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岳 五一 (知能情報学部)『Resource Management and Performance Analysis of Wireless Communication Networks(和訳): 無線通信ネットワークのリソース管理と性能解析』

<教員自著紹介>
インターネットサービスが多種多様化し、モバイルユーザが増加するに伴い、ネットワークリソースの効率的な管理は無線通信ネットワーク(WCNs)分野の極めて重要な課題となっている。このようなネットワークにおいて、ユーザの要求をより良く満たすためにはエンドツーエンドで十分な適応性を有するサービス品質(QoS)管理メカニズム(適応型リソース管理)が必要となる。モバイル機器需要の急増以来、特に無線通信システムおよびネットワーク設計と構築、運用における経済効率改善のための有効手段として、適応型リソース管理は必要不可欠とされている。

しかし、無線通信ネットワークにおける適応型リソース管理は、ネットワークユーザのサービス品質を維持するだけでなく、エネルギー消費やコストの効率的削減によるネットワークリソースシステム全体に関わる最適化も行う。そこでは、適応型無線アクセスネットワークの構成、リソースユニットの設計、構築及びプロセス方式、適応型無線周波数リソース割当方式、リソース管理システムそのもの、など多方面の技術が求められている。これらに対して、様々な無線通信ネットワークに要求されている異なる通信サービス品質を保ちながらエネルギー消費やコストの効率的削減を可能にする新たな通信ネットワークの制御技術を有するシステムの提案が必要不可欠である。さらに提案システムに関し、ネットワーク通信サービスから生成される通信トラヒックの確率振る舞いについて、システムの数学モデルに基づき理論的解析ならびに数値的評価を行い、提案システムの有効性と合理性を示す必要がある。

一方で、通信サービス、通信トラヒックの形態、アクセス方式、そして制御方式等により、ネットワーク上に流れている通信トラヒックは、非常に多様で複雑な確率的性質を持つ。こういった多種多様な無線通信ネットワークにおける通信トラヒックの性質の解明にあたり、伝統的な確率モデルおよびそのモデルに対する解析手法や関連評価量の適用だけではもはや行き詰まっている。現在、それらのネットワークシステムの通信トラヒックがもつ確率的性質を表現可能な通信トラヒックの数学モデルの構築、及びそれらの確率モデルに対する新たな解析手法の確立と数値的評価は重要かつ主要なテーマとなっている。

このような背景のもと、私の研究の歩みの中、かつて指導し、その後共同研究者となっているShufu Jin教授ととともに20年以上行ってきた、日本を含め多くの世界トップクラスの学術論文誌に公表された多種多様な無線通信ネットワークについて、夫々に合致した適応型リソース管理とその性能解析に関する研究成果を中心にまとめたのがこの著書である。本書は3部21章479ページからなっている。

これまでの待ち行列理論とマルコフ過程を用いた無線通信ネットワークに関する既存の書籍では、無線通信ネットワークにおける資源管理とエネルギー消費の効率的削減ネットワークリソースの戦略的最適化問題ついて、トピックはカバーされていない。本書では、著者らが、多種多様なタイプの無線通信ネットワークにおける限られている資源管理やエネルギー削減に対して、通信サービス品質を保ちながらエネルギー消費やコストの効率的削減を可能にする新たな通信ネットワークの制御技術を有するシステムについて体系的に述べる。そして、ネットワーク通信トラヒックの確率的振る舞いを数学的にモデル化し、待ち行列理論とマルコフ過程などの数学手法を用いて、理論的解析ならびに数値的評価を行い、それらの新たなシステムの有効性と合理性を数値的に本格的に論考する。

また本書では、多種多様なタイプの無線通信ネットワークに対するシステムモデリング手法、通信トラヒックの数学モデルに基づく数値的評価のための厳密ならびに近似分析解法、理論的解析ならびに数値的評価法、そのアプローチとシミュレーション方法等も豊富に論じる。さらに、インテリジェントな検索アルゴリズム、シミュレーション技術、システム最適化手法などを駆使した、理論的および数値的研究の事例である無線通信ネットワークにおけるサービス品質の評価と通信リソースの最適割り当てに関して体系的かつ詳細に解説する。

本書で示された多くの無線通信ネットワーク(主にブロードバンドワイヤレスアクセスネットワーク、コグニティブ無線ネットワーク、クラウドコンピューティングシステムなど)のリソース管理および性能分析の方法は、コンピュータサイエンスと通信工学の大学院生、ならびにネットワーク設計、ネットワーク管理、性能評価、待ち行列に興味のある研究者やエンジニアに有用な専門知識を提供する。また、WCNのモデル化のために待ち行列理論に興味を抱く学生、アナリスト、管理者そして産業界の人々への参考書としても十分に役に立つはずである。

また、本書は、待ち行列理論とマルコフ過程理論、ゲーム理論、インテリジェントな最適化、そしてオペレーションズリサーチの応用方法を多数紹介している。それらを理解するためにはコンピュータネットワークの基本概念と待ち行列理論の基本的知識が必要であり、確率過程を熟知していることも役立つ。

■ 『Resource Management and Performance Analysis of Wireless Communication Networks(和訳): 無線通信ネットワークのリソース管理と性能解析
■ 岳 五一( Wuyi Yue)著 , Springer,   2021.
■ 請求記号 547.483//4001
■ 配架場所  図書館   1F 教員著作
■ 著者所属 岳 五一 (知能情報学部)

https://www.springer.com/gp/book/9789811577550
DOI:https://doi.org/10.1007/978-981-15-7756-7

高石 恭子 (文学部)『子育ての常識から自由になるレッスン : おかあさんのミカタ 』

<教員自著紹介>
 本書は、著者の子育て経験と臨床心理学や隣接領域の学術的知見を織り交ぜ、子育て中の女性や子育て支援に携わる専門家に向けて書かれた「こどもの未来叢書」の1冊です。

 少子化が進む現代、支援の施策は講じられても、根強い母親幻想に捕らわれて苦しむ親子は少なくありません。カウンセラーや教師など、対人援助や教育に関わる仕事を目指す学生の皆さんにもぜひ読んでほしいと思います。

■ 『子育ての常識から自由になるレッスン : おかあさんのミカタ
■ 高石 恭子著 , 世界思想社 , 2021.6.
■ 請求記号 599.04//2014
■ 配架場所  図書館   1F 教員著作
■ 著者所属 高石 恭子 (文学部)

【News!】本書に関連するオンラインセミナーが開催されます!
https://www.konan-u.ac.jp/kihs/news/archives/3496

☆対談動画も公開されています。
「子育ての常識から自由になるレッスン」著者、高石恭子先生とご著書について話す|聴き手:佐々木玲仁【ひねもす動画#1】

友田 義行 (文学部)『フィルムメーカーズ22 勅使河原宏 』

<教員自著紹介>
 勅使河原宏(てしがはら・ひろし)は、日本映画界に新しい風を吹き込んだ監督です。作家の安部公房とコンビを組み、『砂の女』『他人の顔』など斬新な映画を作り上げた勅使河原監督の魅力を、様々な角度から掘り下げました。作家論・作品論・芸術論に加え、監督のエッセイや関係者のインタビュー、完全データベースも収録。
 前衛芸術とは?アヴァンギャルド映画とは?その答えがここにあります。

■ 『フィルムメーカーズ22 勅使河原宏
■ 友田 義行編 , 宮帯出版社 ,  2021.6.
■ 請求記号 778.21//2146
■ 配架場所  図書館   1F 教員著作
■ 著者所属 友田 義行 (文学部)

 

西村 順二 (経営学部)『マーケティングとSNSのミカタ : 地方創生への処方箋』

 

<教員自著紹介>
 本書は、マーケティングとは何か、その特徴を歴史的に考え、その上でマーケティングが、地方創生活動に対して親和性が高いことを解明したものです。

 地域が有する「固有性」や「独自性」に着目し、持続可能で身の丈に合った活性化を進める上で、マーケティング(売り手と買い手の相互作用とそのマッチング)とSNSに対する新しい「見方」に基づきながら、それらをどう「味方」にするのか、そのエッセンスを分かり易く論じています。

■ 『マーケティングとSNSのミカタ : 地方創生への処方箋
■ 西村 順二著 ,  中央経済社 ,  2021.6.
■ 請求記号  675//2997
■ 配架場所  図書館   1F 教員著作
■ 著者所属 西村 順二 (経営学部)

 

帯谷 博明 (文学部)『水環境ガバナンスの社会学 : 開発・災害・市民参加』

 

 

<教員自著紹介>

この本の目的は,現代の水環境の諸課題と社会の対応の変化を,社会学的に考察することです。8つの章では,統治の場の「広がり」と「プロセス」を示す「ガバナンス」概念を手掛かりに,日本およびベトナムでのフィールドワークやメディア分析を踏まえてケーススタディを展開しています。

具体的には,政府(行政)セクターに注目しつつ,開発計画,自然災害,水辺の利用・再生,汚染,参加,グローバル化といった「水環境」の今日的な課題と向き合う住民や市民セクターの実践を見つめ,その動態と政策的な含意を検討しました。

■ 『水環境ガバナンスの社会学 : 開発・災害・市民参加
■ 帯谷博明著 ,  昭和堂 , 2021.2
■ 請求記号  517.091//2001
■ 配架場所  図書館   1F 教員著作
■ 著者所属  帯谷 博明 (文学部)

 

中村 聡一 (マネジメント創造学部)『教養としてのギリシャ・ローマ : 名門コロンビア大学で学んだリベラルアーツの真髄』

 

<教員自著紹介>

 甲南大学の皆さん。
 西宮キャンパス教員の中村聡一です。
 この度、新刊書を発売できる運びとなりました。
 以前にも以下の図書館ブログ記事にてこの旨をチラッとお知らせいたしました。

http://www.konan-u.ac.jp/lib/blog/archives/3600

 その本が、ようやく、陽の目をみることになりました。
 長く辛い研究の期間、なんと、丸々”5年”でした。そしてついに完成させた、350頁にわたり内容がぎっちり詰まった書です。
 米国のリベラルアーツ教育の中身は、ほとんど謎のヴェールに包まれていると申して差しつかえないと存じます。その全貌を明らかにすることに挑みました。
 お読みになれば、皆様が抱いている印象とは大きく異なることにお気づきになろうかと思います。
 さらに、先のブログ記事でも記しましたところ、甲南学園の創設者である平生釟三郎先生の究極の本質を見透す眼力にもお気づきになる筈です。
 現代の世界最高峰リベラルアーツ教育の真髄は、平生先生が甲南学園の設立に際して掲げた理念と見事に一致するのです。
 なお、私的にはとても記念になる出来事です。できれば、一人でも多くの皆さまにお読みいただき、感想などもお聞きしたいです。学内で見かけた際などには、気軽に声掛けください。

📰東洋経済オンラインでも紹介されました📰
↓    ↓   ↓
●米国エリート教育と第1次世界大戦の深い関係 GAFAがリベラルアーツ教育を重視する理由

●リベラルアーツ教育の最後に「進化論」を学ぶ意味 コロンビア大学教養講座が伝える「学びの核心」

●「余暇」の重要性を説いたアリストテレスの慧眼 古代ギリシャの「治乱興亡の歴史」に学ぶ教訓

●中村 聡一先生の紹介

西宮キャンパスの設立に多大な尽力をされた太田雅久名誉教授から書評を賜りました。

 現実の社会を見つめてきた賢人たちの名著を軸に、彼らが生きた現実世界の背景から、社会が発展してきた道筋やそこに生きてきた人々の考え方が軽快な論調で歴史的に語られています。それは、教養の本質である人生の意義を見出すための思索を誘発します。

 これまで私が推奨してきたこの種の名著の中にH.G.ウエルズの『世界史概観』(岩波新書)があります。中村氏の著書は世界史を概観する点では似ていますが、叙述の軸が全く違います。リベラルアーツ教育の基盤であるギリシャ・ローマ時代以降の名著の時代背景とその意図する内容を史実の中に巧みに織り込ませて明解に解き明かしているところに特徴があり、リベラルアーツ教育のための斬新な試みになっています。

 ここから読み取れるもの或は誘発されるものは何か。それは名著に基づいて人類の普遍的な社会性を偏見なく体感し、現代社会に門出しようとする学生に社会の諸問題に向けて有益な知恵を醸成する気概であるでしょう。正に教養教育の神髄を、学生一人一人の感受性に応じて支援してくれるテキストとして最適です。

 教養教育は、世界と人間性に関する考え方の体系の構築に資するためのものです。それぞれの時代の人々がもっていた考え方の体系は、その時代の賢人たちの著作から学ぶことが出来ます。それらは我々が属する時代の世界と人間性に関係した考え方の体系を構築するのに有益です。我々の時代が達成しつつある活力ある考え方の体系に気付こうとする姿勢は、その時代の高さに生きることを意味します。それを支援してくれる新しい感性を持った書物であると評価します。

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「リベラルアーツ教育により”人間性の魂”を滋養し、この基盤のうえに経済経営教育を行っていく。」

 西宮キャンパス(マネジメント創造学部)は、日本の教育界において画期的ともいえるこの理念にもとづき12年前に設立されました。太田名誉教授は、その実現に向けて理工学部から転籍されてその設立に参画されました。
 大学教員としてはほとんど経験のなかった当時の私は、太田先生の薫陶をうけ、太田先生ご退職のあと、微力ながらその”志(こころざし)”を継ぐ形で研究と教育に携わってまいりました。
 そして、この志の継承は、延いては、甲南大学の設立理念である”平生精神”に現代的なテイストも加えての発展に寄与すると考えました。
 本書をお読みになるにあたっては、西宮キャンパスでのこうした「知の系譜」があることもあわせてご承知くださいませ。


教養としてのギリシャ・ローマ : 名門コロンビア大学で学んだリベラルアーツの真髄
■ 中村 聡一著 , 東洋経済新報社 , 2021.5
■ 請求記号 231 //2035
■ 配架場所  図書館   1F 教員著作
■ 著者所属 中村 聡一 (マネジメント創造学部)