赤ん坊を見るだけのつもりだったが、気づくと赤ん坊を抱えて逃亡していた。希和子は赤ん坊に薫と名付け、友人の家や老女の家、宗教施設のエンジェルハウスなど、生活の場を転々としながら薫を育てる。小豆島での生活を最後に、希和子が誘拐犯として薫と引き離されるところで逃亡劇は幕を閉じる。大人になった薫こと恵理菜は、エンジェルハウスでかつて共に過ごした千草の接近をきっかけに、希和子や自分の親、そして自分自身について、見つめ直すこととなる。

逃亡生活の最中、希和子の目に入る様々な媒体から自分に捜索の手がどこまで伸びてきているのかを知る際の焦燥や、薫の授乳やおむつ替え、発熱からくる子育てをした経験のない希和子にとっての困惑や不安など、その心情描写はあまりにもリアルで、まるで読者も希和子と共に逃亡していると錯覚させられる。そのため、逃亡劇としてのドキドキハラハラとした感覚が読者をまとう。また、エンジェルハウスでは外部からの情報が遮断され、希和子と薫は女性のみの集団生活を強いられるため、そのカルトチックでミステリアスな空気感に、読者も不安にかられるだろう。物語後半では、希和子や実の母を通して、薫が子供に対する愛情について考え、葛藤する姿が描かれる。浮気相手の子供を育てる、それは倫理的には問題があるのかもしれないが、生命の運命として、種の保存として子供を育てるのは本能、むしろ必然ではないのか。生まれてくる子供は、美しい世界をその目で見る、それを果たす義務が自分にはあるのではないか、あなたも考えさせられるだろう。

このように、一つの物語の中で様々な感情に出会い、思考させられるのも、本作の魅力の一つであるかもしれない。ぜひ手にとって、筆者の生命に対する美しさの考え方や、登場人物たちに対するいとおしさを感じてほしい。

西岡壱誠著 『頭がいい人は○○が違う : 偏差値35から東大に合格してわかった』

 

 

知能情報学部 4年生 Kさんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名 : 頭がいい人は○○が違う : 偏差値35から東大に合格してわかった 
著者 : 西岡壱誠著
出版社:日経BP
出版年:2023年

多くの人がよく「私は頭が悪いから…」と言うが、これには、「頭のよさとは先天的なものである」という前提が見え隠れしていると考えられる。つまり、後天的に「頭をよくする」なんてことは無理と考えているのであろう。高校まで勉強がまったくできなかった筆者は、偏差値35から2浪して東大に合格している。つまり、「頭のよさ」はある程度自分の意思と努力で作れると考えられる。また、筆者は「頭がいい人とそれ以外のひとでは、何が違うのだろう?」という問いに対する答えを自分なりに出すために執筆している。

そもそも、「頭がいい」というのは、頭の使い方、つまり、思考法が優れているとも言える。頭がいいとされる人間の頭の使い方として、課題や目標を分解する、頻繁になぜかと問う、調べればわかることはすぐに調べる、自分の弱みをよく探す、合格体験記を熟読する、丸暗記を避けるなどがある。つまり、「分からない」という状態を嫌う傾向にあるといえるだろう。

思考を変えるためには、まずは行動から見直すとよい。ルールを守る、上手に手を抜き仕組みを活用して頑張りすぎない、スケジュールを立てずにやることリストを作る、「小テストの満点」にこだわる、最新ツールを試す、努力の限界を見極めて早い段階であきらめるなどの行動に変化させるとよいだろう。「心」を変えることもまた、思考と行動を劇的に変える。素直な心を持つことで、情報の吸収が早くなる。新しい情報を吸収することで、「行動」も変わりやすくなる。

このように、頭がいいとされる人間の思考や行動、心をマネすることで、後天的に「頭をよくする」ことができる可能性が見込まれる。全てを同時にマネするのは難しいと考えられるので、まずは自分がマネしやすい部分から順にマネするとよいのではないだろうか。

最後に、筆者の問いに対する答えは、「自責思考」なのか「他責思考」なのかという違いだ。頭のいい人は自責思考である傾向にある。

細田高広著 『コンセプトの教科書 : あたらしい価値のつくりかた』

 

 

知能情報学部 4年生 Kさんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名 : コンセプトの教科書 : あたらしい価値のつくりかた
著者 : 細田高広著
出版社:ダイヤモンド社
出版年:2023年

本書籍は、コンセプトを「つくる」ために書かれた。どのように発想し、構想を膨らませ、言語に落とし込むのか。最初の一手から仕上げまでの一連の流れひとつの体系にまとめられている。「コンセプト」という単語は、「全体を貫く新しい観点」と説明する辞書が多い。ビジネスシーンでのコンセプトの構成は、判断基準になること、一貫性を与えること、対価の理由になることの3つと言える。

また、最初の一手で重要なこととして、コンセプトメイキングがある。「新しい意味の創造」を意味し、コンセプトメイキングは問いからはじまるが、意味のある問いでなければ意味がない。意味のある問いから意味のあるコンセプトが生まれるからだ。

問いの良し悪しは「自由度」(問いが誘発する答えの幅)と「インパクト」(答えることで生まれる社会や生活への影響力)で決まる。良い問いは受け手の発想に自由を与え、決定的な答えを導く。設計には、顧客目線で設計する「インサイト型ストーリー」と、未来目線で設計する「ビジョン型ストーリー」の2種類がある。「インサイト型ストーリー」は、顧客を救済するもので、4つのC(Customer:顧客、Competitor:競合、Company:会社、Concept:コンセプト)から構成される。

コンセプトの設計ができたならば、1行化(ワンフレーズ化)しなければならない。ここではまず、3点整理法を用いて意味を整理する。次に、目的か役割かに応じて情報を削ぎ落し、最後に2単語ルールに則って言葉を磨き上げる。コンセプトに役立つ10の構文も存在するので、それを用いるとより良いコンセプトに仕上がるだろう。

ここまで到達すれば、試作品を作成すると良い。製品の開発コンセプトであれば、1枚の紙にまとめる、マーケティングコンセプトであれば、1文にまとめることが効果的だ。

このように、この本はコンセプトのつくり方を最初から最後まで懇切丁寧にまとめられている。

森見登美彦著 『四畳半神話大系』

 

 

知能情報学部 4年生 Oさんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名 : 四畳半神話大系
著者 : 森見登美彦著
出版社:太田出版
出版年:2005年

主人公私と小津の友情物語であると言うならば、正解ではあるのだろう。複雑に入り組んだように思えた四畳半は四畳半なのだからよく考えればきれいな正方形なのである。四畳半を移動すれば、小津との新しい物語が生まれる。選択肢は無数にあるのに小津との運命からは逃げられないのだ。

私の物語を読んで涙も出なければ、腹の底から笑うこともない。てっきり明石さんとの恋物語が始まるのかと思った自分がどれだけの間抜けなのかと痛感した。私は阿呆でもあり間抜けでもある。だから小津の手のひらで転がされることしかできないのだ。妖怪占い師に揚げ足を取られているやつが華やかな学生生活を送れるはずもない。どの四畳半に転がり込んでも、根本的には同じだ。コロッセオ、モチグマン、蛾、猫ラーメン、小津。選択肢を変えても運命の黒い糸で結ばれたものはそうやすやすと運命の変更を認めてくれるわけがない。もしかすると神はそこまで手が回らないのかもしれない。もしかすると神ごとの役割を全うしているだけかもしれない。明石さんと結ばれるのは私と決まったのだからこれ以上のことはない。きっかけを作るために神は蛾の大群を送り込んだのかどうかは知る由もない。ただ目の前の好機を逃さないことだ。

好機というのは良い機会ということです。好機というのは掴まえにくいものであります。好機のように見えないものが実は好機であることもありまして、好機だと思われたものが好機ではないこともあるのです。目印はコロッセオです。もしこの本が見えたならそこにコロッセオがあるのです。いや、コロッセオがあるときこの本が開いているのかもしれせん。

ですが好機を逃しても焦る必要はありません。立派なみなさんはいずれは四畳半を覗くことができるのですから。