5-0.KONAN ライブラリ サーティフィケイト」カテゴリーアーカイブ

下村敦史著 『ヴィクトリアン・ホテル』

 

 

文学部 2年生 Tさんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名 :ヴィクトリアン・ホテル
著者 : 下村敦史著
出版社:実業之日本社文庫
出版年:2023年

私が紹介する本は、下村敦史さんの『ヴィクトリアン・ホテル』です。この物語は、改築のため翌日に100年の歴史にいったん幕を下ろす伝説の高級ホテル「ヴィクトリアン・ホテル」が舞台のミステリー小説です。ヴィクトリアン・ホテルを訪れた女優の佐倉優美、スリの三木本貴志、作家の高見光彦、大手企業の宣伝部社員の森沢祐一郎、老婦人の林志津子の5人の視点で物語は進んでいきます。

この小説の大きなテーマは「優しさ」です。登場する5人は、優しさ、親切とは何なのかという悩みを持っています。優しいことは誰かを救うけれど、その優しさを批判的に捉えると、優しさを否定する人、傷つく人もいて、「優しさというのは難しい」というのが物語の根底にあります。しかし、この5人はヴィクトリアン・ホテルで誰かに優しさを向けたり、向けられたりと、お互いの「優しさ」が交錯することで、5人は「優しさ」とはどういうものなのか、このままでいいのかという問いに対して、答えを見つけていきます。

この小説には大きなトリックが仕掛けられており、読み進めていくうちにちょっとした違和感を抱くようになります。このトリックが明かされたとき、「なるほど、そういうことか!」と驚き、綺麗にこの違和感が解消されていくところが、この小説の大きなポイントで、面白いところです。この物語のトリックを知ったあと、もう一度始めから読むとさらに面白く感じると思います。そのため、私は2度読むことをおすすめします。

ミステリーでありながら、読み終わった後、「優しさ」に対しての答えを見つけた5人のその後に心が温かくなり、感動できる作品です。また、読者も「優しさ」について考えることができると思います。心が温かくなる作品なので、心が疲れたときにおすすめです。また、ミステリー小説を読みたいけれど、感動もしたい人におすすめの作品です。ぜひ、読んでみてください。

斜線堂有紀著 『恋に至る病』

 

 

知能情報学部 3年生 Kさんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名 :恋に至る病
著者 : 斜線堂有紀著
出版社:KADOKAWA
出版年:2020年

斜線堂有紀の『恋に至る病』は、愛の持つ純粋さと狂気、そしてそれが引き起こす破滅的な悲劇を描いた衝撃的なミステリー小説です。本作では、幼なじみの宮嶺と寄河景の二人の関係を軸に、人間関係の光と影、さらには愛の危うさを丁寧に描写しています。

寄河景は、誰からも愛される善良な女子高生として登場しますが、物語が進むにつれて日本中を震撼させる自殺教唆ゲーム『青い蝶』の主催者へと変貌していきます。その変化は急激ではなく、じわじわと忍び寄るように描かれるため、読者は彼女の変貌を恐ろしくもリアルに感じ取ることができます。一方で、彼女を一途に愛する幼なじみの宮嶺は、景の変化に気づきつつも、「世界が君を赦さなくても、僕だけは君の味方だから」と彼女を支え続けます。しかし、この愛情は純粋であるがゆえに、彼女の変貌を止めるどころか、むしろ黙認する結果となり、最終的には彼自身をも巻き込む破滅へとつながっていきます。

本作の中核を成すのは、この二人の関係と、それに伴う心理描写の巧みさです。宮嶺の視点を通して描かれる景への愛情は、献身的であると同時に自己破壊的であり、その痛々しさが物語全体に深い緊張感を与えています。一方で、景自身の無垢さと狂気が混在するキャラクター性も、単なる「悪」として一括りにできない複雑さを持ち合わせており、読者の心を強く揺さぶります。

また、自殺教唆ゲーム『青い蝶』という設定は、単なる物語上の装置にとどまらず、現代社会におけるSNSの匿名性や孤独感、つながりの脆さを象徴しています。人々が抱える見えない不安や孤独が、このゲームを通じて表面化し、悲劇的な結末を生む様子は、単なるフィクションでは片付けられない普遍性を持っています。

『恋に至る病』は、恋愛がもたらす幸福だけでなく、そこに潜む狂気や破壊力を鋭く描き出した作品です。読後には深い余韻が残り、「愛とは何か?」という普遍的な問いを突きつけられることでしょう。恋愛小説やミステリーの枠を超え、人間の本質に迫った本作は、多くの人にとって心に残る一冊となるはずです。

KONANライブラリ サーティフィケイト学生企画『みんなで育てる言葉の木』展示編

KONAN ライブラリ サーティフィケイト 学生企画
『みんなで育てる言葉の木』展示編

展示期間 :2025年 1月14日(火)~ 2025年5月頃まで
展示場所:図書館1階ゲート前

 

 

 

2024年9月から募集していた「本を読んでいて心に残った言葉」が、こんなに大きな木になりました!
なんと、およそ100通ものご応募がありました。たくさんご応募いただき誠にありがとうございました。この場をお借りし、お礼申し上げます。

 

小説や学芸書、洋書などたくさんの本から、たくさんの言葉が寄せられました。

どれも素晴らしい言葉ばかりなので、きっとみなさんの新しい本との出会いのきっかけになります。そしてその本の言葉が、みなさんの心の支えになることを願っています。

 

展示は5月頃まで展示予定です。ぜひどんな言葉があるのかご覧ください!
本の展示も行っていますので、借りていただくこともできます。

 

もちろんしおりもまだまだ配布しています✨

 

 

企画者: 文学部4年生  K

浅倉秋成著 『六人の嘘つきな大学生』

 

 

文学部 3年生 岡田 優花さんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名 : 六人の嘘つきな大学生
著者 : 浅倉秋成著
出版社:KADOKAWA
出版年:2021年

皆さんは誰かに嘘をついたことがあるだろうか?友達を驚かすための嘘や自分をよく見せようとする嘘。私たちはたくさんの嘘に囲まれながら生活をしている。大学3年生になって就職活動を始めた今、自己分析を行うことで自分の人生を振り返り、嫌なことも思い出してしまう。そんな時に出会ったのがこの本だった。

本書は、多くの就活生が憧れを抱くエンターテインメント企業スピラリンクスの最終選考まで勝ち残った6人の物語だ。1か月後のグループディスカッションへの準備を続け、全員で内定を取ろうと切磋琢磨する。だが選考方法が急遽変更され、6人で話し合い、一番内定にふさわしい者を選ぶよう連絡がきた。

グループディスカッション当日、密室の会議室に集まった6人の前に現れたのは謎の封筒。この封筒によって6人の過去と嘘が暴かれていく。信じていた仲間の本当の姿、過去の過ち。様々なことが明らかになっていく中、犯人が自白し、1人の内定者が決定した。

これで物語は終わりかと思われたが、舞台はその8年後に至る。犯人の死によってこの一連の出来事の真相が明らかになる。真犯人はいったい誰なのか、なぜあのようなことが起こったのか。どんどん嘘が明らかになっていく。

とにかく伏線回収がすごい。最後まで展開が予想できない。続きが気になり読む手が止まらなくなる。

就職活動中は、感情が不安定になり混乱を起こしやすい。読み進めていく中で、もし私がこの場にいたらどうしていただろう、と考える場面が多々あった。自分を偽ることで、相手に好印象を持ってもらえるかもしれない。しかしそれは自分のとある一部分にすぎず、本当の自分は隠したままだ。

就職活動を進めていくうえで、自分の過去の失敗より成功に目を向けがちだが、挫折があったからこそ今がある、自分の短所だって見方を変えれば長所になる。こう考えることでより自分と深く向き合うことができる。

嘘と向き合いつつ、自分が納得のいく道へと進んでいきたいと思う。

 

経済学部 荻巣 嘉高先生へのインタビュー

経済学部2生 海野 朱音さんが、経済学部 荻巣 嘉高先生にインタビューを行いました。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

 

・本を買うときに重視していることは何ですか?

なるべく書店に足を運び、試し読みをして自分に合う本か確認してから買うようにしています。初めて読んだ小説が森見登美彦さんの本だったのですが、『夜は短し歩けよ乙女』や『有頂天家族』以外の本の内容がしっくりこなくて、同じ作家でもすべての作品が自分に合うわけではないと学びました。それ以降、ウェブでは見ることができない本の背表紙や中身を見るようにするなど、本との出会いを大切にしています。

 

・これまでで、1番印象に残っている本は何ですか?

貴志祐介著の『黒い家』でしょうか。読んだのは大学生のときでしたが、ホラー小説は初めてだったにもかかわらず深夜に読んでしまい、不安で眠れなくなりました(ホラー作品は昼間に読むことをお勧めします)。貴志祐介さんの小説を初めて読む人は、『新世界より』 がおすすめです。不思議な世界観の中で、心をざわつかせるような展開を楽しむことができるので、ぜひ一度読んでみてください。

 

・学生におすすめしたい本はありますか?

数学ガールの秘密ノート』シリーズです。わかりにくいと思われる概念を非常にわかりやすく解説しているので、衝撃的でした。今でも、数学が苦手な人にどうしたら上手く伝えられるかを考える時に参考にしています。中学生でも読める本なので、数学と仲良くなれない人は一度手に取ってみると良いかも?

 

・最近は電子書籍が普及していますが、あえて紙の本で読むことのメリットは何だと思われますか?

私は断然、紙の本のほうが好きです。紙の本のメリットを強いて言うなら、自分の知識・経験の後ろ盾となってくれることだと思います。本は同じページばかり触れているとしわくちゃになりますよね?何年も読み込んでいくと、経年劣化で風格が出てきます。自分が読んだ跡を目の当たりにすることができて、自分の糧になっていると実感できるのでお勧めです。

 

・学生に向けて一言!

本を読むのは大変疲れますが、間違いなく本は人生を豊かにしてくれます。少しずつでもよいから本を手に取ってみましょう!

 

 

(感想)

本の良さを改めて感じたインタビューでした。特に、荻巣先生が「本は自分の知識・経験の後ろ盾となってくれる」という言葉は、電子書籍ばかり読んでいる私にとっては非常に新鮮でした。今後不安になることがあったら、自分の本棚を改めて眺めて、自分にとっての心強い後ろ盾を確認しようと思いました。

(インタビュアー: 経済学部2生 海野 朱音さん

KONANライブラリ サーティフィケイト学生企画『みんなで育てる言葉の木』

KONAN ライブラリ サーティフィケイト 学生企画
『みんなで育てる言葉の木』

展示期間 :2024年 9月20日(火)~ 2025年5月頃まで

 

 

現在、図書館ではみなさんが本を読んで心に残った言葉を募集しています。

心に残っている言葉が、だれかの新しい本との出会いを繋げてくれるかもしれません。

言葉の募集期間は2025年1月10日(金)までです。

みなさまからのご応募お待ちしています!ご応募はこちらから

 

また、図書館の返却日が押してあるしおりが変わっているのはご存知でしょうか?
集まった言葉はしおりにして配布しています。
すでにたくさんの言葉が集まっていますので、貸出をするたびに色んな言葉のしおりが巡ってくると思います。今日はどんな言葉が書いてあるのか、本の貸出も楽しみになりますね!

 

 

 

 

さらに、タイトルのとおり、みなさんから寄せられた言葉で大きな言葉の木を作ります。
みなさんからの言葉がたくさんになればなるほど大きな木になります。

展示は2025年1月頃を予定しています。どんな木になるのか、今から楽しみにしていてください!

 

 

 

企画者: 文学部4年生  K