宮口幸治著 『歪んだ幸せを求める人たち』

 

 

文学部 4年生 Kさんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名 : 歪んだ幸せを求める人たち
著者 : 宮口幸治著
出版社:新潮社
出版年:2024年

「人生を悲観し、自殺しようと思った。しかし、自分を大切にしてくれている祖母を思い出し、自分が死ねば祖母は悲しむだろうと思った。だから、祖母が悲しまないで済むように祖母を先に死なせてあげようと思った。」

「仕事終わりに雨が降っていたので、会社の入り口の傘立てで、置いてあるはずの自分の傘を探した。しかし、見つからなかった。誰かに盗まれたと思い、犯人の心当たりとして何人かが思い浮かんだ。途中で自分の机の近くに傘を置いたことを思い出したが、犯人候補として思い浮かんだ人物などへの怒りを強く感じていたので、傘を取りに戻るのも面倒だと感じ、他人の傘を黙って使っても問題ないと思った。」

この2つのお話を読んで、あなたはどう思いましたか。両者とも悪いことだけれども、後者の気持ちはわからなくもない、前者の気持ちは理解しがたいと思ったかもしれません。そして、後者は身近な、前者は自分とは関係のないお話のように思ったかもしれません。

しかし、著者は「歪んだ幸せを求めている」点で両者は共通していると考えています。歪んだ幸せとは、自身の幸せを求めすぎるあまりに他人を巻き込み、不幸にしてしまう幸せのことです。そして、本書では歪んだ幸せを引き起こす5つの歪みである「怒りの歪み」、「嫉妬の歪み」、「自己愛の歪み」、「所有欲の歪み」、「判断の歪み」について紹介しています。

本書を読んで、私は、非行は人の不幸を願って起こされるものではなく、自身の幸せを求めすぎて起こされるものだと認識が変わりました。そして、非行少年たちと同じように「幸せになりたい」と思う私も、歪んだ幸せを求めてしまうこととは無縁ではないと感じました。また、前述した2つ目のお話のように、歪んだ幸せを求めた行動は身近にもあります。

そのため、歪んだ幸せの原因となる5つの歪みについて知り、自身の行動を見直したり、5つの歪みと向き合ったりすることで、適切な行動ができるようにしたいと思いました。また、本書はその助けとなる本だと思いました。