図書館報『藤棚ONLINE』
経営学部・杉山善浩先生より
『成瀬は天下を取りにいく』シリーズは、宮島未奈氏による『成瀬は天下を取りにいく』、『成瀬は信じた道をいく』、『成瀬は都を駆け抜ける』の3作品で構成される青春小説シリーズです(完結編の第3作は2025年12月1日発売予定)。第1作目の『成瀬は天下をとりにいく』は、型破りな主人公・成瀬あかりの突飛な行動を通して、自己表現と青春の輝きを描いた傑作と言えるでしょう。滋賀県大津市を舞台にしたこの第1作では、主人公の中学校2年から膳所高校3年までの期間が描かれています。西武大津店への通い詰め、M-1挑戦、坊主頭からの髪の成長実験など、常識をはるかに超える主人公の姿は、読者に爽快感と勇気を与えます。奇抜でありながらも、友人との絆や別れに揺れる繊細な心情も丁寧に描かれ、笑いと涙が交錯します。社会の枠にとらわれず、自分らしく生きることの大切さを教えてくれる青春小説であると実感します。シリーズを通して言えることは、主人公の揺るぎない個性が、周りの人々に影響を与え、彼らの人生に新しい光をもたらす様子が描かれているということでしょう。主人公のキャラクターの魅力と読後感の良さが特徴の小説です。
参考: 宮島未奈「成瀬あかりシリーズ」特設サイト | 新潮社