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[藤棚ONLINE]文学部・図師宣忠先生 推薦『図書館の興亡──古代アレクサンドリアから現代まで』ほか2冊

図書館報『藤棚ONLINE』
文学部・図師宣忠先生推薦『図書館の興亡──古代アレクサンドリアから現代まで』ほか2冊

 みなさんは本をどのくらい読みますか? 人は一生の間に何冊の本を読むことができるでしょうか? 日本で一年間に出版される点数は、2023年のデータでは6万6885冊だったそうです。これを365日で割ると一日当たり183冊。1人の人がとても全部を読み切れる量ではありません。溢れかえる本の量に圧倒されますね。

 そこで大切になってくるのが「良い本」に巡り合えるかどうか。甲南大学図書館には学生のみなさんの学びに関わる本を中心に全体でおよそ110万冊もの本が所蔵されています。レポート作成や卒論執筆のための文献を探すために図書館を利用している人は多いと思いますが、自分にとって大切な本と出合うために書架のあいだを巡ってみてはいかがでしょうか。もちろん人によって「良い本」は異なります。図書館に所蔵されている本もじつは玉石混淆だし、その圧倒的多数は自分には響かないものかもしれません。だからこそ、今の自分にピッタリの素敵な本との邂逅を果たすことができたとき、それは今後の人生にとってかけがえのない瞬間となるはずです。そしてその本をじっくり味わってみてほしいと思います。

 おすすめの本としては、図書館をめぐる興味深いエピソードが満載の本を3冊紹介しましょう。そもそも図書館とは何のために存在するのか? 本をたくさん集めて、保管し、人々の利用に供する理由とは? 図書館の歴史を辿るとき、社会の中で必ずしも図書館が大切にされず、逆に破壊の憂き目に遭う事態も見えてきます。いずれの本も「人間にとって図書館とは何か」という根源的な問いに向き合っていて、読み応えがあります。

[藤棚ONLINE]図書館長・杉本喜美子先生(マネジメント創造学部)コラム「想いを繋ぐ 言葉を紡ぐ」

図書館報『藤棚ONLINE』
図書館長・杉本喜美子先生(マネジメント創造学部) コラム

 新入生のみなさん、ご入学おめでとうございます!
 そして在校生のみなさん、図書館の窓が、桜の咲き誇る春の美しい一瞬を切り取れること、すでにご存じでしょうか。

 甲南大学の特徴の一つが、彩り教育です。理解力や創造力を身につけ、社会で羽ばたくためには、専門分野以外の学びも欠かせない。一人ひとりが興味を持つ内容に、できる限り応えたい。こうした想いが形になったもので、「知のインフラ」と呼ばれる図書館こそ、こうした学びの軸となれたらと思っています。
 彩り教育の一つとして展開されるKONAN ライブラリ サーティフィケイトで、昨年度1級を取得された2023年度卒業生(なんと100冊の本を読破!)に、「2024年度入学生へ、もし一冊だけ本を紹介するなら、どの本を薦めますか?」と質問しました。その答えが、最初に紹介する辻村深月さんの『ツナグ』『ツナグ-想い人の心得-』です。ベストセラーであるこの2冊を、昨日読み返し、数ある本からなぜ彼女がこれを選んだのか、私なりの答えを、今回のタイトルで表現してみました。

      辻村深月著, 新潮社 , 2010                辻村深月著, 新潮社 , 2019

 自分の人生に責任を取る、ことは、当たり前ながら難しいことです。どう生きていくべきか、何に適性があるのか、どんな才能を持っているか、これを頑張ってどうなるのか。大学生になると、悩むことは膨大にあります。それぞれの悩みに応じて、その答えを知っている(であろう)先達に答えを聞いてみたい。両親、兄姉、先生、先輩、友達。こうした相談に適う相手は、正直な自分の心を安心して委ねられる人物なのではないでしょうか。
 常日頃から温かい気持ちで自分を見守り、激励してくれる人物。こうしたかけがえのない相手が「もはや生きていない」とき、どう相談できるのか。詳しくは本を手に取っていただけたらと思います。現実を生きるみなさんには、身近にいる「生きている」相手から学び、そしてもし大切な相手が「もはや生きてはいない」のなら、その存在を心に感じながら、その相手が望み、時には驚くような成長を遂げて生きていってほしいと願っています。
 図書館にある膨大な書籍もまた、実態はなくともあなた自身を支えています。答えの見つからない問いに悩んだときは、ぜひ一度図書館にきてくださいね。

 さて、自分の学びのなかで関心のある本を紹介します。

『技術革新と不平等の1000年史』
ダロン・アセモグル、サイモン・ジョンソン著 鬼澤忍、塩原通緒 訳

 開発経済学の視点で興味深い本です。最近のデジタル技術・AIの発展が、大多数の人々に豊かさをもたらすのか、それとも、所得格差を広げるのか。これを改めて問いかけています。人間の活動を補完し、人の役に立つ仕事を新たに生みだすために、こうした技術を開発し、活用することはできないだろうか。未来は、我々の選択次第なのだから、その処方箋たるべく、望ましい選択肢とは何なのかを考えさせてくれます。どのような世の中であっても、希望は人の選択がもたらすことを、経済学の視点からも明らかにしてくれている、素晴らしい本だと思います。


【図書館事務室より】
 藤棚ONLINE2024年度第1号は、図書館長のマネジメント創造学部教授・杉本喜美子先生より、コラムとおすすめ本をご紹介いただきました。テーマは「繋ぐ、紡ぐ」です。
 「紡ぐ」と言えば、甲南大学図書館で実施しているKONANライブラリサーティフィケイトで使用する読書記録ノートの表紙が新しく素晴らしいデザインになります。マネジメント創造学部のご卒業生であり書家でもある方が、デザインしてくださいました。

 「Journal」は旅日記という意味があります。たくさんの読書を通じて、様々な旅の記録を紡いでみてください。読書記録ノートはエントリー時に1部お渡ししていますので、ぜひ手に取ってみてください。
 また、図書館では、図書館HPだけでなくX(旧Twitter)やこの図書館ブログでも情報発信していますので、定期的にチェックしてみてくださいね。学生の皆さんのご利用をお待ちしています。

[藤棚ONLINE]全学共通教育センター・山本貴揚先生コラム

図書館報『藤棚ONLINE』
全学共通教育センター・山本貴揚先生コラム

 僕は、法律学という、現実社会を対象とした学問をやっていますが、10年ほど前のことだったでしょうか、懇意にしている洋品店で立ち話をしていた相手(他の客)から、「あなたはあの世とこの世の間にいる人です」と言われたことがあります。もちろんその時は、「何を言っているんだ、この人」と思いましたが、その言葉の影響でしょうか、今となっては、文字どおり“夢か現か”という感覚がつねに傍にある、という感じで生きています。

 昨年、知人から、僕たちの住むこの三次元世界は、宇宙の彼方の二次元平面に元データがあって、そのデータが投影されたホログラムに過ぎない、というような世界(宇宙)の捉え方があることを教わりました(理系の方にはずいぶん不正確な理解だとお叱りを受けそうですが、そこは文系人間がそんな感じで理解に努めている、ということで、どうぞお許しください。よい入門書をご紹介いただけますと幸いです)。イーロン・マスクも、この世は仮想現実と考えてほぼ間違いない、という趣旨のことを言っていますが、いずれの考え方も、この世界は僕たちが考えているような実体としてそこに存在するわけではない、と捉える点では同じような考え方なのだと思います。こういった捉え方を否定する主張も存在するようですが、“夢か現か”の僕にはわりと自然に受け入れることのできる観念で、こういう話を聞くにつけ、僕の感覚は“現”よりも“夢”に近づいてしまうのです(ちょっと他人の話に影響され過ぎでしょうか・・・苦笑)。

 さて、こういった世界観では、人の意識も作られている、ということまで言われているようなのですが、これにはさすがの僕も抗いたい気持ちがあります。自分はいるのかいないのか、という考えがよぎって怖くなった時には、そっと法律の本を開いて、“現実”への引き戻しをお願いする次第です。

 (日経サイエンス 2006年2月号より)

※図書館よりあわせて読みたい記事をご紹介!
時間と空間の起源」(Nature ダイジェスト Vol.10 No.11 ※オープンアクセス)
「重力は幻なのか? ホログラフィック理論が語る宇宙」(日経サイエンス, 2006/2号, P.20〜28)
「ホログラフィック宇宙 時空の本質に迫った四半世紀」(日経サイエンス, 2023/11号, P.70〜74)

※『Natureダイジェスト』や『日経サイエンス』は、学内ネットワークに接続した端末より閲覧できます。学外から利用する場合はVPN接続をご利用ください。学外アクセスの詳細はこちら。
※甲南大学図書館HPでは電子図書館を公開しています。特に雑誌コーナーは学生向けの電子ジャーナルをすぐに閲覧できるようにピックアップしていますので、ぜひ楽しんで読んでみてください!

[藤棚ONLINE]フロンティアサイエンス学部・川内敬子先生『この世を生き切る醍醐味』

図書館報『藤棚ONLINE』
フロンティアサイエンス学部・川内敬子先生推薦『この世を生き切る醍醐味』

樹木希林著
朝日新聞出版, 2019

 役者の樹木希林さんの亡くなる数ヶ月前のインタビューを本にした一冊です。仕事や結婚に育児、そして14年間のがん闘病生活まで、樹木希林さんが実践した“楽しく生きるためのコツ”について記されています。後半には娘である内田也哉子さんから見た母親としての樹木希林さんについて記されています。樹木希林さんは、苦しいことを周囲に伝えることなく、命を全うされ、立派な母親であったと称賛されています。

  一生のうち2人に1人が、がんにかかる時代となりました。現在、さまざまな医療へのアクセスが可能となり、“がんを不治の病である”と考えている人はそれほど多くありません。とはいえ、がんにかかると誰もがストレスを感じ、進行がんになると、多くの方が痛みを感じます。辛さや痛さを口にすることは悪いことではありませんので、樹木希林さんの素晴らしさは、苦しい思いを伝えないことであったとは思いません。樹木希林さんが、“自然の摂理の中で人は生まれては死んでいくこと“を、身をもって次の世代に遺したということを知り、樹木希林さんに対して尊敬の念が強くなりました。

  私は、“カッコいい人生の幕引きのために、日ごろから心がけておくことは何か?” という疑問に対する答えを求め、この本を手にしました。読み終えても、その答えは得られませんでしたが、樹木希林さんの考えを納得することで、肩の力が抜けました。自然の摂理の中で生きているのだから、無理に力を入れないで過ごす日も大切にしたいと考えられるようになりました。是非、皆さんも読んでみてください。

[藤棚ONLINE]マネジメント創造学部・高砂孝緒先生『そのビジネス課題、最新の経済学で「すでに解決」しています。 』

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マネジメント創造学部・高砂孝緒先生推薦『そのビジネス課題、最新の経済学で「すでに解決」しています。 仕事の「直感」「場当たり的」「劣化コピー」「根性論」を終わらせる』

 みなさんは経済学という学問にどのような印象を持っているでしょうか。中には「実生活には何の役にも立たないのではないか」と感じている方もいるかもしれません。そこで今回紹介する書籍は、『そのビジネス課題、最新の経済学で「すでに解決」しています。 仕事の「直感」「場当たり的」「劣化コピー」「根性論」を終わらせる 』です。

 この本では、実際にビジネス実装に携わっている気鋭の経済学者たちが、経済学がビジネスでどのように応用されているかを分かりやすく解説しています。また、著者たちがどれほど苦労してビジネス実装に臨んできたかも垣間見ることができます。難解な数式は一切使われておらず、経済学の初学者でも理解しやすい内容になっています。

 私は普段、西宮キャンパスで経済学の講義を担当していますが、学生たちに冒頭のような質問をすると、相変わらず「実用から少し距離のある学問」といったイメージが根強く、もどかしい気持ちになります。この本を通じて、経済学が実際にどれだけ役立つかを多くの人に知っていただければ幸いです。私自身もこの本と著者たちにならい、実践を意識した講義づくりにより一層取り組んでいくつもりです。

[藤棚ONLINE]経営学部・杉田俊明先生コラム「グローバル経営関連研究へのいざない」

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経営学部・杉田俊明先生コラム「グローバル経営関連研究へのいざない」

 グローバル経営を研究し、関連専門科目を担当する筆者が学部生にまずお勧めしたい参考書は、『グローバル経営入門(新装版)』(浅川和宏著、日経BP、2022年刊、第2版)です。

 タイトルに「入門」、と示されている通り、本書は、グローバル経営についてどうとらえたらよいのか、などについて、数ある関連専門図書のなかでは相対的に読みやすい書物となっているのが、その第一の理由です。

 そして、本書はグローバル経営からみた戦略論、組織論やマネジメント、人的資源管理、グローバル経営と異文化との関係などについても紹介し、グローバル経営関連研究がカバーする領域の広さを示しながら、それら概容をある程度まとめられているのが第二の理由です。

 ところで、実際に本書を手に取って読み始めた一年生や、関連専門科目をまだ履修していない学生からは早速、「どこが読みやすいのか」と、クレームを付けられるかもしれません。その理由は、大学に一般的にある専門科目は(経営学部の例でみれば)戦略は戦略論、組織は組織論、というように、それぞれ一つの領域のものを学ぶに対して、グローバル経営は最初から多くの領域を跨ぐものとして「ややこしい」、と思われているかもしれません。

 理由のもう一つは、一般的な参考書や教科書から、あるいは、基礎や専門科目のなかで、一般に目にすることも聞くこともない、専門的な概念や理論が本書において頻出していることかもしれません。エントリー・モードや、OLIパラダイム(所有の優位、立地の優位、内部化の優位)などがその典型例だと思われます。

 しかし、これらこそがグローバル経営関連理論の土台であり、グローバル経営関連研究の神髄に触れ始めるものでもあります。筆者が本書を勧める最大の理由は実はこの点にあります。

 グローバル経営は実態として今の世界では日常になりつつありながらも、それは単なる一般経営の延伸、といまだ誤認される向きがあります。本書を閲読すれば、グローバル経営関連研究は経営学を横断的に包摂し、グローバル経営固有の理論を含め、エリアスタディーズやグローバルスタディーズ、地政学なども含むものとして理解できるようになるはずです。

 つまり、広範囲、横断的な学びに加えてグローバル的な課題に即応する能力を養うのがグローバル経営関連学びともいえます。グローバル社会での活躍を目指す者に勧めたい研究領域であり、本書の閲読がそのステップの一つになることを期待しています。