このほど、シンガポール国立大学(NUS)での講演出張の際に、当大学と、別大学(南洋工科大学;NTU)の図書館を訪問し、説明を受けてきました。
NUSは非常に広いキャンパスを持っていて、学内を横切る道路に、バスが早朝から深夜まで走ります。それも、時刻表はなく、数分おきに来ます。学生は3万人ということですから、それほど多いわけではありませんが、ともかく学内は活気があります。図書館は7つありますが、central libraryが中心です。4層あり、ともかく広く、学生が座ることが出来る席がたくさんありました。人気があるのは窓際というのは、万国共通です。
授業の本を借りることができるところは複数の同一本がありましたが、他は館内1冊というのは日本と同じです。どこも、本の保管には苦労しているようです。授業の本は2時間が限度。コピーはできますが、10%が制限ということでした。シンガポールはご存じのとおり、社会ルールを破ると非常に大きな罰則がある国なので、ルールを破る学生のことは心配していないということでした。他の本は2週間ということでした。中国語の本のエリアは大きく、日本語の本はそこの片隅程度のエリアでした。また、シンガポール・マレーシアコレクションは貴重書としてエリアがありました。また、共同学習の場も随所にありました。
行ったのは午前10時から12時頃ですが、概して静かで、学生達は皆さん懸命に勉強していました。設置パソコン、持ち込みパソコンを含めて、ほとんどの学生がパソコンを使っていました。飲み物は自由、食事はダメというルールでした。チャットルームは携帯電話用、チャットは図書館職員にリアルタイムで質問するシステムです。
当番が決まっていて、常に誰かが答えるということです。2時間でしたが、実にいろいろと参考になりました。この中央図書館は10年前に建ったということで、その後、AV機器などをフルに活用したコモンズのエリアを持つすばらしい建物が別の建物にあり、そちらも見せてもらいました。こういう図書館がある大学でもう一度学生をしてみたいと思いましたよ。
NTUは、アポなしでいきなり訪問して、見せてもらいました。親切な職員さんたちばかりで、若くて魅力的な方々で、私は、会話を楽しみました。NTUの図書館は中央図書館というのはなくて、中規模の図書館(といっても、本学の図書館くらいの閲覧エリアはありますが)が学内に多数ありました。ラーニングコモンズを全面的に取り入れており、Quiet Area以外では、随所に共同学習の場がありました。
国は違っても、図書館の雰囲気は日本とよく似ていました。また、共同学習の場が求められていること、そこでは、PCが必須であること、飲み物や電源など、そういう場での必須アイテムであることなど、大いに参考になりました。今後も、外国に行ったら図書館を訪問してみたいと思います。
月別アーカイブ: 2013年2月
『The Giving Tree』Shel Silverstein
語学学習室からのBookReviewです☆
【レベル2】 830/SI/2
Title: The Giving Tree
Author: Shel Silverstein
アメリカで1964年に出版され、多くの言語に翻訳され、世代から世代へと読み継がれてきた絵本です。
日本では、2010年に村上春樹さんの訳で少し話題になりました。おそらくどこの公共図書館にも所蔵していると思います。
このりんごの木は最初から最後まで、一人の少年に何かを与え続けます。物語は単純で、やさしい言葉しかありません。なので、何度も読み返すことができます。
しかし、その内容は簡単に説明できるというものではありませんでした。いろいろ思い感じながら、一度ですんなりと理解はできませんでした。ただ、読み終わった後、何か心に残るものがあったのは確かです。
今後も、何度も読み返していきたいと思う作品のひとつですね。
大津真作訳『市民法理論』
<書籍紹介>
この本は市民法の理論となっていますし、原題は民法理論ですから、法学部の学生が
読む本だと勘違いされます。でもこの本が論じているのは、副題が「社会の根本原理」
となっていることから分るように、一体どのような事情があって人類が社会を形成して
きたのかというその謎なのです。
フランス18世紀末の社会思想家ランゲは、社会形成の謎をあっと驚く視点で解明しました。
彼によると、社会と奴隷制とは同時に生まれたというのです。ですから最初から社会には、
主人と奴隷がいたわけです。この視点は二つの意味で重要です。一つは社会形成の時に
どんなことが起こったか?です。恐ろしい「原初の暴力」によって社会は誕生したのです。
武器を持った狩猟民族が平和な孤立した農耕=牧畜民族を襲って、彼らの財産を奪い、
彼らを奴隷身分に無理やり落としたのです。この所有関係を明確にするために法律とくに
民法が作られました。
もう一つは、奴隷制は今も続いているというのです。どういう形で続いているのでしょうか。
それは日雇い労働者、つまり今で言う「自由な」派遣労働者を最底辺として、それに賃金
労働者の身分を加えた形での奴隷制が続いているというのです。でも、皆さんは誰一人
として奴隷じゃないですよね?
自由ですよね?ランゲによると、いや皆さんは最も恐ろしいものの奴隷になっていると
言うのです。それは餓死という悪魔の奴隷です。北九州市で生活保護を打ち切られた男性
が餓死していたでしょう?彼は誰にも雇われなかったから餓死したのです。また、ランゲは
「文明社会では国民の四分の三の貧困の上に国民の四分の一の富裕が築かれる」と
言います。図星でしょう?では、なんでこんな恐ろしい社会を人間は作ってしまったので
しょうか?そこから先は、この本を読んで皆さんが考えてください。
この本には、未来社会へのヒントも書かれています。ランゲは、略奪型の経済と餓死の
自由しかない社会とはシャム双生児だから、略奪型の経済をやめた時、本当に幸せな社会
を築けるのではないか、と示唆してくれています。ですからこの本はどの学部の学生も
一読すべき本だと思います。
■『市民法理論』京都大学学術出版会、2013年1月刊
■ 大津 真作(文学部社会学科 教授) 訳
■ 先生からのお薦め本
『新自由主義』デヴィッド・ハーヴェイ、作品社 ランゲの思想を延長すれば、現代の
グローバル資本主義の本質が解明されます。この本は現代社会の自由には二種類しか
ないことを教えてくれます。餓死の自由と略奪の自由です。恐ろしいでしょう?
上埜 進編著『工業簿記・原価計算の基礎』
<書籍紹介>
本書,『工業簿記・原価計算の基礎 ―理論と計算―』(Fundamentals of Factory
Bookkeeping and Cost Accounting)は,「工業簿記」や「原価計算」をはじめて
学ぶ方々にとって,信頼がおけ,かつ優しく学べる書物となるよう編集しました。
工業簿記や原価計算の学習では,多様なコンセプトや技法に遭遇しますが,記帳練習や
計算練習がきわめて効果的であり,「習うよりも慣れろ」の格言が当てはまります。
そこで,本書は,各章本文に数多くの例題を,各章末に「Questions」と「練習問題」
を収録し,読者が鉛筆と電卓を駆使して学ぶスタイルを想定したレイアウトを採って
おります。
また、随所に挿入した「コラム(column)」では,実務の現況にかかわるトピックスも
取り上げ、工業簿記・原価計算を身近なものにしています。国際化が会計の世界でも
進んでいることから,専門用語に英語表記も加えております。
本書の構成は次の通りです。まず,第1章に,工業簿記・原価計算の世界を概観できる
ように,関係する基礎的事項を紹介しました。第2章は材料費を,第3章は労務費を,
第4章は経費を取り上げ,これらの章で原価の費目別計算の仕組みを学びます。
続く第5章で製造間接費の計算を,第6章で部門別計算を学びます。
製品別計算については,個々の注文を計算単位として原価を集計する個別原価計算は
第7章で,期間の製造費用を集計し,集計額を生産量で除して単位当たり製品原価を
算定する総合原価計算は第8章と第9章で学習します。また、第10章では財務諸表を,
第11章では本社・工場会計といった、いわゆる工業簿記を取り上げています。
続く第12章と第13章で標準原価計算を,第14章と最終章である第15章で直接原価計算
を学びます。
本書を何度も読み返し、例題,Questions、練習問題を繰り返し解くことで日本商工会議所
簿記検定2級工業簿記の試験準備は万全となります。
■『工業簿記・原価計算の基礎』税務経理協会出版、2011年10月刊
■ 上埜 進(会計大学院 教授)編著
■先生からのお薦め本
『工業簿記・原価計算の基礎 ―理論と計算―』の学習を終えられた読者に,同じ編著者
による姉妹書で中級レベルのワークブックである『工業簿記・原価計算演習 ―理論と
計算―』を購入され,工業簿記・原価計算をさらに深く・広く学ばれますことをお勧め
します。加えて,同じく姉妹書である『管理会計の基礎 ―理論と実践―』や
『管理会計 ―価値創出をめざして―』を購読され,管理会計領域に学習を拡げられること
をお薦めします。
春休み中の短縮開館について
期間: 2月6日(水)~4月5日(金)
開館時間: 平日9:00~17:00、土曜9:00~13:00
<休館日>
日曜日・祝日
入学試験 2月1日(金)~5日(火)、9日(土)、3月5日 (火)
卒業式 3月25日(月)
※1月25日(金)~3月30日(土)の間、春休み特別貸出を実施しています。
詳しくは、図書館ホームページをご覧下さい。