マーガレット・ミラー著 山本俊子訳『これからさき怪物領域』

 

文学部 4年生 Nさんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名 : これからさき怪物領域
著者 : マーガレット・ミラー著 山本俊子訳
出版社:早川書房
出版年:1976年

「人間はみんな、心に怪物を持っているんです。ただ別の名前で呼んだり、怪物なんかいないと信じてるふりをしたり……。」(p138より。)人間は誰しも心の中に「悪意」を秘めているものである。それは、まさしく「怪物の領域」だと言えるだろう。では、そのような「怪物領域」の線引きとは一体どこからなのだろうか。

本著『これからさき怪物領域』では、主人公のロバート・オズボーンの失踪から物語が始まる。メキシコ国境近くに農園を持つ、若き農園主である彼は突如姿を消したのである。

ロバートの妻・デヴォンをはじめ、誰もが彼の死を覚悟していた。その日の彼に変わった様子は全くなく、姿の見えぬ愛犬を探してくる、と気軽に出かけたまま帰らなかったのだ。警官は、食堂にて彼のものと思われる夥しい血痕を発見。さらに、失踪翌日に収穫のために雇った十人ものメキシコ人労働者がいなくなっていた。彼らが金目当てにロバートを殺したに違いない。デヴォンは死体が見つからないまま死亡認定の訴訟を起こす。しかし、ロバートの老いた母・アグネスだけは、決して息子の死を認めようとしなかった……。

著者のマーガレット・ミラーは心理サスペンスの第一人者と称される人物で、無駄のない洗練された文章で非常に読みやすい。ミステリーは好きだけど海外ミステリはダメ、ポケットミステリなんか面白くなさそう、なんて人にもオススメできる作品である。1章ごとの話もそれほど長くなく、物語の大半は法廷ものとして進行するため、話が理解できなくなってきた~という心配もあまりない。

何より、本書をオススメする最大の理由はそのタイトル『これからさき怪物領域』の意味にある。「これからさき」が怪物領域とあるが、では「どこからさき」が怪物領域なのだろうか?ぜひ本書を最後まで読んで、その真相を知っていただきたい。