大津眞作著『思考の自由とはなにか -スピノザとシモン・ランゲにおける自由-』

<教員自著紹介>
この本は題名の通り、思考の自由について考察したものです。
思考というのは、皆さんは初めから「自由」だと思っているでしょう?
でも、決して思考は自由ではないのです。人間がやっていることは、
神様がやっていることと決定的に違っていて、すべてが限界を持って
います。その限界とは何かというと、恐ろしいことに、それは「現実」
の限界、つまり本当にこの世に存在する物質的条件や環境の限界性なの
です。想像力を考えてみて御覧なさい。それはすべて現実に「切れ端」
として存在しているものばかりでしょう?鉄腕アトムは、原子力エネル
ギーの物理学的発見がなければ、想像できなかったことでしょう?
私はこの本で、人間の思考はすべて必然的であって自由ではない、と
主張しています。そうすると、思考を変えるには、考え方を変えるには、
現実を変えなければなんともならない、ということになるでしょう?
そしたら私たちは、すぐに卵が先か、ニワトリが先かという問題にぶつ
かります。私は、この本のなかで、思考の自由を主張する哲学者を取り
上げて、彼がなぜ自由を主張したのかを研究し、一つの結論に至りました。
すなわち、自由を主張する人々は、すべて現実に自由を持っていない人々
なのだ、というのがその結論です。ワイルドでしょう?
ですから、思考を現実につなげることがとても大事なことなのです。

■『思考の自由とはなにか – スピノザとシモン・ランゲにおける自由 – 』
■著  者 大津 眞作 文学部社会学科 教授
■請求記号 133// 2021 
■配架場所 1階開架一般
■ 先生からのお薦め本
 『倫理の大転換』(行路社) 私の本です。私が翻訳したランゲの
 『市民法理論』(京都大学学術出版会)。高い本ですが、現在の貧困な
 現実を考えるのにとても役に立つ本です。