マネジメント創造学部 4年生 塩谷 瑠緋さんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)
書名 : ぼんくら陰陽師の鬼嫁
著者 : 秋田みやび著
出版社:KADOKAWA
出版年:2016年
当時大学生だった野崎芹は、住居であったアパートを火事によって失ってしまった。彼女はカフェでのあるバイトで多少のお金は稼いでいたものの、住む場所を無くし、貯金も底をつき、経済的に困窮していた。公園で途方に暮れていた芹の目の前に突如、“皇臥”と名乗る男性と、着物を着た幼い女の子、“護里”が現れる。行き場所がない芹を見かね、皇臥は“衣食住を与える代わりに自分の妻になるのはどうか”という交換条件を提示し、芹は飛びつくようにその提案を受け入れる。しかしその後、芹は、嫁ぎ先が北衛門という代々受け継がれる陰陽師一家だったことを知り、またそれに仕える亀の式神が実は公園で出会った女の子だったことを知る。
北衛門家の妻として暮らし始めた芹だったが、ある日、芹の知り合いのペットのケージにお札を貼られるという事件が起きる。原因が分からないままその後次々と不可解な事件が起きるが、だいだい受け継がれている陰陽師の知識と式神の力を使って何とか切り抜ける。
私がこの本をお勧めする理由は、芹との夫婦としての距離がシーンを通して徐々に縮まっていることを感じることができるからだ。
初めは芹も皇臥もどこかよそよそしく、お互いにまだ相手のことを信じ切れていない部分があり、事件の真相を調査する中でぎくしゃくする部分もあったが、次第に夫婦関係について真剣に考えるようになり、いつしかお互いに頼り合えるような関係にまで発展する。また、最初は陰陽師という仕事について不信感を抱いていた芹だったが、次々と起こる不可解な事件に対し懸命に対処にあたろうとする皇臥を見て、協力的になっていく姿も個人的に一番気に入っている。
夫婦としてお互いに相手のことを信頼し、また家族である2匹の式神との関係や隣人との関係通し、夫婦とは何なのか、家族とは何なのかについて考えさせられる、そんな物語になっている。
家族関係や友人関係で悩んでいる、そんな時に読んでみてほしい小説である。