奥田敬先生(経済学部)「〈背表紙学(ドルソロジー)〉のすすめ」

☆新入生向けの図書案内

著者: 田川建三
タイトル: イエスという男 : 逆説的反抗者の生と死
出版者: 三一書房
出版年: 1980
配置場所: 図書館1階開架一般
請求記号: 192//13

著者: 白川静
タイトル: 孔子伝
出版者: 中央公論社
出版年: 1972
配置場所: 図書館3階書庫一般
請求記号: 124.2//13

著者: 内田義彦
タイトル: 資本論の世界 (岩波新書 ; 青版 614)
出版者: 岩波書店
出版年: 1966
配置場所: 図書館3階書庫一般
請求記号: 081.6/614/9

みなさんは今までにかなりの数の本の名前を教わってきたはずです。でも、それらを実際に読もうとしたことはどれだけありますか?本の名を聞き流すのは、せっかくの出会いの機会を見過ごすことです。初めての本のページを開くには、初対面の人に話しかけるような緊張や勇気はいりません。パラパラとめくってみて、まだ付き合えそうになければ、またしばらく書棚で休んでもらえばよい。だから、これからは何かで本の名を目にしたり耳にしたなら、とりあえずは図書館で実物を手に取ってみるという習慣を身につけることをお勧めします。この習慣のあるなしで、大学での学びは大きく違ってきます。とにかく《尋ねよ、さらば見出さん。》
そして時間のあるときには図書館で、ずらりと並んだ本の背表紙たちを眺めながらぶらつきましょう。そのうちにいつしか身近な顔ぶれができてきます。わたくしにとっては、『聖書』と『論語』と『資本論』の三冊が、それぞれ欧米文化と東アジア社会、そして現代世界の化身というところでしょうか。《学びて時にこれを習う、亦た説よろこばしからずや。》
願わくば、みなさんにもこの三冊に親しんでいただきたいのですが、《何事も最初が難しい。》わたくしの場合は、田川健三『イエスという男』(作品社)、白川静『孔子伝』(中公文庫)、内田義彦『資本論の世界』(岩波新書)が知り合うきっかけとなりました。前二著は、後に「教祖」と崇められた人物の意外な素顔(?)をかいま見せてくれます。また、戦後日本の学界と思想界に一時代を画した内田義彦は、旧制甲南高等学校の卒業生、みなさんの大先輩です。
甲南大学図書館報 藤棚(Vol.29 2012) より