投稿者「図書館」のアーカイブ

小倉美惠子『オオカミの護符』

書名: オオカミの護符
著者: 小倉美惠子
出版者: 新潮社  出版年: 2011年
場所: 1階開架一般  請求記号: 387//2111

ライトノベルのようなタイトルですが、民俗学の本です。

著者の小倉さんは、神奈川県・土橋の古い農家のご出身だそうです。
先祖代々土着の農家だったそうですが、土橋が都市化するにつれ、大好きだった祖父母といつしか疎遠となり、ご自身も国際親善に関する仕事をされていたとのこと。
ご実家の周りもすっかり住宅街になったのですが、ある日、ぽつんと残されていたお蔵に、オオカミの絵が描かれたお札が貼ってあるのに気が付きました。
古いものではなく、最近貼り換えた跡があるようです。しかも、何度も繰り返し貼り換えられたらしく、幾重にも跡が付いている・・・。

気になった小倉さんは、そのルーツを訪ねてみることにしました。
はじめは両親、古くからのご近所、山の御師、山里の古老・・・失われていくカミサマたちと出会う過程に、わくわくします。

この本については、文学部の田中貴子先生が描かれた書評が朝日新聞に掲載されています。
こちらもご参照ください。
http://book.asahi.com/reviews/reviewer/2012020500014.html

(konno)

中町信孝(文学部)『「アラブの春」と音楽〜若者たちの愛国とプロテスト』

   <教員自著紹介>
   2011年、世界を席巻した「アラブの春」と呼ばれる政治運動は、皆さんの記憶にも新しいことでしょう。当時、アラブ世界の若者たちは自由を求める「革命」を起こし、その中でもエジプトではムバーラクの独裁政権が倒されました。しかしそのわずか2年後、エジプト初の文民大統領であるモルシー政権が軍による「クーデター」で倒れると、若者たちの多くは軍部主導の新体制を支持しました。このような、一見すると独裁への逆行、民主主義の後退ともみえるエジプトの社会情勢は、なぜ生じたのでしょう?

 不可解な中東政治の動きを解き明かすために、この本ではエジプトのポピュラー音楽、略して「エジポップ」に注目しました。若者たちが好んで聴くエジポップを分析すれば、時に「若者の革命」と呼ばれたアラブの春の実情を理解することが可能になると考えたからです。戦後から現在のエジプトにおいて、どんな曲が流行ったか? こてこて演歌系から劇甘ラブ・バラード、攻撃的なヒップホップから荒削りなインディー・ロックまで、エジポップの流行の変遷をたどることで、いつのまにか中東現代史の流れまでもが頭の中に入って来ます。

 もちろん、ただ活字を追うだけではエジポップを楽しむことはできません。そこで本書の参考楽曲リストとして、YouTubeプレイリストを作成しました。興味のある人は、まずYouTubeのサイトに飛んで、 アラブの春と音楽 を検索してみてください。この本の中で紹介した123曲のビデオクリップがセレクトされていますので、まずは観て聴いてください。見知らぬ国の素敵な音楽との出会いがあるかも知れません。そして、同年代の若者として、アラブ世界の若者たちのことをもっと身近に感じてもらえればうれしいです
 
■『「アラブの春」と音楽〜若者たちの愛国とプロテスト』  中町信孝(著) DU BOOKS,  2016年3月
■請求記号 762.42//2002 
■配架場所 図書館1階シラバス
■著者所属 文学部  教授

■中町先生からのお薦め本
『深夜特急 沢木耕太郎 著
請求番号 915/SA/1~3    配架場所 図書館2F中山一般
旅を愛する若者(中年も含む)にとっての永遠のバイブル。大沢たかお主演でドキュメンタリー風ドラマにもなりました。原作、ドラマとも、本学図書館に所蔵があります。

『J-POP進化論〜「ヨサホイ節」から「Automatic」へ』 佐藤良明著
宇多田ヒカルの登場で終わっていますが、流行歌を用いた社会分析という点では古典的名著と言えます。手軽に読めますので音楽ファンは是非。

『イスラーム思想史』井筒俊彦 著
請求番号 120.8/4/2002   配架場所 図書館3F書庫一般
つて世界をリードしたイスラーム世界の思想・哲学についての基本中の基本とも言える入門書。取っつきにくいテーマですが、文章は簡単で、すっきりと頭に入ります。

高石恭子(文学部)『子どもの自我体験 :ヨーロッパ人における自伝的記憶』

   <教員自著紹介>
   私って誰? なぜ私は私なんだろう?  ある日、突然自分を見つめる<もう一人の自分>に気づき、当たり前の世界が揺らぐ瞬間が訪れる。子ども時代のその体験を、人生の後半になってもなお鮮烈に想起できる人が少なくないこと、またその後の人生に決定的な影響を与える場合があることを、オランダ・ドイツをはじめとするヨーロッパでラジオやウェブを通して収集した事例から紹介する、発達心理学者による好著。
  
■『子どもの自我体験:ヨーロッパ人における自伝的記憶 』 高石恭子(訳) 金子書房   2016年2月
■請求記号 371.45//2078                                              
■配架場所 図書館1階開架一般
■著者所属 文学部  教授 

■高石先生からのお薦め本
 という謎』 渡辺恒夫、高石恭子 編著 (新曜社)                                                                  

『私は本当に私なのか』  木村敏金井美恵子 著 (朝日出版社)   

『<わたし>とは何だろう』 岩田慶治 著 (講談社)

 『私の猫たち許してほしい  佐野洋子 著 (集英社)                       いずれも、自我体験について触れた啓発書、随筆です。哲学者、心理学者、画家、小説家、さまざまな表現者が<私との出会い>の体験について、それぞれの視点から振り返っています。青年期という<自分>を確立していく時期に、しっかりと自己省察を深めてみたい人にお勧めの本です。

西村順二(経営学部)『先を読むマーケティング :新しいビジネスモデルの構築に向けて』

   <教員自著紹介>
  本書は、先端といえる新しいビジネス事例を検討すると共に、従来のビジネス・モデルが現代的体裁を整える姿に着目する。IoT、AI、シンギュラリティと呼ばれる新しい技術や環境下でのマーケティング変化は必然であり、それが時には量的変化から質的変化への転換をもたらす。また、地方創生、地産地消、サステナビリティは従来の既成概念が現代風に衣替えして登場してきていることを表している。これら複眼思考からのマーケティングを考察したのが本書である。
 
■『先を読むマーケティング : 新しいビジネスモデルの構築に向けて』                 西村順二(ほか編著) 同文舘出版 2016年3月
■請求記号 675.04//2005                                        
■配架場所 図書館2階開架一般、サイバー一般和
■著者所属 経営学部  教授 

■西村先生からのお薦め本                                       『それから  夏目漱石 著                                                     『三四郎』『門』と並んで、夏目漱石の前期三部作と呼ばれています。皆さんが、卒業後実社会において、働くことの意味、仕事とは何なのか、そしてどんな人生を歩むべきなのかを、きっと考える時が来るでしょう。今、学生のときに一度読んでみてください。きっとそのヒントが見つかるでしょう。      

ニッコロ・マキアヴェッリ『君主論』

理工学部 1年生 匿名さんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名:君主論
著者:ニッコロ・マキアヴェッリ
出版社:講談社
出版年:2004年

愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶという。その言葉のように最近の本ばかりではなく、少し古い本にも目を受けてほしい。

さて、今回紹介する本はマキアヴェッリの書いた君主論だ。この有名な本は名前くらいは聞いたことのある人も多いだろう。私はこの本を歴史や政治に興味がある人は言うまでもないが、他にこれからリーダーになる人にも是非読んでみてほしいと思う。

この本は全26章で構成されている。

第1章では君主政体の種類とどうやってそれを獲得するのかを挙げている。

第2章からは様々な君主権について主に成立法別にまとめ、それぞれがその後に対してどのような影響を与えるのかを解説している。

第12章からは自己の軍によらない時に起こる問題と自己の軍を持つときにすべきことについてまとめている。

第15章からは君主が敵を増やさないためにどうしたらいいか、多くの君主がやっていたことは本当に有益か、他者に尊敬され指示を聞いてもらえるようにするためにはどうしたらいいか、周囲の人間が追従するようになるのを避けるにはどうしたらいいかなど、君主は普段どのようにふるまえばいいかを解説している。

第24章からは実際に書かれた時代のイタリアの現状を考え、どうしてそうなったのか、また、これからどう知ればいいのかを書いている。

私は冒頭でリーダーになるかもしれない人にも読んでほしいと書いた。この本は多少汎用化する必要はあるだろうが、君主、つまり国のリーダーをやっていくうえで大切なことを過去の様々な事例を例に出しまとめている。

この本は目的のためなら手段をえらばないマキャヴェリズムの本の始まりだろう。この本の内容はリーダーとしてのふるまい方として現代で十分に通用することが書かれていると私は思う。

九鬼周造『「いき」の構造』

明治生まれの哲学者に九鬼周造という人がいます。日本で、最も愛されている哲学者と言ってもよいかもしれません。ご紹介する『「いき」の構造』は、昭和5年に発行された九鬼周造の代表作です。

九鬼周造は、東京帝国大学を卒業後、大正10年から足掛け8年間、ヨーロッパに遊学しました。この間、ハイデガーやベルクソンなど、著名な哲学者から西洋哲学を学びます。帰国後、京都帝国大学で教鞭をとるのですが、九鬼はただ西洋哲学を日本に伝えた人ではありません。ヨーロッパ滞在中に、日本人とヨーロッパ人に違いがあることに気付いた彼は、日本独自の感性である「粋」について、西洋哲学の手法も使って独自の分析を行いました。日本人が誇りに思う日本文化を、西欧の視点から見ても納得できる分析を行ったことが、九鬼周造の大きな業績のひとつです。

昭和5年に発行された『「いき」の構造』は、他の哲学書に比べて、短く、やわらかで、ほんのり艶やかであることも魅力です。とはいえ、20歳前後の皆さんは、『「いき」の構造』をまだちょっと理解できないかもしれません。なぜなら、九鬼は、「粋」とは「異性的特殊性」、つまり恋愛にもとづいていると定義しているからです。しかも、愛し愛される薔薇色の恋は野暮で、茨を摘んで生きる覚悟を秘めた白茶色の恋を選ぶことが、粋だと言います。今まさに、薔薇色の恋の時代を謳歌している皆さんには、ちょっと難しいでしょう?

ですが、「野暮は揉まれて粋になる」という言葉があるとのこと。少し背伸びをして「粋」を学んでみませんか。注釈付の文庫版が読みやすいですし、電子書籍を無料で読むこともできますが、白茶色で装丁されたちょっと古い単行本もお勧めです。ルビもない本を、スマホを片手に調べながら読むのも粋ではないでしょうか。そして、十分に世間に揉まれた後にはぜひ再読してみてください。その時には、自分の選択を諦めながらも肯定し、前向きに「生き」る日本人になれているに違いありません。

昭和16年に九鬼周造が亡くなった後、彼が所有していた書籍や原稿類は、親友の天野貞祐先生に託されました。当時、旧制甲南高等学校の校長でおられた天野貞祐先生は、貴重な書籍を含むその書籍群を甲南高校に寄贈されました。長い間に散逸してしまった本もありますが、そのほとんどが、現在、甲南大学図書館に「九鬼周造文庫」として保管されています。

「九鬼周造文庫」には、書籍だけでなく、『「いき」の構造』の草稿を含む直筆原稿や研究ノート、第一高等学校時代から留学時代までの講義録ノートも含まれています。劣化を防ぐために長い間公開できなかったのですが、少しずつ電子化していたものを、2016年4月から『甲南大学デジタルアーカイブ』で公開しています。

優雅なイメージの九鬼周造と、実直なイメージの天野貞祐先生が、第一高等学校時代からの親友であったことは、個人的には意外でしたが、「九鬼周造文庫」に遺された穏やかに笑う二人の写真や、「天野貞祐學兄に捧ぐ」と書かれた原稿などから、4歳年上の天野先生を先輩と慕う、心の通い合った友であったことを窺い知ることができました。是非一度アクセスしてみてください。