柏野牧夫著『空耳の科学 : だまされる耳、聞き分ける脳』

柏野牧夫著『空耳の科学 : だまされる耳、聞き分ける脳』ヤマハミュージックメディア, 2012
図書館 1階開架一般 491.375//2003

表紙の絵をよく見てください。バナナの絵が菜っ葉の絵に変わっています。
これは視覚の錯覚を使った絵ですが、この絵のように、「バナナ」という『音』を繰り返し聞くと、「ナッパ」に聞こえてくる、という現象が起こるのです。
聞こえないはずのものが聞こえる「空耳」はなぜ起こるのか。

この本で取り上げられる「空耳」とは、「錯聴」です。
精神疾患などが原因でおこる「幻聴」とは違い、「錯聴」は科学的な手法で誰にでも起こる現象です。
つまり、「錯聴」は人間の耳の機能や脳の働きなどが原因で起こります。
逆に考えれば、「錯聴」について調べていくと、「聴覚」のメカニズムを解明していくことができるということ。

著者の柏野牧夫博士は、NTTコミュニケーション科学基礎研究所で聴覚研究を行っているこの分野の第一人者です。
高校生向けの講義をまとめたものなので、分かりやすくまとめられています。

残念ながら本からは音がしないので、読むだけでは物足りないのですが、そんな時はインターネットを使いましょう。
柏野先生が作成しておられるサイト『イリュージョンフォーラム』などで「錯聴」を体感することができます。
(iPhoneからは利用できませんが・・。)

この本だけでなく、本を読んだらインターネットで著者について調べてみてください。
より理解を深めることができますよ。
ポイントは、本を読んでから、あるいは読みながら検索すること。
インターネット上の情報は大抵が断片的なので、予備知識なしで調べてもほとんど意味が分かりません。
体系的に説明してある本とインターネットを併用するのが上級技です。

(konno)