2.おすすめの本」カテゴリーアーカイブ

店頭選書コーナー

CIMG0883

第1回店頭選書で選書した本は
図書館1階新着コーナーの左隣『特別企画コーナー』に並べています。
(一定期間を過ぎると通常書架に並びます。)

CIMG0885

参加した学生さんに“おすすめ本レビュー”を書いてもらいました。
気になる本があれば是非読んでみてください。
 CIMG0886

ご協力いただいた学生さん、ありがとうございました。
図書館では年1~2回店頭選書を実施しています。
興味を持った人は是非次回参加してみてくださいね。

あさのますみ『ヒヨコノアルキカタ』

 文学部 2年生 中西聖也さんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名:ヒヨコノアルキカタ
著者:あさのますみ:文 あずまきよひこ:絵
出版社:KADOKAWA  
出版年:2015年

 浅野真澄さんには二つの顔があります。ひとつは「声優」として声の仕事をすること。もう一つは、「作家」として絵本や児童書といった文章を書くこと。
 この本は、あさのさんが「はじめて」をテーマに書いたエッセイ集です。子供の頃から大人までの様々な思い出を書かれています。イラストを担当するのは漫画「よつばと!」で有名なあずまきよひこさん。エッセイ一つ一つに、あさのさんをヒヨコに見立てたイラストを書かれています。
 この本を読んだとき、「あ、私がいる」と思いました。きれいな石を大事に持っていた幼稚園の頃「宝物」。運動神経の悪かった小学校時代「反抗」。青春っていったいなんだろうと思った中学時代「青春」。なんだかどこかで見たことある。私にもこんなときあった。そう思ったとき、あさのさんにとても親近感を覚えました。自分の子供時代を思い出させてくれる作品でした。この作品は、懐かしさ、純粋さが詰まっていました。でも、この作品はただ子供時代だけを書いているわけではないのです。
 このエッセイの真の魅力は、「子供の頃」と「大人になった今」につながりを感じられることだと思います。おばあちゃんの家に泊まって、初めて習字を教えてもらった「習い事」。子供のあさのさんの純粋さ、おばあちゃんの温かさを感じられる素敵なお話です。では、大人になった今はどうでしょうか。おばあちゃんはもう病院暮らし。お別れが近くなってくる「覚悟」。病室には習字の作品が置いてありました。小さい頃の温かい「思い出」が、私の心にグサリと刺さりました。このエッセイには、このように過去と現在のつながりを感じられる部分がいくつもあり、心を揺さぶります。
 絵本のような優しい文章・やわらかいイラストが魅力的です。ひとつのお話は約6ページ。どこから読んでも、きっとあさのさんのことが好きになると思います。この本を読んで、自分の「思い出」にも目を向けてみてはどうでしょうか。きっと、良い読書体験になると思いますよ。 

坂木司『シンデレラ・ティース』

 文学部 2年生 匿名さんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

 

書名:シンデレラ・ティース
著者:坂木司
出版社:光文社  出版年:2006

 歯医者についてどのような印象がありますか。私は、歯の矯正で歯医者への通院経験がありますが、「歯を治療してくれる場所」という、漠然としたイメージしか持っていませんでした。この本を読んで、歯医者の仕事や歯についての知識が増え、理解が深まったように感じています。

 この物語の主人公は、小学校の低学年の頃、子供へのケアが不十分な歯医者での治療を経験したために、歯医者への苦手意識を強く持ってしまっている、大学二年生の女の子、サキです。サキは母親の計略に引っかかり、叔父の勤める歯科医院で受付のアルバイトをすることになってしまいます。歯医者の受付嬢として患者に接し、クリニックに持ち込まれる歯と患者の心に関する問題を個性豊かなスタッフ達と解決していくうちにサキは、歯医者に対するマイナスイメージを克服し、成長していくというストーリーです。

 私がこの本をおすすめする理由は三つあります。

 まず一つ目は、物語が進んでいくにつれて、少しずつ苦手を克服し、成長していくサキの様子を感じ取れるからです。前に進んでいく主人公を見て、自分も頑張ろうと、勇気をもらえるのではないのでしょうか。

 次に二つ目は、一つ一つの謎や問題に真摯に向き合い、歯だけではなく患者の心までをも救うために最善を尽くすスタッフの姿に感銘を受けたからです。

 最後に三つ目は、生き方や考え方についても教えてくれる本だと思うからです。上辺だけでなく内面を見て人を理解することの大切さや健康に人生を楽しむために必要なことなどを感じ取ることができました。

 歯医者への認識を新たにするためにも、サキの忘れられない夏を体験してみて下さい。また、このお話の姉妹編に当たる物語が存在します。サキとメールのやり取りをしている“ヒロちゃん”が主人公の「ホテル・ジューシー」というお話です。サキとヒロの二人の物語をぜひ読んでみて下さい。

 

渡辺佑基著『ペンギンが教えてくれた物理のはなし』

書名: ペンギンが教えてくれた物理のはなし
著者: 渡辺佑基
出版者: 河出書房新社  出版年: 2014年
配置場所: 1階開架一般  請求記号: 481.7//2009

この数十年で飛躍的に進化したセンサーやカメラなどの情報機器。
それを動物にくっつけて、生態を記録しよう!
というのが、「バイオロギング」です。

たとえば、肺呼吸をするアザラシが、息を止めたままで深海まで潜れるのは”なぜ”でしょうか。
海の中での彼らの行動を調べてみたら、「きっとなにかすごい秘密がわかるに違いない」
と、期待に胸を膨らませ、アザラシを捕まえ、一定時間が経過したら外れる仕掛けをした機器を取り付け、どきどきしながら数日間待った後、人工衛星から届く発信器の電波を頼りに機器を回収します。
そこには、期待通りだったり、予想外だったりするアザラシの行動に関するバイオロギング・データが記録されています。

ただ、期待通りでも、予想外でも、データそのものは、彼らが何メートルまで潜ったか、といった事実の記録であって、”なぜ”潜ったのか、”なぜ”潜れるのか、といった疑問には答えてくれません。

どうすれば、その謎を解く「データ分析」ができるのか。そこが研究者の腕の見せ所です。
(アザラシやクジラを捕えるにも、かなりの腕前が必要かと思いますが・・。)
この本の著者である渡辺先生が使ったのは、基本的な物理の法則=「ペンギン物理学」でした。
説明されると「あぁ、分かってたはずなのに」と、思うのですが、これまでいろいろな”仮説”を事実として学んでいたと知らされました。情報機器の発達は、新しい実験によって裏打ちされた新しい事実の発見にも貢献しているのです。

環境問題の先駆者として知られる生物学者のレイチェル・カーソンは、自然の神秘さや不思議さに目を見はる感性を『センス・オブ・ワンダー』と表現しました。
情報機器という新しい感覚=センスを手に入れた我々は、新たなワンダーを体感することができるようになったのかもしれません。

一般向けの本なので、文系でも大丈夫です。
新しいわくわくをちょっと体験できる本でした。

(konno)

マイケル・ブース『英国一家、日本を食べる』

<ライブラリ・サーティフィケイト 読書記録の見本です>

書名: 英国一家、日本を食べる
著者: マイケル・ブース
出版者: 亜紀書房  出版年: 2013年
配置場所: 2階中山文庫一般  請求記号: 383/B

【レビュー】 評価:★★★★☆
 2013年和食がユネスコ無形文化遺産に登録され、注目されるようになった。この本は、英国人である著者が飽くなき食(伝統的な和食や庶民的な和食)への興味を抱き、外国人ならではの受けたカルチャーショックと和食の含蓄が書かれていて、興味深い。クスッと笑えることもあったり、そういう見方もあるのかと思ったり。楽しく読める本だった。ただ、大阪(庶民的)や京都(和食そのもの)の食については、書かれていたが、神戸については書かれていないのが残念。まあ、確かに神戸は伝統的な和食やたこ焼きなどの庶民的な食というイメージは無いでしょうね。

【心に残った言葉、キーワード】
「…だしと塩加減と火加減を修得していただきたい…」(p.83-p.89)
「何にもまして謙虚さを身につけるべきではないか」(p.268)

笠井 献一『科学者の卵たちに贈る言葉』

<ライブラリ・サーティフィケイト 読書記録の見本です>

書名: 科学者の卵たちに贈る言葉 (岩波科学ライブラリー ; 210)
著者: 笠井 献一
出版者: 岩波書店  出版年: 2013年
配置場所: 1階開架一般  請求記号: 407//2161

【レビュー】 評価:★★★★☆
 少し前の新聞でこの本が紹介されていて、普段知ることができない理系の世界をのぞいてみたいと思い、手に取った。
 この本は生化学の研究者であり、著者の指導教員であった江上不二夫氏が、学生にかけた言葉やそれにまつわるエピソードについて書かれている。
 理系に関する様々なエピソードが書かれていて、本を読み進むにつれてその光景が目に浮かび、思わず笑ってしまう。
 「理系のゼミでは、卒業論文のテーマを選ぶ時に、先生が用意したテーマの中から選ぶ」という話を読んで、文系では、卒業論文のテーマなどは自分で決めることが多いため、その違いに驚いた。

【心に残った言葉、キーワード】
「実験が失敗したら大喜びしなさい」…予想とは違う結果が出たら、そこにはまだも知らない何かが隠れている。
「初めから重要だった研究はない」…今、重要だと思われている研究だって、みんな誰かが重要なものにしたのだ。