東野圭吾著 『流星の絆』

 

 

知能情報学部 4年生 Tさんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名 : 流星の絆
著者 : 東野圭吾

出版社:講談社
出版年:2011

「流星の絆」は、両親を失った三兄妹が生き延びるために身につけた処世術と、過去の事件が長い時間をかけて織りなす物語である。事件の真相を追う筋はあるが、作品の中心は推理の速さというより、兄妹が日常をやりくりしながら傷を抱えて生きていく過程に置かれている。そのため、日常の場面や会話が多く、ミステリとして一直線に進むというより、寄り道を重ねながら少しずつ輪郭が見えてくる構成になっている。事件ものとして読むと、核心に近づくまで遠回りに感じる場面もあるが、そこで描かれる兄妹の距離感は印象に残る。

三兄妹の関係は、仲の良さよりも互いを守るために息を合わせる関係であり、軽口の裏に疲れや諦めが混じっているのが生々しい。生きるための小さな詐術が日常に溶け込んでおり、読者も簡単に正しさだけで判断できなくなる。事件が進むにつれて、疑うことと信じたいことが同時に増えていく感覚が強まり、単なる謎解きではない緊張が続く。

後半になると、日常に見えた場面が少しずつ意味を持ち始め、兄妹が何を抱えてきたのかが見えてくる。復讐の話として見れば冷たさもあるが、同時に「家族でいる時間」の話でもある。この二つが作品の強さである。読後は爽快というより、兄妹の選択をどう受け止めるかが残り続ける。事件の解決だけを求めると好みが分かれるかもしれないが、日常の長さごと人の傷を描く作品として読むと、意外にずっしり残る一冊である。