月別アーカイブ: 2017年11月

平井健介著 (経済学部) 『砂糖の帝国 : 日本植民地とアジア市場』

<教員自著紹介>
  「台湾や韓国の経済発展は日本の植民地支配のおかげである」。この説明は、日本の植民地支配を正当化する際にしばしば持ち出されます。「支配によって発展できた」というのは絶望的ではありますが、本当にそうだったのかもしれません。どちらなのでしょう?本書は、日本植民地で最大の産業であった製糖業を事例に、日本植民地とアジア地域の相互連関の存在を証明することで、この問いに挑戦した研究書です。

■『砂糖の帝国 : 日本植民地とアジア市場
■平井健介 東京大学出版会,2017年9月
■請求記号 588.1//2017
■配架場所 図書館1F 教員著作
■著者所属 経済学部 准教授

 

【平井先生おすすめの関連図書】

①日本の植民地支配の功罪を考えたい人に
   マーク・ピーティー著 ; 浅野豊美訳『植民地 』読売新聞社、1996年
   藤原辰史『稲の大東亜共栄圏」』吉川弘文館、2012年

②世界史において「砂糖」がもたらした影響について
   シドニー・W・ミンツ著 ; 川北稔, 和田光弘訳『甘さと権力』平凡社、1988年
   エリザベス・アボット著 ; 樋口幸子訳『砂糖の歴史』河出書房新社、2011年

 

【その他 平井先生の最近の執筆文献】

①平井健介(2015)「甘蔗作における「施肥の高度化」と殖産政策」須永徳武編著『植民地台湾の経済基盤と産業』日本経済評論社

②Hirai, Kensuke (2016), “the peasant’s dilemma: finance and fraud problems in purchasing fertilizer in Taiwan (1910-1930s),” in Sawai, Minoru (ed.), Economic Activities under the Japanese Colonial Empire (Monograph Series of the Socio-Economic History Society, Japan), Tokyo: Springer.

③Hirai, Kensuke (2017), “two paths toward raising quality: fertilizer use in rice and sugarcane in colonial Taiwan (1895-1945),” in Furuta, Kazuko and Grove, Linda (eds.), Imitation, Counterfeiting and the Quality of Goods in Modern Asian History, Tokyo: Springer.

④Hirai, Kensuke (2017), “assimilation and industrialization: the demand for soap in colonial Taiwan,” in Furuta, Kazuko and Grove, Linda (eds.), Imitation, Counterfeiting and the Quality of Goods in Modern Asian History, Tokyo: Springer.
     

杉本直己編著 (先端生命工学研究所) 『生体分子化学 : 基礎から応用まで』

<教員自著紹介>
 本書は、生体機能を担う重要な分子の構造、物性および反応を理解すること、さらにそれらの生体分子の活性を制御できることを学ぶ、「生体分子化学」の教科書である。大学学部生だけでなく、大学院生や若手研究者も、読者になりえることを想定して執筆している。本書を使って生体分子化学を学習する上で、最も重要な点は以下の2点である。

(1)化学の基礎を学び、生体分子に応用する
 まずは1章で本書の全体像を把握し、次に2,3,4章で有機化学、高分子化学、物理化学などの生体分子を扱うのに必須の化学的基礎概念と手法を学ぶ。いよいよ、それらの基盤化学を、5章以下で各生体分子に応用し、その分子の構造、物性および反応を理解するのである。新しい知見なども豊富に出てくる。従来の常識だけでなく、新たな常識や“非常識”も同様に学んでほしい。そして、読者が新しい素晴らしい課題を見つけ研究を始めるきっかけにしてほしい。

(2)歴史を学び、未来を知る
 学ぶことは、知識を学ぶことだけでなく、優れた先人研究者の発想や知恵をも学ぶことを意味している。その発想や知恵を、読者がいかに自分のやりたい未来のテーマで参考にできるかが重要である。そこで、各所に卓越した先人研究者の発想、業績、逸話などを写真などとともに紹介した。その先人研究者になったつもりで、生体分子化学を学んでほしい。

■『生体分子化学 : 基礎から応用まで = biomolecular chemistry
■杉本 直己 編著 講談社,2017年1月
■請求記号 464//2268
■配架場所 図書館1F 教員著作
■著者所属 先端生命工学研究所 教授

*先端生命工学研究所の遠藤 玉樹 准教授(6章)、髙橋 俊太郎 講師(3章)、
  建石 寿枝 講師(5章)も執筆されています。

『職場体験』活動報告

 11月14日(火)~11月16日(木)の3日間、立命館中学校の生徒3名を職場体験で受け入れました。図書館業務の概要を説明ののち、実際に業務を行っていただきました。

 

 貸出・返却などのカウンター業務、レファレンスや書皮(ブックカバー)・レビューの作成など、彼らが想像していた業務や、より専門的な業務もとても興味深く実践していました。
 また、カウンターでの利用者対応や、カウンター業務では見えない図書館の裏側の整理業務など、司書という仕事を知り関心を持っていただいたようです。
 なお、作成の書皮は図書館1階カウンター前に、レビューは2階中山文庫コーナーに設置しています。皆さん、ご自由にご利用ください。

トライやる・ウィーク2017

 11/6(月)~11/10(金)までの5日間、神戸市立本山南中学校2年生3名を受け入れました。
 カウンター業務をはじめ、図書や雑誌の受入・配架など、図書館で様々な業務を体験しました。ひとりひとりが積極的に取り組む姿勢に、スタッフも刺激をうけました。

 中学生作成のレビューは図書館2F中山文庫コーナーと語学学習室にそれぞれ展示しています。おすすめ本は貸出もできますので、ぜひ手にとってご覧ください。
 また、甲南大学オリジナルのブックカバーの作成も行いました。素敵な作品に仕上がったブックカバーは、図書館1Fカウンター前で提供しています。

伊藤朋子著 (文学部) 『チーム学校に求められる教師の役割・職務とは何か』

<教員自著紹介>
  
本書は、平成26年12月22日、中央教育審議会答申「子供の発達や学習者の意欲・能力等に応じた柔軟かつ効果的な教育システムの構築について」、平成27年12月21日、中央教育審議会答申「チームとしての学校の在り方と今後の改善方策について」、平成29年3月以降の「幼稚園教育要領」、「小学校学習要領」、「中学校学習指導要領」「高等学校学習指導要領」、「特別支援学校学習指導要領」の告示などを踏まえた、「これから求められる教職の在り方」を追究したものである。
 新しい時代に必要となる子供の資質能力の育成とは、「何を知っているか、何ができるか(知識・技能)」であり、「知っていること・できることをどう使うか(思考力・判断力・表現力)」である。こうした方向性を決定づけるのは、情意や態度である。すなわち、主体的な学習態度や学習意欲、自己の感情や行動を統制する能力など、いわゆるメタ認知に関するものと、多様性・協働性、持続可能な社会作り、リーダーシップ・チームワーク、感性・思いやりなどの人間性に関するものである。これらは「どのように社会・世界と関わり、よりよい人生を送るか」の言葉に集約される。この資質能力を確実に身につけるには、「どのように学ぶか(アクティーヴ・ラーニング)」であり、子供に対する学習評価の充実である。すなわち、評価(Check)→改善行動(Action) →計画(教育課程編成:Plan)→実行(Do)→評価(Check)→…という組織的、協働的なカリキュラム・サイクルの充実、いわゆるカリキュラム・マネジメントの充実を図らなければならない。こうした観点を踏まえて、各章を展開している。

■『チーム学校に求められる教師の役割・職務とは何か
■石村卓也, 伊藤朋子 晃洋書房,2017年10月
■請求記号 374.3//2130
■配架場所 図書館1F シラバス
■著者所属 文学部 教授