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植松努著 『NASAより宇宙に近い町工場 : 僕らのロケットが飛んだ』

 

 

知能情報学部 4年生 船本 敬人さんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名 : NASAより宇宙に近い町工場 : 僕らのロケットが飛んだ
著者 : 植松努

出版社:ディスカヴァー・トゥエンティワン
出版年:2015

宇宙やロケットと聞くと、多くの人はNASAのような巨大な研究機関や特別に優秀な人だけが関われる世界を思い浮かべるだろう。しかし本書は、そのような固定観念を大きく覆す内容となっている。北海道の小さな町工場から宇宙開発に挑戦した実話が描かれており、「夢や挑戦は遠い存在ではない」ということを強く感じさせられた。

本書では、著者が経営する町工場が人工衛星や探査機に使われる部品を製作するようになるまでの過程が語られている。ミクロン単位の精度が求められる加工や極低温・高温といった過酷な環境に耐える技術など高度な内容が扱われているが、難しい専門用語は少なくて技術に詳しくない読者でも理解しやすい構成になっている。また、成功の話だけでなく、資金不足、失敗、周囲からの反対といった現実的な困難についても率直に描かれており、挑戦の厳しさがリアルに伝わってくる。

本書で特に印象に残ったのは、著者が繰り返し述べている「どうせ無理」という言葉への疑問である。周囲の大人や社会が無意識に発するこの言葉が若い人の挑戦する気持ちを奪ってしまうことを著者は自身の経験を通して訴えている。町工場という限られた環境であっても、工夫と努力を重ねることで世界に通用する仕事ができるという事実は将来や進路に悩みやすい大学生に対して大きな励ましになると感じた。

本書は宇宙開発をテーマにしながらも、その本質は「挑戦する姿勢の大切さ」にある。特別な才能や恵まれた環境がなければ夢は叶わないという考えを否定し、まず行動することの重要性を教えてくれる一冊である。特に、失敗を恐れずに挑戦を続ける姿勢や身近な場所からでも大きな目標に向かえるというメッセージは学生生活の中で進路や将来について考える機会の多い大学生にとって強く心に残るものだろう。読み終えた後に自分の中にある「できない理由」や「どうせ無理」という考えを見つめ直し、一歩踏み出してみようと思わせてくれる点に本書の大きな価値があると感じた。

パウロ・コエーリョ著 『アルケミスト』

 

 

知能情報学部 4年生 船本 敬人さんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名 : アルケミスト
著者 : パウロ・コエーリョ著 ; 山川紘矢, 山川亜希子訳

出版社:KADOKAWA
出版年:2014

人は誰でも一度は「自分はこのままでいいのだろうか」「本当にやりたいことは何だろうか」と考えた経験があると思う。『アルケミスト』は、そのような人生の問いを難しい言葉ではなく、一人の少年の旅の物語として描いた作品である。物語形式で書かれているため読みやすく、普段あまり本を読まない人でも最後まで読み進めやすい一冊だと感じた。

本書の主人公は、羊飼いの少年サンチャゴである。彼は夢に見た「宝物」を求めて旅に出る決意をし、スペインからアフリカの砂漠へと向かう。その旅の中で王、商人、錬金術師などのさまざまな人物と出会って多くの言葉や経験を通して成長していく。物語自体はとてもシンプルでありながら運命、選択、失敗の意味などの人生に関わるテーマが随所に散りばめられている点が印象的であった。

本書で特に心に残ったのは「本当に望んでいることに正直であることの大切さ」が繰り返し描かれている点である。サンチャゴは旅の途中で何度も迷いや不安を抱くが、そのたびに自分の心の声に向き合って前に進む選択をしていく。その姿は、進路や将来について悩むことの多い大学生の姿と重なる部分が多いと感じた。また、本書では失敗や遠回りも無駄ではなく、それ自体が意味を持つ経験として描かれており「うまくいかない時間」にも価値があるという考え方は印象的であった。

『アルケミスト』は、成功の方法を具体的に教える本ではない。しかし、何かに挑戦することや自分の気持ちを信じて行動することの重要性を物語を通して静かに伝えてくれる作品である。読み終えた後には、自分自身の目標やこれから何を大切にして生きていきたいのかを自然と考えさせられた。特に、日常生活の中で見過ごしがちな小さな選択や出会いが将来につながっていくという視点は印象深く、普段の行動を振り返るきっかけにもなった。人生に迷いを感じている人や新しい一歩を踏み出すことに不安を抱いている人にとって、心に残る一冊であると感じた。

 

望月麻衣著 『満月珈琲店の星詠み』

 

 

法学部 2年生 Iさんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名 : 満月珈琲店の星詠み
著者 : 望月麻衣著 ; 桜田千尋画

出版社:文藝春秋
出版年:2020

この物語は桜田千尋という方の『満月珈琲店』というイラスト集にインスピレーションを受けて書き下ろされた小説という珍しい特徴がある。そのため作中に出てくるメニューもフルカラーイラストで見る事ができ、より一層物語に没入することができる。皆さんぜひ満月珈琲店で調べてみてほしい。とても綺麗でかつ気分が落ち着く優しいイラストが見られる。

満月の夜限定で色んな場所に気まぐれに現れるという、喫茶店「満月珈琲店」では、直立歩行の巨大な猫のマスターと店員が働いており、それぞれのお客さんにぴったりな極上のスイーツとドリンクでお客さんをもてなす。そんな店に導かれた様々な人々の視点で物語が紡がれていく。スランプに陥ってしまったシナリオライターや不倫しそうになったディレクター、恋する実業家など幅広い。しかしそれぞれに共通点がありリンクしていく。彼らの共通点は何で、どうしてこの店に導かれたのか是非読んでみてほしい。

この話のモチーフの一つに占星術がある。そもそも作者さんが占星術を信じ、それに従って行動する人であり、本作では西洋占星術講師の監修も入っているため、作中で猫のマスターが占星術を行うが、その内容はとても本格的で面白い。占星術という言葉は知っていてもその内容など全く知らなかったので、理解が少し難しかったが非常に興味深くおもしろかった。特に作中の「四千年前の人間も現代の人間も、知識量に差に差はあっても、創造性や思考力に差があるわけではない。当時の人はそれを占星術に注ぎ込んだのです。それは占いではなく、学問つまり科学でした。」という会話は今までの自分の偏見が変わる物だった。占星術や神学や蘭学など当時の最先端の学問もリスペクトすべきだと思った。

またクラシック音楽もこの物語のキーの一つで、様々な名曲が出てくる。「愛のあいさつ」や「悲愴」などでこれを機に聞いてみるとより物語の中に入って登場人物の心情がわかるような気分になれた。心が休まる時間となるので疲れた時に是非読んでほしい。

夕木春央著 『方舟』

 

 

法学部 2年生 Iさんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名 : 方舟
著者 : 夕木春央

出版社:講談社
出版年:2024

本作品は10人の人間が閉鎖空間に閉じ込められ、殺人事件が起こるというミステリー作品でよく見られる状況から始まる。しかしここからが従来のミステリーと違うところで、この空間にはタイムリミットがあり、それを超えてその中にいると死んでしまう。その閉鎖空間から脱出するためには誰か1人の命を犠牲にする必要がある。「その1人は殺人犯であるべきだ」と全員一致で決まり犯人探しが始まる。そんな中で殺人事件が立て続けに起こってしまう。そんなことをすれば更に証拠が増え、犯人だとばれる確率が増えて、生贄になる確率が上がるのに何故か?手掛かりが増えるので新たな殺人を心のどこかで喜んでしまうほど追い詰められた極限状態の人々が描かれる。

10人が閉じ込められた場所は方舟と呼ばれる3層構造の地下施設であり、出入り口への道が岩に塞がれている。更に地下水が流入し始め一週間で方舟全体が水没してしまう。岩をどかすギミックを発見したが、どかした人は方舟から出られなくなるというまさしく生贄になってしまう。そんな中起こる目的の分からない殺人事件たち。犯人はなぜそんなことをするのか、そして犯人はだれなのか主人公の柊一の視点で物語は進む。

人々のタイムリミットが近づく中での心情の変化や、地下という昼夜もわからず新鮮な空気も吸えない息苦しさ、仲間の中に潜んでいるはずの殺人犯への恐怖がとても秀逸に描かれていて、読んでいて怖く息苦しくなりながらもページをめくる手が止まらなかった。

この話の結末の衝撃は凄まじく、暫くそれは収まらなかった。私が今まで読んできたミステリー小説は結末を知るとスッキリとするような感覚になることが多かったため、この作品は異質であり、これからもふとした時に思い出すようなインパクトを残していった。ぜひともいろんな人に読んでもらいその感想を聞きたい作品であり、ミステリーを読む人、あまり読まない人どちらにもおおすめできる一冊である。

フランツ・カフカ著 『変身』

 

 

知能情報学部 3年生 Sさんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名 : 変身
著者 : フランツ・カフカ [著] ; 高橋 義孝訳

出版社:新潮社
出版年:1952

フランツ・カフカの『変身』は、ある朝突然巨大な虫に変わってしまったグレゴール・ザムザの姿を通して、人間の存在価値や社会との関係を鋭く描いた作品である。本作の特徴は、非現実的な
設定が冒頭から提示されるにもかかわらず、その原因や理由が一切説明されない点にある。この不条理さこそが、読者に強い違和感と問いを投げかける。

グレゴールは家族を養うために働く存在であり、虫に変身した後もまず仕事の遅刻を気にする。
この姿から、彼が一人の人間としてではなく「役割」として生きてきたことが分かる。変身によって労働能力を失った瞬間、家族の態度は徐々に冷淡なものへと変わり、彼は家族の中でも不要な存在となっていく。ここには、人間が社会や家族の中で「役に立つかどうか」によって評価される残酷な現実が表れている。

また、グレゴール自身も最後まで強く抵抗することなく、状況を受け入れていく。この態度は、彼
がすでに人間であった頃から抑圧された生活を送っており、自我を持つことを諦めていたことを示していると考えられる。つまり、虫への変身は突然の出来事でありながら、精神的には以前から「人間らしさ」を失っていたとも言える。

『変身』は単なる怪奇小説ではなく、近代社会における労働、家族、孤独といった問題を象徴的に
描いた作品である。カフカは極端な設定を用いることで、人間が社会の中でどれほど簡単に疎外
され、存在を否定されうるかを読者に突きつけている。本作は現代においてもなお、人間の価値
とは何かを考えさせる力を持つ作品である。

夏目漱石著 『こころ』

 

 

知能情報学部 3年生 Sさんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名 : こころ
著者 : 夏目漱石

出版社:新潮社
出版年:1914

夏目漱石の『こころ』は、「先生」と「私」、そして「K」を中心に、人間の内面に潜む孤独や罪悪感を描いた作品である。私がこの作品に興味を持ったきっかけは、高校生の時に国語の教科書で一部を読んだことである。教科書では物語の一部分しか扱われていなかったが、先生の謎めいた態度や重苦しい雰囲気に惹かれ、全文を読んでみたいと感じた。そこで改めて作品を通読し、その印象は大きく変化した。

物語前半では、「私」が先生に強い関心を抱き、たびたび訪問する様子が描かれる。先生は知的
でありながらも人との距離を保ち、世間や他者をどこか信用していないように見える。この姿は、
高校生の頃には単に「暗い人物」という印象でしかなかったが、読み進めるにつれて、人間関係
の中で傷つくことを恐れる姿であると理解できるようになった。

物語後半で明かされる先生の過去、とりわけ K の死に対する罪悪感は、本作の核心である。先
生は自分の幸福を優先した結果、友人を死に追いやったという意識を生涯抱え続ける。その罪
の重さが、先生を孤独へと追い込み、最終的な選択へと向かわせたと考えられる。この部分は、
高校生の頃には理解しきれなかったが、大学生となった今読むことで、人間のエゴや弱さとして
現実味をもって感じられた。

また、明治天皇の崩御と乃木希典の殉死は、時代の終わりを象徴する出来事として描かれてい
る。先生の死は、近代化の中で生き方を見失った一人の人間の悲劇であり、時代とのずれを抱
えた存在の象徴とも言える。

『こころ』は、成長や立場の変化によって受け取り方が変わる作品である。高校生の時に感じた
違和感が、大学生になった今では人間理解へとつながり、この作品が長く読み継がれてきた理
由を実感した。