月別アーカイブ: 2022年9月

[藤棚ONLINE]経営学部・若林公美先生 推薦『稲盛和夫の実学』

図書館報『藤棚ONLINE』
経営学部・若林公美先生 推薦
『稲盛和夫の実学―経営と会計』

 2022年8月24日、京セラの創業者である稲盛和夫が逝去された。日本経済新聞をはじめ、各種のメディアで大きく取り上げられ、「カリスマ経営者」として松下電器(現パナソニック)を創業した松下幸之助氏と並び称されたことからも、稲盛氏の企業経営に与えた影響の大きさをうかがい知ることができるだろう。

 稲盛氏といえば、京セラの「アメーバ経営」やそれによる日本航空(JAL)の再建を想起する。京セラは急成長のなか、肥大化していく組織を事業展開にあわせて小さな組織に分割し、各組織があたかも1つの中小企業のように自らの意思と責任で事業展開ができるようにした。これを「アメーバ経営」という。「アメーバ経営」と併せて、従業員の行動を規律づける「フィロソフィ教育」が、あたかも車の両輪の機能を果たし、京セラを売上1兆円を超える高収益企業に導いたといわれる。

 実は,稲盛氏の数ある著書の1つに,私の専門分野である会計にまつわるものがある。その著書、「稲盛和夫の実学―経営と会計」(日本経済新聞社)に、「経営者たるもの会計がわからんで経営ができるか!」という言葉がある。かくいう稲盛氏自身も創業当初、会計については全くの門外漢であったという。その稲盛氏がいかに会計に精通し経営者として成功を遂げたのか、その一端を知ることができる名著である。将来のビジネスパーソンを目指す人もそうでない人も、「人としてどうあるべきか」ということを考えつつ、ぜひ一読してほしい。

エントランス展示更新 「芸術の秋~江戸時代の絵画~」

本日、エントランス展示を更新しました。題して「芸術の秋~江戸時代の絵画~」です。
最近は空気も冷え込み、すっかり秋めいてまいりました。
本格的な秋到来に先駆けて芸術の秋を楽しもうということで、今回は有名だけど意外と知らないであろう「江戸時代の絵画」に焦点を当ててみました。
葛飾北斎や円山応挙など、有名な作品とそれらに関連する本を展示していますので、ぜひお立ち寄りくださいませ。
展示本を読みたいときは、図書館2階ヘルプデスクまでお申し出ください。

貴重書庫にある和本の整理作業を行いました

9月2日、6日、8日、12日の4日間、KONANライブラリサーティフィケイト参加の学生と、博物館学芸員過程の学生にご協力いただき、和本の整理作業を行いました。

貴重書庫にあるので普段お目にかける機会がなかなかありませんが、図書館には、江戸から明治期に発行された所謂「和本」も沢山あります。

寄贈していただいたり、研究室から戻ってきたりして量が増え、従来の場所に収まらなくなってしまったので、整理することになりました。

資料の状態を確認しながら、配架順の番号を書いた栞を、原本に影響を与えにくい中性紙製のものに差し替えます。

糸が切れてばらばらになりそうな本は、薄葉紙で巻いておきます。

また、7月に対策を施した寄贈資料の箱をあけ、クリーニング作業を行いました。
7月14日の和本の虫やカビ対策作業の様子はこちら

 

参加して下さった学生さんの感想です

**マネジメント創造学部 2年生 広瀬 翔鶴さん**
「なかなか経験できない貴重書の整理をボランティアとして参加させていただき、温かい雰囲気の中活動できたことはすごくいい経験になりました。また機会があれば参加させていただきます。本当にお世話になりました。有難うございました。」

**文学部 4年生 町田 和香奈さん**
「今回は貴重な体験をさせて頂き、ありがとうございました。今後もよろしくお願いいたします。」

**文学部 4年生 伊藤 明菜さん**
「貴重な作業であった事はもちろん、楽しく作業できたのは、皆さんが笑顔で優しく接してくださったおかげです。お忙しい中、貴重で楽しい体験をさせて頂き、誠にありがとうございます。」

**文学部 2年生 河崎 新之助さん**
「図書館の中にこのような場所があると初めて知りました。普段触れる事のない貴重な資料を見ることが出来て良かったです。」

**知能情報学部 1年生 Oさん**
「日本史で学んだ有名な資料のタイトルを見るとこれは!と声が出ました。貴重な資料に触れる事ができて良い経験となりました。」

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今回は、気を遣う細かい手作業から力仕事まで様々な事をお願いしましたが、皆さん、本当に意欲的に楽しんで取り組んでいただき、私たちも一緒に楽しく作業を進められ、本当に感謝しています。

みなさまのお陰で、貴重書庫が綺麗になりました。ありがとうございました!!

[藤棚ONLINE]法学部・濱谷和生先生 推薦『THINK AGAIN』

図書館報『藤棚ONLINE』
法学部・濱谷和生 先生 推薦
『THINK AGAIN : 発想を変える、思い込みを手放す』

 この6月あたり、私は大学でのある仕事やある授業クラスの運営について、どうすればもっと有意義に、かつ、建設的に行っていけるかについて相当深く悩んでいた。本書は、そんなとき、本屋の新刊コーナーでふと手にして、深い感銘を受けた一般書である。

 日常生活、仕事や勉強においてタスクや物事に関わる困難に直面するとき、私たちはよく「自分を変えなきゃ」とか、「自分を進化させよう!」等のフレーズを聴く。でも、実際にどうすれば自分の思考や行動を自覚的に変革できて、また、自分の属性を意識敵に進化させることができるかは、さほど上手に実践できるわけでない。この本は、そんな悩みに方法上の具体的なヒントを与え、思考や行動の変革に向けた動機付けをもたらしてくれる。

 本書に依れば、自分を進化させるための要諦は、あたかも不動・不変であるかのように自ら刷り込んでしまっている従来の思考や行動の様式を疑って「発想を変え」、自分と自分に関わる物事やタスクを縛っている「思い込みを手放す」ことにある。だが、個人的に思うに、それが未来志向であったとしても、誰しもいまの自分のありかを自ら崩す、あるいは外部から強制的に崩されるのは尚更に、直感的にとても怖い。認知的に暗闇のなか徒手空拳で前に歩くことは恐怖以外の何物でもなく、これは言うは易く行うに難いのだ。

  しかし、組織心理学・経営学の著名な研究者であるこの本の著者は、様々な市井の人々の苦闘・奮闘に係る幾多のエピソードを引いて、その方法論を具体的・実践的に指南してくれる。例えば、自分の思考モードを再考するには、「思考の盲点」に気づき、また、自分の「間違いの発見に喜び」を感じるようにと言う。あるいは、他者との対話においては、「敵」ではなく「ダンスの相手」と思って、「穏やかな傾聴」に他者の心を開くチャンスがあると述べる。また、学び、再考し続ける社会・組織を構築していくには、「批判的に考察」し「建設的に論じる」こと、「過ちから学べる組織」を作り上げることが重要であると促す。

 本書を読んだからと言って、冒頭に述べた私の悩みが直ちに雲散霧消して、私の思考や行動が一気に変革され、私に人格的進化が顕著にもたらされたはずは、もちろんない(いまも悩み続けている)。ただし、この本の読後、私は、自分の思考や行動の基点、その過程および結果や成果を少しは客観視することに努め、他者からの批判や見解にいっそう耳を傾け、過ちの発生自体をおそれるのではなく、それを見て見ぬ振りをしてまたはそれに気づかず放置してしまうことの方により注意を払うようには、なってきたかも知れない。

 思い返すに、2016年末の米国トランプ前大統領当選以降、Brexit、核兵器禁止条約の成立と発効、新型コロナウィルスの感染拡大、ウクライナへのロシア軍侵略、そしてマネーの世界的な過剰供給からインフレ経済への急激な移行等々、「これまでかくかくであったから、これからもしかじかであろう」というたいていの経験則は最早成り立ちにくくなってしまった。私たちは見通しが極めて不透明・不確実で、混迷が深まる一方の世界に置かれていると、馬齢を重ねるまま61歳に至ってしまった私はしみじみ実感している。

 さような時代状況の只中で、本書を読んで、私は、自ら描いてきた過去の軌跡の延長上に未来の自分を据える必然は何もなくて、本当におそれるべきは頑迷固陋に自分を変えない自分自身、自分を進化できない・させられないままに固定化してしまう自分自身なのだ、と分かった気がする。己を不断に更新することに向けられる高い志(社会や組織、授業クラスの理想像や夢)、それを持続的に追求する逞しく粘り強い日々の努力、そしてそれらを支える簡単に折れない心(あるいは深い知的洞察に支えられた勇気と胆力)。こうした態度・姿勢や価値をこれからも大切にしていきたい。また、この本を通じてそのエッセンスをこの場の読者の皆さんにもお伝えできたらばと念願し、本書をご推薦申し上げたい。