三上和彦先生(経営学部)推薦『方法序説』

☆新入生向けの図書案内

著者: ルネ・デカルト
タイトル: 方法序説 (ちくま学芸文庫)
出版者: 筑摩書房
出版年: 2010
配置場所: 図書館 3階書庫小型
請求記号: S081.6/テ6/79

経営学部では一年次生向けに、「基礎演習」という科目を設置しています。その授業の最初で、私はいつも次の事を伝えています。「皆さんにとって、大学は「学び」の総決算。高校まで学んできた知識を生かして、自ら考えることのできる人間になってほしい。」これまでは教科書がお手本だったと思います。教科書に書いていないことを自ら考えるにはどうしたらいいのでしょうか?その一つの指針として、『方法序説』を一読されることを勧めます。
本書の一節で有名なのは「われ思う故に我あり」という文言です。方法的懐疑という、あらゆるものの真偽を問い、最終的に疑いきれないものとして、自分の存在を発見していきます。哲学、あるいは近代合理主義に関して関心を持っている方は、ぜひ、この基礎的な文献にトライしてみてください。
しかし、本書を勧める対象はそうした関心を持つ方たちだけではありません。実はこの本は『理性を正しく導き、学問において真理を探究するための方法序説』という長い正式名称を持っています。すなわち、デカルトはこの本で考える「方法」を提示しているのです。真理の探究の方法として、デカルトは以下の4つをあげています。
1 .明証的に真であると認めるものでなければ、どんなことも真として受け入れない。
2 .検討する難問の一つ一つを、必要なだけの小部分に分割する。
3.思考を順序にしたがって導く。
4 .完全な枚挙と全体にわたる見通しをたてる。
彼は、この原則に従えばどんな困難な問題も解決できる、と言っています。本当にそうなのか?みなさん、是非読んで確認してみて下さい。
今の時代、ネットを通じて「知ること」は容易になりました。これからは、持っている知識から何を言うことができるのか、それが問われている時代になっていると思います。覚えていればいい、という発想から脱却して、本書を通じて考えることのできる大学生になることを目指してほしいと思います。
甲南大学図書館報 藤棚(Vol.29 2012) より