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満田拓也著『MAJOR(メジャー)』

書名:MAJOR(メジャー)
著者:満田拓也
出版社:講談社
出版年:1994年~

法学部1年 松井琴美さん(「基礎演習(濱谷)」リサーチペーパーより)

漫画の紹介
 『メジャー』は満田拓也による日本の漫画である。
 「週刊少年サンデー」(小学館)にて1994年33号より2010年32号まで全747話が連載されていた。
 同誌2015年15号より続編『メジャー2nd』が連載中である。
 第41回(平成7年度)小学館漫画賞少年部門、第2回(2011)サムライジャパン野球文学賞ベストナイン受賞。
 シリーズ累計発行部数5400万部を記録した。

あらすじ
 本田吾郎が父(おとさん)と同じ野球選手の道を志し、やがてメジャーリーグの選手になることを目指す物語です。5歳の吾郎とおとさんとの親子のふれあい、そして吾郎の最初の野球友達になる佐藤寿也(としくん)との友情を描き出します。そして、9歳・小学4年生になった吾郎はリトルリーグのチームに入ります。野球人生の始まりです。ピッチャーとして活躍する吾郎はチームメイトとの友情を育んで、としくんを始めとするライバル達と試合で対決していきます。

登場人物の紹介
 本田吾郎(主人公)
  野球一筋で、曲がったことが許せない熱い心の小学校4年生。母親代わりの桃子と二人暮らし。9歳になってリトルリーグの三船ドルフィンズに入ったが、解散しかかったチームの立て直しに必死な毎日を送る。
 本田茂治(主人公の父)
  プロ野球・横浜ブルーオーシャンズの元選手で、吾郎の父。引退の瀬戸際からバッターに転向して再起したが、ギブソンのデットボールを受けて事故死してしまう。
 星野桃子(主人公の保育園の先生)
  吾郎が通っていた保育園の先生である。結婚を約束していた吾郎の父・茂治が試合中の事故死で死んだあと、吾郎を引き取り母親として育てていく。
 佐藤寿也(主人公の幼馴染)
  吾郎の幼馴染で野球友達。吾郎が引っ越しして離ればなれになっていたが、強豪・横浜リトルの選手として再会。横浜リトルでは、強肩強打のキャッチャーとして認められていく。
 主人公の人生を簡単な紹介

幼少期
 本田吾郎は母を亡くし、父親と二人暮らしだった。彼の夢は「父親のようなすごいピッチャーになる」こと。そんな中、肘を痛めてしまい引退を申し出た父・茂治であったが、吾郎のためにバッターとして再起することを誓った。そして、テストに合格し、見事バッターとして一軍に復帰した。メジャーリーグから来たジョー・ギブソンと試合することになった茂治。レベルの高い彼から茂治はホームランを打ち、吾郎は大喜びだった。だが、茂治の第3打席、ギブソンのデットボールが頭に直撃して倒れてしまう。その試合では元気に立ち上がり、出場を続けたが、翌朝自宅で死亡してしまった。吾郎は茂治の婚約者だった保育園の先生・星野桃子に引き取られることになった。
小学生
 茂治の事故死から3年、吾郎は小学4年生になった。そして、三船ドルフィンズに入団するも、野球をするために3人足りなかったが、クラスメイトの清水薫、小森大介、沢村涼太を誘い、9人揃えることが出来た。吾郎の才能を感じた三船リトルの安藤監督から、名門の横浜リトルへの入団を勧められる。当初は前向きな考えを示したが、仲間を見捨てることを桃子から猛反対される。その後、桃子が急病で倒れたことや茂治の親友・茂野英毅の説得もあり、三船リトルで横浜リトルを倒すことを決意した。そして、トーナメントに勝ち進み、肩を痛めながらも日本一の横浜リトルに勝利した。その後、桃子と英毅の結婚、英毅が所属する福岡ファルコンズ移籍に伴い転向することになった。この際、苗字が「本田」から「茂野」となった。
中学生
 英毅が横浜に移籍したことに伴い、中3になった吾郎は横浜に戻ってきた。そして三船東中学に転入し、小森、沢村、薫と再会を果たした。しかし、吾郎は3年前に右肩を壊してしまい、左投げに転向していた。そして、高校進学後に硬式野球をやるために、中学ではサッカー部に所属して体力づくりに励んでいた。ところが、三船西中学との練習試合で相手監督に罵倒される東中をみかねて、急遽登板した。それをきっかけに野球部に入部した。しかし、県大会の1回戦で海藤学園付属中の眉村に打ち込まれて、コールド負けで敗北してしまう。これにより自分自身が海道野球部で這い上がらねばと思い、寿也たちと海道学園高校に入学する。
 この続きが知りたい方はぜひ読んでみて下さい!

まとめ
 主人公である茂野吾郎の半生を描いた作品で、彼の成長とともに所属するチームを情熱で突き動かし、チーム一丸となって目標に向かって前進していきます。「友情」や「努力」といった少年漫画として普遍的なテーマを扱いながらも主人公や家族が不幸になることはない。「逆境」は乗り越えられることをこの漫画で示してくれています。
 また、主人公の吾郎が幾多の挫折を経験しながらも、野球人として成長していくことに憧れや尊敬の念を抱くことができます。最高の仲間であり、最高のライバルである佐藤寿也という存在もこの作品を面白くしている要素であり、吾郎と周囲の人間や環境全てが絡み合って最高の作品です。
 是非、読んでみて下さい!!

アレックス・バナヤン著,大田黒奉之訳『The Third Door』

法学部1年 前田颯太さん(「基礎演習(濱谷)」リサーチペーパーより)

 The Third Doorの主人公は当時大学生であるアレックス・バナヤン。アレックスは自分の現在のただ学校に通い課題や、テストに追われる生活にうんざりしていた。そんな悶々とした生活を過ごしていく中でふとこのままでは良くないと思い、そんな悩みを解決すべくあるアイデアを思いつく。それは世界的な成功者たちにあなた達がどのようにして初めの一歩を踏み出し、成功するまでに至ったのか?というものであった。そのインタビューを実現させるために試行錯誤していくという物語である。
 この本の冒頭でアレックスは『人生・ビジネス・成功。どれもナイトクラブみたいなものだ。常に3つのドアがある。ファーストドア。99パーセントの人が並ぶ正面入り口。セカンドドア。選ばれた人だけが利用できる入り口。普通に生きていたら、この2つのドアしかないような気分になる。でも、裏道を駆け抜け、何百回もノックして窓を乗り越え、キッチンをこっそり通り抜けたその先にサードドアがある。』こう話している。私はこの最初の描き始めの部分でこの本に興味を惹かれた。  
 アレックスはインタビューの相手を決めるために大学の仲間に理想の大学を作るなら誰を教授に招くかという質問をした。仲間達とアレックスはビルゲイツ、レディーガガ、スティーブンスピルバーグ、など世界的に知られているにとたちの名前を挙げていく。これらの錚々たる人々にいかにしてサードドアをこじ開け、インタビューするまでに至ったのかがこの本の醍醐味である。そのためのポイントとしてまず初めにインサイドマンの存在が大事だと述べられている。インサイドマンとは自分の目的と自分自身をつなぎ合わせてくれるとても大切な存在である。そして次のポイントは信頼を借りるということだ。この本の中でアレックスはある一人の男に気に入られる。そしてこの男の信頼を借りることによってアレックスは飛躍的に成功へと近づいていく。最後のポイントは犠牲を払うということ。どういうことかというと、チー・ルーというヤフーショッピングの生みの親が登場し、このチーは一日24時間しかないということから睡眠時間を犠牲にし、他の残った時間を徹底的に仕事に費やす。これらの様々なポイントからアレックスは学んでいき、挑戦していくといった内容になっている。
 私はこういう類の本を何冊か読んだ中でこの本は最もわかりやすいと思った。自分たちと変わらない大学生という立場で、なんの実績もない人が成功するまでの過程を細かく書いてあるので、どこか親近感が湧いてくるからではないかと思う。この本を読むことによって普通に大学に通い与えられたことを受動的に動くのではなく、主体的に動いてこの先のビジョンを広げていくためのヒントになると私は思った。
 最後にこの作者のことについて少し簡潔に話そうと思う。アレックスは冒頭にも書いたように大学生である。しかし大学生と言っても医学部生である。このまま進めば将来は確約されているも同然だが、なぜ人生にうんざりしたのか?それは誰かに敷かれたようなレールは嫌で、レールを飛び出しひたすらにもがき成功を勝ち取るというアレックスの性格である泥臭さ書かれている。この男性を見ていると自分が過去にしてきた努力など大したことないなと思え、これからもっと頑張ろうと思える。私は何か壁に当たった時にはこの本を見て勇気をもらうことだろう。

寺嶋裕二著『ダイヤのエース』

法学部1年 堀川湧生さん(「基礎演習(濱谷)」リサーチペーパーより)

 紹介する漫画はダイヤのエースです。
 ダイヤのエースは寺島ゆうじによって書かれた野球漫画です。
 主な登場人物を紹介します。
 沢村英純と降谷暁はお互い無名の中学出身で東京の名門である青道高校という高校にスカウトされました。お互い対照的な性格であり、切磋琢磨してエース番号獲得を目指して高め合うよい関係であります。沢村栄純はまっすぐさと闘志を剥き出しにした負けん気の強い性格であります。当初は地元の高校に進学して仲間と共に野球を続けるつもりであったが、中学最後の試合を観戦した青道野球部副部長兼スカウトの高島礼にその才能を認められ、渋々ながら見学に訪れた青道で御幸一也と出会い、地元の高校に進むか野球留学で高い技術を身につけるかの板挟みになるが、自分の力を試すため、仲間の後押しと共に青道への入学を決めました。一方、降谷曉は表情はあまり変わらないが、感情の起伏が分かりやすい。いつも無愛想だが、内には並々ならぬ闘志が宿っている。他人の話を聞かないことも多く、クールに見えるがかなり天然な人物です。青道高校は毎年打撃のチームであったが、この二人が入学したことで投手層も厚くなっていきます。
 次に、青道高校は強豪校が多くいる西東京地区にあり、稲城実業や市大三校などのライバル校の中から勝ち上がって甲子園出場を目指しています。稲城実業の成宮鳴や市大三校の天久光聖、薬師高校の轟雷市など他の高校にも魅力的な選手がたくさんいて読んでいて飽きないストーリーになっています。
 最後に、この漫画は漫画の世界だけにいる異次元の選手とかがいるのではなく高校野球をリアルに再現していて、1つの強豪校が甲子園を目指して日々練習に励む中でたくさんの笑いがあったり、監督の名言などとても魅力的なシーンも多いので野球に興味がない方でも楽しめる漫画だと思います。
 私がダイヤのAという漫画を取り上げた理由は、ダイヤのAは今まで部活動などに取り組んできた人たちに共感が持てることが多いと思ったからです。そしてこの漫画はユーモアあふれる漫画になっているので気持ちが沈んでいるときなどにも最適だと思ったからです。リアルに高校野球を再現していてとても身近に感じられ、勇気や感動を与える漫画であると感じたからです。野球に限らずスポーツはすごい力があると考えており、スポーツを通して多くの人に影響を与えるのでダイヤのエースを通じて多くのことを感じてもらいたいと思い、そして楽しんでもらえると思ったのでこの漫画を取り上げました。

川口俊和著『コーヒーが冷めないうちに』

法学部1年 藤井 暖さん(「基礎演習(濱谷)」リサーチペーパーより)

 僕が選んだ「コーヒーが冷めないうちに」という本は、特定の場所でコーヒーを飲むと過去に戻ることができる不思議な喫茶店があり、それを知って過去に戻ろうとする人たちのそれぞれの物語が書かれた本です。
 しかしこの本で書かれている「過去に戻れる」という行為にはいくつかの複雑なルールがあります。
 ①過去に戻ってもこの喫茶店を訪れたことのない人とは会えない、②過去に戻って何をしても現在は変わらない、③過去に戻れる時間は淹れてもらったコーヒーが冷めるまでの間、④過去に戻ってもコーヒーを飲んだ自分の席からは動けない、というものです。
 正直、自分ならここまでして過去に戻るのは面倒だなと思ってしまいました。
 しかしこの作品に出てくる登場人物はこれらの複雑なルールがあるにも関わらず、それ以上に過去に戻りたいと強く願う人たちばかりです。
 そんな人たちがそれぞれ抱えている過去の後悔を取り戻そうとするドラマが見れ、とてもおもしろく感動できる本です。
 作者の川口俊和さんは1971年に大阪府茨木市で誕生しました。
 もともとは、小説家でなく劇団の脚本家兼演出家として活動していました。
 そこで、この小説が出版されるきっかけとなる舞台「コーヒーが冷めないうちに」を公演し第10回杉並演劇祭大賞を受賞しました。
 この舞台をたまたま見に来ていた編集者が感動し、是非小説にしたいという思いから小説の「コーヒーが冷めないうちに」の出版が実現しました。
 この作品が川口さんの小説デビュー作となり、その後2018年に映画化されるなどとても人気のある作品となりました。
 他の著書として「この嘘がばれないうちに」と「思い出が消えないうちに」という作品があります。
 この2作はタイトルからも想像がつく通り、「コーヒーが冷めないうちに」の続編として出版されました。
 しかし、これほど有名な小説を書き上げた川口さんですがなんとこの他に著書がありません。
 理由としては、本業が劇団の脚本家兼演出家であるので小説を書き上げる必要がないことだと思います。
 ですが副業としてここまで有名な小説を書いた川口さんは本当にすごいと思いますし、まだこれから新しい作品が生まれるかもしれないのでとても楽しみです。
 最後に、映画と原作では話が少し変わっているので原作を読んでから映画を見て比較をしてみてもおもしろいかもしれません。

参考:【映画】コーヒーが冷めないうちに / 川口俊和原作 ; 塚原あゆ子監督 ; 奥寺佐渡子脚本

太宰治著『人間失格』

法学部1年 久本小茄さん(「基礎演習(濱谷)」リサーチペーパーより)

 まずは太宰の生涯から見ていく。
 本名は津島修治で、14歳の時に貴族院議員である父が病没。人間失格の主人公である葉蔵も育ちが良いという設定であり、太宰と共通している。16歳の頃から小説やエッセイをクラスメートと作った同人雑誌に書き始めたた。20歳の秋ごろから急激に左翼運動に傾斜し、12月に最初の自殺未遂。「資産家の子」という自己の出身階級に悩み、下宿で睡眠薬による自殺を図った。彼は金持ちの家に生まれるも愛情には恵まれなかったのである。
 翌年、東京帝国大学(現・東京大学)に入学。かねてから尊敬していた井伏鱒二に上京後すぐ弟子入り。秋ごろ、深い関係にあった小山初代に地元有力者からの身請け話が持ち上がり、動揺した太宰は彼女を上京させる。名家の子が芸妓を呼び寄せたことは郷里で騒ぎになった。2人が同棲をはじめると、生家から長兄が上京し、「(初代が芸妓でも)結婚は認めるが本家からは除籍する」と言い渡される。これを受けて、太宰は実家から縁を切られたのである。
 一方、太宰は銀座のカフェの女給・田部シメ子と出会い、そのまま浅草見物など3日間を共に過ごした後、彼女とカルモチン心中を図る。田部は間もなく絶命、太宰は一命を取りとめた。事件後、太宰は自殺ほう助罪に問われたが起訴猶予となる。
 翌月、小山初代と仮祝言をあげた。22歳で大学にはほぼ行かず、反帝国主義学生同盟に加わる。翌年、左翼活動がばれてしまい長兄に激怒され、彼の左翼活動は終わった。
 26歳の時、授業料未納により大学を除籍され、都新聞社の入社試験にも落ち、3回目の自殺未遂を起こす。その直後、腹膜炎で入院し、鎮痛のため使用した麻酔剤をきっかけに薬物中毒になる。
 翌年、遺書のつもりで書いたという作品集「晩年」を刊行。同年秋、太宰の薬物依存があまりに深刻なため心配した井伏らは太宰に半ばだますような形で精神病病棟に入院させる。太宰は、「自分は人間とは思われていないのだ、自分は人間を失格してしまっているのだ」と深く傷つく。この体験は8年後、「人間失格」に結実する。
 退院後、妻初代は入院中の浮気を告白。ショックを受けた太宰は、28歳で、初代と自殺を図ったが未遂となり離婚する。その後、「女生徒」「富嶽百景」「斜陽」などを執筆し、反響を呼ぶ。1948年、過労と乱酒で結核が悪化。栄養剤を注射しつつ「人間失格」を執筆。
 6月13日深夜、山崎富栄(戦争未亡人)と身体を帯で結んで玉川上水に入水する。6日後に遺体が発見される。38歳没。しかし、この入水心中は女側の無理心中説や狂言心中のつもりだった説など様々な憶測を呼んだが、真実は藪の中である。
 太宰は感受性が強く人間不信で常に情緒不安定な性格であり、女性関係やお金にだらしない性格であった。彼は傷つきやすい性格であったので人一倍病みやすく、自暴自棄な面があったと思った。現代でもリストカットを繰り返し、薬物を過剰摂取して精神病院に入院する人は多々居るし、インターネットにおいてもそういった人をよく見かける。だから、「人間失格」は70年以上前の作品であるけれど、現代の若者でも理解しやすい作品だと思う。何度も自殺を試み、多数の女性を巻き込んだりと波乱万丈な人生を歩んだ彼だが、もし自分が太宰と全く同じ状況に置かれたら病んでしまう気持ちも分からなくはないと思った。
 ここまで調査してみて、太宰の人間関係はかなり複雑だったので、相関図の代わりに太宰の人間関係を数行でまとめてみようと思う。小山初代は最初の妻であり、太宰の入院中に他の男性と過ちを犯しその後離婚。石原美知子は2番目の妻で、太宰の師匠である井伏鱒二が「このままでは太宰がだめになる」と思い、彼の再婚相手を探し、紆余曲折ありながらも彼女と見合い結婚したのである。また、田部シメ子と心中未遂を起こし、愛人であった山崎富栄と心中を試み成功。太宰は女性関係が多く、太田静子という愛人もいた。
 この作品は一度読んでみると、特に繊細な心の持ち主でなくとも、共感できる作品だと思った。度重なる問題から自暴自棄になるということは私にも起こりうることなので、この作品のこういった面は私にも影響を与えたし、だれしもが影響を受けると思う。
 本作で描かれている良家の子が堕落していく様子は、陰鬱な雰囲気をまとっているが、だんだんと引き込まれいくものがあると思った。この陰鬱な雰囲気には、太宰の作風や人柄が反映されていると思うので、見所だと思う。堕落する過程がテンポよく描かれており、さらに太宰と人間失格の主人公の人生が酷似していることから、この作品を読むと太宰のおおまかな人生の流れや人柄を共感しながらすらすらと読み取り、つかむことができると思う。
 太宰の性格や人生から多くのことを学び取り、太宰の考えや行動と自分のそれにどんな共通点があるかをぜひ見出してほしい。

浜崎達也著『小説LIAR GAME The Final Stage』

法学部1年 長谷柊磨さん(「基礎演習(濱谷)」リサーチペーパーより)

(1)登場人物
・神崎直 神崎直は、友人からも「バカ正直のナオ」とあだ名されるほど人を信じやすい性格である。直は人を騙すくらいなら、人を信じて騙されてもいいと思っている究極のお人好しでもある。
・秋山深一 秋山深一は天才詐欺師で異様に頭が回り、観察力もある。また、秋山は詐欺師であるので疑い深い人間である。なので、人を簡単に信じる人間ではない。しかし、秋山は直とライアーゲームで勝ち進んでいき、少しずつ直の正直さを評価していき、最終的に直を信じることとなった。
・仙道アラタ
・福永ユウジ
・西田二郎
・坂巻マイ
・江藤光一
・武田ユキナ
・百瀬ノリカ
・久慈サトシ
・五十嵐衛
・ヨコヤノリヒコ

(2)ルール説明
 このゲームでは金・銀・の3つのリンゴを使い、どれか1つ選び投票箱にいれるというのが主なルール。投票箱は投票室の中にあり必ず1人はいらなくてはならない。投票室の中にあるレバーを引くとリンゴが出てくるので暖炉で暖めた焼印をリンゴについているネームプレートにつける。投票は13回繰り返され投票時間は1時間。制限時間内に投票室に入らなければペナルティとして1億円引かれる。どのリンゴを選んでもよいが少数派は1億円引かれ、多数派は1億円加算される。全員が同じリンゴを投票すれば全員1億円引かれる。ただし、赤リンゴを全員が揃えれば全員1億円獲得できる。赤リンゴが揃わなければ赤を入れた者にマイナス1億円、金・銀に入れた者はプラス1億円となる。負債が5億円を超えれば脱落者となる。また、赤を入れた者が1人の場合、その者に特別ペナルティマイナス10億円となる。

(3)あらすじ
 この作品は神崎直の家にファイナルステージの招待状が届くところから始まる。神崎直はセミファイナルで棄権したのだが、ファイナルステージでは秋山が出場し、かつ人を信じることがカギとなると言われる。それを聞いた直は出場することを決意する。直は秋山を放っておけず「エデンの園ゲーム」に加わる。11人のプレイヤーが集まったことでゲームディーラーから受け、50億円を賭けた騙し合いのゲームが始まる。
 当然のように直は赤を揃えることをプレイヤーたちに説得し皆賛成するが、結果はほとんど金・銀であった。その後直はチームを組むが、すでに坂巻もチームが多数派となっており少数派の直チームは勝ち目がないように見えた。しかし、秋山は少数派でも勝てる言い、坂巻チームに「俺には投票が見えている」と動揺させる。その後坂巻チームから裏切り者が現れ、1度チーム戦の戦いは終わる。
 また赤を揃えようとするも裏切り者が2人現れ、秋山は直から借りたリップクリームを使って裏切り者を暴く。裏切り者の1人が西田ということが分かったが、もう1人が分からないのでその1人を「X」とした。
 赤リンゴを揃えるため、直が皆の焼印を集め代表して投票するが結果は金1・赤10であった。直も他のプレイヤーも混乱する中、秋山は謎を解く。投票室に前もって隠しておいた金リンゴを直が投票する前に投票するというものだった。1人が一気に投票しても仕方ないことを知り、それぞれ投票する形に戻る。
 赤リンゴを投票したと宣言した武田都ともに直は赤リンゴを投票するが、投票後騙されていたことを知り10億円の負債を抱え脱落となる直を、秋山がかばいゲームから退く。最後に直の耳元に囁き会場を退出した。
 秋山はある部屋に案内されヨコヤという人物に会う。ヨコヤは秋山の負債を負担する代わりに賞金の50億円をもらうというものだった。秋山は要求をのみゲームに復活する。
 武田は皆の前で自分が「X」であると主張したが、秋山から助言されていた武田が「X」でないことを証明し、所持金の多かった武田は「X」に嵌められマイナス10億円となってしまう。だが直が武田に寄り添いお互い信頼し合うようになる。
 秋山は投票室に入り金リンゴを全て燃やし、選択しを銀・赤のみにした。赤を揃えるよう土下座までして皆を説得するが赤は揃わず、秋山が裏切り行為を働き、直は皆を説得しようと必死になる。しかし、これは秋山の作戦であり、金リンゴを燃やしたふりをして直の鞄に隠し「X」以外のプレイヤーに金リンゴを配り金を投票してもらった。秋山は「X」が誰なのかわかっていたのでそのプレイヤーには金リンゴを配らず、「X」は銀リンゴを投票し、「X」は1億円引かれた。そして「X」は仙道であるということが明るみになった。
 仙道は焦り出し、金リンゴがもうないこと知った瞬間投票室に飛び込み銀リンゴを手に取り投票した。他のプレイヤーは銀リンゴを入れるしかなくなったと思われたが、結果は銀10・赤1という結果だった。仙道が赤リンゴを投票したことになっていた。これも秋山の作戦で、赤リンゴは燃やすと樹脂が溶け銀リンゴで作られていた。その偽銀リンゴを秋山は銀リンゴのレーンに紛れさせ、仙道は自発的にそれを投票した。さらに、投票は色で識別されておらずリンゴの中にICチップが埋め込まれていた。結果的に仙道は秋山に騙されており2億円の負債を抱えた。
 ラストは全員で赤を揃えるという意見が固まる中、直は仙道に銀リンゴを投票して負債を帳消しするように勧める。そうすると直が負債を抱えるが直はそれでもいいと言った。だが仙道はそこで直を信頼し赤を投票した。全員が信じあったことで赤が揃ったのっである。
 最終的に秋山が勝者となり、賞金はヨコヤに渡しゲームは終了した。

(4)作者について
 甲斐谷忍さんは鹿児島県出身で鹿児島大学工学部を卒業。卒業後はサラリーマンに就職し、富山県高岡市に配属されていた時にヤングマガジン月例賞に投稿し、初投稿作が佳作受賞をした。そして、1994年に「週刊少年ジャンプ」で開始した「翠山ポリスギャング」で連載デビューをした。甲斐谷さんは大の競馬好きで、ライアーゲームの登場人物の名前は、実在の競馬関係者に由来するものがおおくいる。また「LIAR GAME」を作成する際に、甲斐谷さんは大学で電子工学を専門としており、大学時代はパソコンゲームのプログラム作りにはまっていたため、「LIAR GAME」のゲームを作るのが得意であった。また、甲斐谷さんは集中連載をあまりしない漫画家であったが、読者からたくさんの好評を受け集中連載をすることとなった。

(5)感想
 秋山の策略の巧妙さにおいてはかなり関心した。1つ1つ策略が明かされる毎に過去の小さな行動が最終的に結果に結びつくところは非常に面白味を感じた。仮にどういうことか分からなくなっても後から過去の場面の回想シーンが分かりやすく説明されているので、過程と結果が結びつきやすいのでとても読みやすいと感じた。次に、嘘まみれのゲームで正直者の直が秋山と共に必死でゲームを展開していくところは、すごくカッコイイと感じた。自分が騙されていく中で徐々に成長していき、今度は直が相手プレイヤーを騙すというのは読んでいてなんだか心地が良く、最後には全員を信じるという結果に私は直の魅力にかなりひかれていった。
 キャラクターの個性も様々なのでプレイヤーを騙してあざむす場面や悔しがって怒り狂う場面も人間の本性が表れており、これらの点も重要な見どころであると思った。
 最後に、嘘をつき相手の心理を揺さぶりのし上がっていく点がこの作品の醍醐味となっている。私はこの作品で新たな発見をたくさん得た。どう相手を騙し、どう勝ち進んでいくのかを自分で考えてみながらこの作品を読むと、より一層面白味が増すと私は思う。また、自分が考え本の内容と照らし合わせることで「そういう発想もあるのか」などを感じ取ることができ、柔軟な思考力や物事を様々な視点から捉えるという日常生活において重要な能力も得ることができるのではないかと私は感じた。