2.おすすめの本」カテゴリーアーカイブ

冲方丁著 『十二人の死にたい子どもたち』

 

 

知能情報学部 4年生 Mさんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名 : 十二人の死にたい子どもたち
著者 : 冲方丁

出版社:文藝春秋
出版年:2016

廃病院に集まった十二人の少年少女が、同意のうえで「安楽死」を実行する――はずだった。ところが“集いの場”のベッドには、想定外の十三人目の遺体。ここから物語は、密室の恐怖を煽るよりも「議論」と「推理」で転がりはじめる。書籍レビューで目立つのは、とにかく“止まらない”“一気読みした”という読了速度への言及だ。会話の応酬で状況と過去がほどけ、票決やルールが緊張を生む構図が、読み手を輪の中へ引きずり込む、と評価されている。

舞台がほぼ一室に絞られるため、台詞のテンポと論点の切り返しが読み味を決める。そこで好意的な読者は「討論劇として面白い」「推理と議論を楽しむミステリ」と捉え、人物の観察がそのまま謎解きになる快感を推す。

一方、登場人物が多いぶん序盤は番号と名前の対応に戸惑う、説明が続いてだれる、という指摘もある。それでも、各人の役割がくっきりしてくると一気に読みやすくなった、キャラクター分けが明確で後半はスラスラ読めた、という声が続く。議論が進むほど「死にたい理由」が多層化し、誰かを救うことは正しいのか、他者の選択に介入できるのか、という問いが浮上する点が刺さった、という反応も多い。私の思いとしては、誰もが抱える「悩み」から「死にたい理由」と深堀りしていくうえで、救いがある事を気付かせる展開はすごく好みである。

ただし賛否を分けるのもまた“言葉の濃度”だ。議論が回りくどく疲れる、語りが達観しすぎて現実味が薄い、結末が想像の範囲内だった、文章運びが好みに合わない――と辛口も少なくない。それでも本作が強いのは、死をセンセーショナルに消費せず、匿名の場でしか吐き出せなかった痛みを、対話の場に引き上げるところだろう。人物関係をメモしつつ読むと、賛否の分かれ目も含めて“議論に参加した感覚”が増す。読後に残るのは解決の爽快感というより、他者の生を想像し続ける手触りである。重い題材であっても推進力は強い。会話型ミステリ好きに勧めたい。

[藤棚ONLINE]全学共通教育センター・西浦太郎先生推薦「風の歌を聴け」

図書館報『藤棚ONLINE』
全学共通教育センター・西浦太郎先生より

風の歌を聴け(村上春樹、講談社、1979年)

 今回、ご紹介したいのは村上春樹さんのデビュー作「風の歌を聴け」です。私は普段、あまり小説を読まないのですが、この作品は、ある人に勧められて読み、とても印象に残っています。

 本書を読んだ後の私の感想は、「この人は化け物だな」というものでした。そして、この人が今後、表現し、生み出していく世界はどのようなものなのだろう、と感じずにはいられませんでした。(他の人にはあまり分かってもらえませんが・・・)。いずれにしても、彼の後の作品の萌芽が多く含まれた一冊なのかもしれません。

 あまりネタバレになると良くありませんが、小説は世界に対して無関心なトーンで進み、最後にある女性との出会いと、別れがあり、そしてDJの言葉があります。

 人の言葉にならない悲しみや気持ちを聴き、苦しむ人と共に居続けようとする姿勢について考えさせられる作品です。

 また、読んだ後に、本のタイトルについて考えてみるのも面白いかもしれません。

川原礫著 『ソードアート・オンライン7 マザーズ・ロザリオ』

 

 

知能情報学部 4年生 Sさんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名 : ソードアート・オンライン7 マザーズ・ロザリオ
著者 : 川原礫

出版社:KADOKAWA
出版年:2016

本作は、ライトノベル作品のソードアートオンライン第7巻にあたるものですが、キリトとアスナという二人が過去にソードアートオンライン(以降SAO)という現実とゲームの死がリンクしているゲームの世界を無事クリアした後のお話ということさえ理解していれば読める内容となっています。

キリトとアスナはSAOクリア後に、SAOのシステムを用いてサービスしているアルヴヘイムオンライン(以降ALO)というゲームを楽しんでいました。そこで、「絶剣」と呼ばれる剣技において最強と呼ばれるプレイヤーの噂を耳にします。絶剣は何故か自分を楽しませてくれるような強いプレイヤーを求めていました。キリトとアスナは噂を聞いて現地に行き、絶剣と試合を行います。そしてアスナが絶剣に気に入られ仲間に入ってほしいとお願いされます。絶剣は可愛らしい少女のアバターをしており名前はユウキといいます。そしてユウキとパーティーを組みとある理由でボスの討伐に仲間だけで挑みたいと言いました。そこから、ユウキとアスナは仲を深めていき、ユウキの悲しき深層を知ることとなります。本作は、謎に包まれた省三ユウキとアスナの短い旅路のお話となります。

私は本作を読んで、ユウキの悲しい深層とアスナとのやり取りに心を打たれました。是非読んで頂きたい作品のため内容の多くは語りませんが、ALOはフルダイブVRというゲームの世界にそのまま入り込むことができる最先端のゲームです。この設定を上手く利用した物語であり、ユウキや仲間のボス討伐への執念などが上手く描写されています。

本作は、ソードアートオンラインの続編ということもあり、今までの章節全てを読んでいないと理解に苦しむ内容と想像できますが、前提をほんの少し知っているだけで読み進めることができる作品です。ソードアートオンラインという作品自体が短いスパンでお話が進む小説となっているため、ソードアートオンラインという作品に興味がある方にはぜひとも読んでもらいたい作品です。もちろん前作を読んでいた方がより理解が速く細かい感情の描写に気付くことができる作品でもあります。

本作は、ライトノベル作品に興味がある、ゲームの世界に興味があるといった方々には非常におすすめの作品であり、ソードアートオンラインという作品を読み進めていくキッカケになってくれる作品です。

川原礫著 『ソードアート・オンライン1 アインクラッド』

 

 

知能情報学部 4年生 Sさんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名 : ソードアート・オンライン1 アインクラッド
著者 : 川原礫

出版社:KADOKAWA
出版年:2016

本作は、新作ゲームであるソードアートオンライン(以降SAO)の中で、ゲームの死と現実の死がリンクした状態でクリアを目指したライトノベル作品です。主人公であるキリトはSAOのテストプレイ経験者であり、テストプレイ期間の中で最もゲームを進めることができたプレイヤーです。SAOサービス開始と同時に、他のプレイヤーにレクチャーしたり懐かしんだりとオンラインゲームを楽しんでいました。しかし、サービス開始からしばらくした後にログアウトできないことが発覚し、プレイヤー全体が困惑している中、SAO開発者である茅場晶彦が一度の死で現実でも死ぬことを告げられます。キリトはテスト時の知識を活かし、他のプレイヤーよりもクリアまでの効率が良いクエストや狩場を回り、クリアを目指して一人で進めていきます。少し読み進めると1回目のボス戦までたどり着き、本作のヒロインであるアスナと共にボスの討伐に成功します。その際に、圧倒的な強さや知識による攻略から、他のプレイヤーからデスゲームにおいて反則であると批判を受け、ボスのドロップ品を纏い「黒の剣士」と呼ばれるようになります。キリトと他のプレイヤーとの関わりや、それに伴ったキリトの葛藤、そしてライトノベルゆえの主人公の無双感を味わえる作品となっています。また、本作は一巻のみでクリアまで駆け足で進むのですが、その後に続く作品の原点となっています。

私は本作をアニメを通して読んでみようと思いました。本作がフルダイブVRゲームとなっており、現代を少し先取しています。VRやARなどの言葉が一般用語となった今では、場面を用意に想像しながら読み進めていくことができました。初めてライトノベルを読んでみたいという人におすすめの本であり、1巻で一通りのお話が終わるため気軽に読むことができます。特に、ゲームが好きであったり、しっかりとゲームの攻略を楽しみたい人におすすめです。

本作はSAOの世界でキリトが様々なプレイヤーと関わりながらゲームクリアを目指す作品です。非常に読みごたえがあり、場面の切り替わりが多いため熱中して読み切れる作品となっています。是非、ゲームが好きであったり、ライトノベルに興味があったら手に取って読んで頂きたい作品です。

小川洋子著 『博士の愛した数式』

 

 

知能情報学部 4年生 Bさんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名 : 博士の愛した数式
著者 : 小川洋子

出版社:新潮社
出版年:2003

『博士の愛した数式』は、記憶が八十分しか持続しない数学者の博士と、家政婦である「私」、そしてその息子との交流を描いた物語である。博士は事故の後遺症により、新しい記憶を保持することができず、常に現在を生き続けている存在である。しかし、その制約の中でも数学への深い愛情と、人に対する誠実さを失っていない点が、本作に静かな温かさを与えている。

物語の中で描かれる数学は、単なる計算や理論ではなく、美しさや秩序を持つ言語として扱われている。完全数や友愛数といった概念は、人と人との関係性を象徴する比喩として機能し、博士の世界観を形作っている。数学が苦手な読者であっても、数式が持つ意味や美しさを感覚的に理解できるよう工夫されており、学問と感情が対立するものではないことが自然に伝わってくる。

本作で特に印象的なのは、「記憶」と「関係性」の捉え方である。一般的には、記憶の継続こそが人間関係の基盤であると考えられがちだが、本作ではその前提が静かに問い直される。博士は毎回「私」や息子と初対面のように接するが、その態度には常に敬意と優しさがある。過去を共有できなくとも、相手を大切に思う姿勢があれば、関係は成立するのだという考え方が、物語全体を通して示されている。

さらに、本作は知性とは何かという問いも内包している。博士は日常生活では多くの制約を受けているが、数学の世界においては自由であり、その思考は非常に純粋である。記憶障害を「欠落」としてではなく、一つの在り方として描く姿勢は、読む者に価値観の転換を促す。簡潔で静かな文章の中に、人間の尊厳やつながりの本質が込められており、読み終えた後には、他者と向き合う姿勢について深く考えさせられた。穏やかでありながら、確かな強さを持つ作品である。

恩田陸著 『夜のピクニック』

 

 

知能情報学部 4年生 Bさんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名 : 夜のピクニック
著者 : 恩田陸

出版社:新潮社
出版年:2004

『夜のピクニック』は、高校生活最後の行事である「歩行祭」を舞台に、思春期の終わりに立つ若者たちの内面を静かに描き出した青春小説である。一晩かけて長距離を歩き続けるという特別な時間の中で、登場人物たちは日常では向き合うことを避けてきた感情や過去と、否応なく対峙することになる。本作には大きな事件や劇的な転換点はほとんど存在しないが、その分、心の微細な動きが丁寧に描かれており、読者は登場人物の感情に自然と寄り添うことになる。

主人公・甲田貴子は、家族に関する複雑な事情を胸の内に抱えながらも、それを周囲に語ることなく日々を過ごしている。歩行祭という非日常の空間は、彼女にとって過去と現在を見つめ直す装置として機能しており、歩き続ける身体の疲労とともに、心の緊張も徐々にほどけていく。夜の静けさ、眠気、友人との何気ない会話、沈黙の時間といった描写が積み重なることで、言葉にされない感情が浮かび上がってくる点が非常に印象的であった。

また、本作では「集団の中の個人」という視点も重要なテーマとなっている。多くの生徒が同じ道を歩いているにもかかわらず、それぞれが抱える悩みや不安は異なり、同じ時間を共有しながらも、心の内側は孤独である。その一方で、夜を通して歩き続けるという体験が、他者との距離を少しずつ縮め、互いの存在を肯定する力を持っていることが描かれている。特別な言葉や行動がなくとも、同じ時間と空間を共有すること自体が、人を支える行為になり得るのだと感じた。

本作を読み終えて強く印象に残ったのは、成長とは何かという問いである。登場人物たちは一夜にして別人のように変わるわけではないが、歩行祭を終えた後、確実に「前とは違う自分」として日常へ戻っていく。その変化は非常にささやかだが、だからこそ現実的であり、読者自身の経験とも重なりやすい。夜を越えて朝を迎えるという構造は、過去から未来へ踏み出す象徴でもあり、静かな希望を感じさせる。青春の一瞬の輝きと、その背後にある複雑な感情を誠実に描いた作品である。