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令和7年 年頭所感(図書館長 杉本喜美子先生(マネジメント創造学部教授))

 在校生のみなさん、2025年、新しいスタートを切られているでしょうか。

 私は今学期、西宮キャンパスで開発経済学を教えています。どうすれば経済は成長するのか、どうすれば発展途上国で生活する貧しい方々の生活を豊かにできるのか。こうしたことを、既存研究から得た理論を学び、実際のデータを確認することで、理解していこうとしています。日本を筆頭に、先進国にも貧しかった時代はあり、ここまで成長できたのだから、政府が実施した政策と、人や企業が行ったことのなかに、成長を促す要因があったはず。この講義は、経済成長という側面から、歴史を形作る要因を探る旅をしているようなものかもしれません。

 そこで、私がおすすめしたい本を紹介します。

歴史は実験できるのか:自然実験が解き明かす人類史
初版年月日:2018/06/15 ISBN:978-4-7664-2519-2

 ここでいう自然実験とは、社会制度や歴史的に偶然起こった出来事をあたかも原因であるかのようにとらえ、その後の社会をどう変えたのか、データを用いて因果関係を明らかにすることです。フランス革命軍とナポレオンがドイツに侵攻したことは、その後のドイツの都市化と経済にどう影響を与えたのか?イギリスが植民地インドの統治時代に採用した制度は、現在に至るインドのインフラや教育水準を上げたのか?この本では、各章の著者が上述のような異なるテーマで自然実験の手法を用いており、読み応えのあるものです。

 さらに驚くべきは、先ほどのフランス革命のテーマが2024年ノーベル経済学賞を受賞した3名の教授(Daron Acemoglu & Simon Johnson* (Massachusetts Institute of Technology) James A. Robinson (University of Chicago))による執筆であり、インドのテーマが2019年ノーベル経済学賞を受賞した3名の教授のうちのひとり(Abhijit Banerjee (Massachusetts Institute of Technology))であることです。授賞理由は、国家の繁栄に影響を与える制度の役割(2024年)やフィールド実験を用いた途上国における貧困解消に向けた効果的な政策(2019年)を検証したことにあります。いずれも開発経済学の主要テーマであり、「人々の選択こそが世の中を変える」ことを示しています。

 フランス革命という偶然によって既存の制度が崩壊し、侵攻先のドイツにもこの波が押し寄せてきている状況は、外圧に悩む現在の多くの国にも起こりうることを示唆しています。さらに、こうした制度変更を柔軟に受け止め対応した地域こそが、同時期に来ていた産業革命の波をもうまく乗りこなし競争力を高めうるとの視点は、国の選択が長期的な我々の暮らしの行方を決めうるのだと教えてくれます。歴史から学ぶことは、歴史学者だけの仕事ではないのだと、経済学を専攻する私にも多くの刺激を与えてくれました。

 本書「プロローグ」最後の段落には、こうした最高峰の経済学者が、編者から依頼された修正にも常に協力的だったこと、自然実験にもろ手をあげて賛成ではないはずの伝統的歴史学者にも目を通してもらったことが綴られています。圧倒的な知性と驚きのアイデアをもつ先生方が、謙虚さをもって、専攻する学問分野が違う研究者に真摯な姿勢で向き合っているとは!本書の意図とは全く関係ありませんが、私の一番の感激どころ、だったのでした。

 世の中が混沌としていても、打開できるのは我々の意志と選択。よりよい選択をするために、みなさん、図書館で様々な本に触れ、いい出会いをしてください。

*ご興味があればDaron Acemoglu & Simon Johnsonの近著は、前回の藤棚ONLINE(https://www.konan-u.ac.jp/lib/blog/archives/6560)でご確認ください。

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 KONAN-PLANETに昨年末掲載された記事を読まれましたか?

「甲南大学の読書王に聞く!今年読んだおすすめの本 ベスト3(2024)」

 マネジメント創造学部にはプロジェクト科目という実践的な学びが得られる授業があり、グループワークやプレゼンテーションを積極的に行っています。今学期私が担当する「開発経済‐アフリカ各国の経済成長−」プロジェクトに参加し、頑張っている学生さんの推薦本、『偶然屋』(七尾与史著)を読んでみました。

 「偶然は偶然のまま、自然のままに日常を楽しむ余裕をもちたい」という意見は、ほかの学生さんの意見をしっかりと(穏やかに)聞いて、建設的な意見を追加できないか考えている、真摯な人柄から出る言葉だなと思いました。みなさんも、ご家族、お友達、先生、自分の気になる方が、何を読み、どう感じたのかを聞いて、思いもしなかった新たな本と出会ってみませんか?

 今年も、心に残る本との出会いがありますように。

エントランス展示「知って備える大震災」

 1995年1月17日(火)午前5時46分。未曾有の被害をもたらした「阪神・淡路大震災」の発生時刻です。震源地は淡路島北部、深さ約16kmの直下型地震で、日本において近代で初めて大都市を襲った地震とも言われています。
 2025年の今年、その阪神・淡路大震災から30年が経過したことになります。甲南大学生の皆さんは震災後に生まれ、聞いたことはある、という程度で実感として震災を意識される方は少ないでしょう。南海トラフへの警戒も叫ばれるなか、地震を過度に恐れるのではなく、できるだけ正確な情報を知り、備えることが大事になります。

 30年という節目を迎えるにあたり、図書館エントランスの展示を「知って備える大震災」と題して更新しました。阪神・淡路大震災のことだけではなく、他の大震災との比較、地震というもののメカニズムについて展示しています。
 地震への理解を深め、将来の被災に備えるための端緒としていただければと思います。図書館にお寄りの際は、 ぜひ エントランス展示もご覧ください。

 また、甲南学園が所蔵している大震災の記録をデジタル化のうえ甲南大学デジタルアーカイブに掲載、あわせて震災30年記念サイト「学園が震えた日」の公開を開始しました。本学園の被災状況も凄まじいもので、復興にあたっては長い年月と多くの人々の尽力、そして多岐にわたる支援を必要としました。
 過去の記録を確認し、未来に備える。石碑に刻まれた「常ニ備ヘヨ」の言葉を、あらためて見つめてください。

100冊多読チャレンジ 達成者インタビュー

2024年11月27日に『多読チャレンジ』100冊を達成されました!

伊場田 扶弥(いばた ふみ)さん 文学部 歴史文化学科 3年次生

 年内に100冊という目標を達成されました!色々な工夫をしながら多読を楽しんでおられ、スタッフ一同、嬉しい限りです!次の目標に向けて、このままの調子で、気負わず楽しく続けていってほしいと思います。

 以下は、ご本人のアンケートによるものです。


Q.『多読チャレンジ』達成のために意識していたことはありますか。

A.無理をしないこと。難しいと感じたらすぐに本を変える、またはレベルを落とすこと。

Q.『多読チャレンジ』を続けていて実感した効果はありますか?

A.英語の授業を受けていなくても英語を身近に感じ、怖くなくなった。楽しみながら英語を読むことが出来るようになった。

Q.これまで読んだ中で、新たにお気に入りの本がありましたら教えてください。

A.レベル3の洋販ラダーシリーズが読みやすかったです。特に「Emma and the Boy Next Door」や「Andersen’s Fairy Tales」がお気に入りです。
 あらすじが日本語なのでそれを読んでから本の中身に入ると理解しやすいし、使用した単語の意味一覧もあるので、気になればサッと確かめることもできます。

Q.現在、チャレンジ中の「多読チャレンジャー」に向けてアドバイスがありましたらお願いします。

A.知らない話だと読み進めにくいかもしれません。ももたろうなどの昔話や、知っている話の英語版を読んでみるとスルスル読めて良いかもしれないです。

Q.『多読チャレンジ』についての感想やご要望など、ご自由にお書きください。

A.ひとまず年内に100冊読めたので満足です。卒業までに200冊完走したいと思っています。
 レベル4以上にもいつか手を出したいです。頑張ります。


 甲南大学図書館では、多読チャレンジャーを随時募集中です。
 英語多読学習に興味のある方は図書館1階カウンターでエントリーしてみてください!
 25冊以上達成すればKONANライブラリサーティフィケイトの2級以上の要件にも適用されます!

☆2024年度から、継続しやすい新ルールになりました!
 いつからでも参加できますので、ぜひチャレンジしてみてください!

[藤棚ONLINE]マネジメント創造学部・榎木美樹先生推薦『世界は経営でできている』ほか

図書館報『藤棚ONLINE』
マネジメント創造学部・榎木美樹先生より 

 気づけばもう12月。今年も残すところあと少しである。2024年度時事トピックの経済ニュースとしては以下が挙がった(NHK「大学生とつくる就活応援ニュースゼミ」https://www3.nhk.or.jp/news/special/news_seminar/jiji/jiji153/)。

 「20年ぶりの新紙幣発行」、「30年ぶりの郵便料金値上げ」、「34年ぶりの円安水準」、「日経平均株価:バブル期の史上最高値を更新」、「株価:過去最大の値下がりーブラックマンデー越え」、「世界GDPランキングで日本はドイツに抜かれて第4位」というように長年の低成長やデフレ影響を受けた「数十年ぶりの」「史上最高」「過去最大の」といった文言が目につく。

 現代の私たちは、通貨の価値が国際的に極端に変動する社会を生きている。というか、資本主義が台頭し、不換紙幣制度が導入され、国際化やグローバル化によってボーダレスにヒトやモノ、情報の移動がデフォルト化したこの社会を生きざるを得ない。だから、「銀行に預けるのではなく、お金を増やすには、目的や状況に応じて、貯金や投資、NISAなどの制度を活用することが重要だ」言説が闊歩し、小学校では2020年から金融教育が実施されている。成人年齢の引き下げや消費者トラブルへの対処などいずれも個人の知識・問題・責任に帰せられるかのような状況が背景にある。紙束が価値に変換され、手段であるはずの金銭に過度に振り回されるようになっているように感じられる。「コスパ」「タイパ」「高額報酬」の文言に心が動く私たちは、すでに資本主義と不換紙幣制度、そして自己責任論にからめとられていると言えるかもしれない。

 このような時代だからこそ、社会的生き物としての人間関係、持続可能な地域社会と人間の営み、そのような中で実践される本来の経営を、本質的なところから捉え直すことが重要だろう。そのための気づきのインスピレーションを得られる書籍として以下の3冊を挙げたい。3冊に共通するのは、「語られないものを語るには言葉が必要だ」「人間は社会的な動物で、他者と生きる存在だ」「人間には理性=知恵があり、現在だけでなく過去と未来の概念も持つ」というメッセージである。これら3冊が起こすシナジーは、手触りの温かい資本主義を生きることは可能だと気づくことである。気づくためにはモノやコトとの出会いが必要で、出会うために私たちは「勉強」しなくてはならない。その第1歩は読書である、と私は強く思う。

『世界は経営でできている』(岩尾俊兵、講談社現代新書、2024年)
『葬儀会社が農業を始めたら、サステナブルな新しいビジネスモデルができた』(戸波亮、幻冬舎、2023年)
『世界は贈与でできている:資本主義の「すきま」を埋める倫理学 』(近内悠太、NewsPicksパブリッシング、2020年)

100冊多読チャレンジ 達成者インタビュー

2024年10月22日に『多読チャレンジ』100冊を達成されました!

島村 大地(しまむら だいち)さん フロンティアサイエンス学部 生命化学科 3年次生

 多読は楽しみながら、たくさんの英語に触れていく学習法ですが、長く続けていくと、しんどくなりそうな時もあるようです。そんな時は、簡単なレベルの本に戻って、スラスラ読める楽しさを取り戻していると教えてくれました!

 以下は、ご本人のアンケートによるものです。


Q.『多読チャレンジ』達成のために意識していたことはありますか。

A.読める本をまずは読んでいこうと心がけていた。
 もっと読みたい日はレベルを上げて読んでいった。

Q.『多読チャレンジ』を続けていて実感した効果はありますか?

A.新しい単語が出やすい本を読んでいたことから、知らないことを知れるということが多く、
 終盤では知っている単語がほとんどになっていたこと。

Q.これまで読んだ中で、新たにお気に入りの本がありましたら教えてください。

A.「Cheese –Rolling Races」
 大会自体は聞いたことがあったが、人が転がるようなシーンがとても面白いと感じた。

Q.現在、チャレンジ中の「多読チャレンジャー」に向けてアドバイスがありましたらお願いします。

A.レベル0の簡単な本であれば、最初は本を読むことに抵抗があるところを取り払うことができ
るかもしれないため、読める本から読んでいく方が良い。


 甲南大学図書館では、多読チャレンジャーを随時募集中です。
 英語多読学習に興味のある方は図書館1階カウンターでエントリーしてみてください!
 25冊以上達成すればKONANライブラリサーティフィケイトの2級以上の要件にも適用されます!

☆2024年度から、継続しやすい新ルールになりました!
 いつからでも参加できますので、ぜひチャレンジしてみてください!

75冊多読チャレンジ 達成者インタビュー

2024年10月15日に『多読チャレンジ』75冊を達成されました!

伊場田 扶弥(いばた ふみ)さん 文学部 歴史文化学科 3年次生

 多読のルールに沿って、ご自身で工夫しながら、楽しみながら続けていることを、私たちスタッフも嬉しく思っています!
 今回読んだ本の中から、他の人にも読んで欲しいオススメの本を紹介してもらいました!

 以下は、ご本人のアンケートによるものです。


Q.今回読んだ本のなかで、印象に残った本(勉強になった・初めて知った・怖ったetc)は、ありますか?

A.レベル3の洋販ラダーシリーズ『Emma and the Boy Next Door』(エマと隣の少年)が、読んでいて非常にわくわくして面白かったです。どんどんと話のスケールが大きくなっていき、エマと一緒の気持ちになって冒険することが出来ました。最後の展開も、とても幸せな気持ちになります。冒険好きな方にはぜひ読んで欲しいです。

Q.75冊を達成されたご感想、語学学習室へのご要望などありましたらご自由にお書きください。

A.長いようで意外ともう75冊を迎えました。今はレベル3を読めているので、そろそろレベル4にも挑戦したいです。最近映画のハリー・ポッターを観たので、原作も読みたいと思っています。上記でオススメした洋販ラダーシリーズは、行間が空いていて個人的には読みやすかったです。行間が詰まっていると文字量に圧倒されて読みにくいので、本を買う機会がありましたら行間にも注目して欲しいです。年内に100冊を目指します!!


 甲南大学図書館では、多読チャレンジャーを随時募集中です。
 英語多読学習に興味のある方は図書館1階カウンターでエントリーしてみてください!
 25冊以上達成すればKONANライブラリサーティフィケイトの2級以上の要件にも適用されます!

☆2024年度から、継続しやすい新ルールになりました!
 いつからでも参加できますので、ぜひチャレンジしてみてください!