月別アーカイブ: 2023年9月

文学部 田中 雅史先生へのインタビュー

文学部4生 Sさんが、文学部 田中 雅史先生にインタビューを行いました。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

 

Q.  本はよく読まれますか。

A.学生の発表題材、論文の参考文献、趣味の本など様々読んでいます。学生時代は月30冊ほど読んでいました。古本屋で本を買って、両手にたくさん持ってそのまま喫茶店へ行っていました。下宿先も本でいっぱいで、まるで地層のようでした。

 

Q. これまで本を読んできた中で印象に残った本はありますか。

A. 大学時代に読んだ『迷宮と神話』(1996,カール・ケレーニイ著,種村季弘,藤川芳朗訳,弘文堂)です。迷宮が人間の心理のようなもので、通過儀礼(イニシエーション)、つまり古い自分を捨てて、新しい自分になることが印象的でした。本ではギリシャ神話の通過儀礼が紹介されていますが、今ではバンジージャンプという遊びに変わっていますね(笑)

 

Q.ゼミでは村上春樹の作品を多く読んできました。村上春樹との出会いはどのようなものだったのでしょうか。

A. 大学時代は、名前は知っていてお洒落で軽い文学だというイメージはあったのですが、甲南大学に赴任してきてたまたま『ねじまき鳥クロニクル』(1997,村上春樹,新潮文庫)を見つけました。研究していた、前エディプス期と似通う所があったのがきっかけです。

 

Q. 読書の魅力は何だと思われますか。

A. 年齢によって変わってきます。小さい頃は、現実からちょっと離れて息抜きできる点です。おやつを食べながら、児童書を読んでいた時間が好きで、『ふしぎな虫たちの国』(1975,シーラ・ムーン作,山本俊子訳,冨山房)がお気に入りでした。

 大学時代は、今まで読んできたものには意味があって、現実に繋がっているものとして見直せた点。現在は、没頭して異世界に触れられる点。異世界と言っても、現実から逃避するのではなく、現実を楽しむために異世界に入ることが大事だと思っています。

 

Q. 田中先生が学生におすすめする本があれば、教えてください。.

A. 最近執筆した『ナルシシズムの力―村上春樹からまどマギまでー』(2023,田中雅史,新典社)です。あとは十二国記ですかね。授業では扱いますが、『月の影 影の海』(2012,小野不由美,新潮文庫)『魔性の子』(2012,小野不由美,新潮文庫)がお薦めです。

 

感想:学生時代の古本屋で本を買い、そのまま喫茶店に入って読む習慣がお洒落だと感じました。本の世界の主人公が異世界に迷い込み、抜け出して成長するというテーマはとても興味深かったです。人でも、本を読んだ後は、読む前より視野が広がる感じがして、似ている気がしました。

(インタビュアー: 文学部4生 Sさん

田中雅史(文学部)『ナルシシズムの力 : 村上春樹からまどマギまで』

 

 

<教員自著紹介>

この本では、文学やアニメ・マンガにみられるナルシシズムについて、村上春樹、小野不由美の十二国記、ジブリアニメ、さらにはまどマギ、カイジなど比較的最近の話題作まで取り上げて考察します。

こうした作品には、喪失感・全能感などの心理が描かれていますが、それらは幼児期のナルシシズムと比較することで深く読み解くことができます。

ぜひ読んでみてください。

ナルシシズムの力 : 村上春樹からまどマギまで 』
■ 田中雅史著, 東京 : 新典社 , 2023.8

■ 請求記号 910.265//2010
■ 配架場所  図書館   1F 教員著作
■ 著者所属  田中雅史(文学部)

[藤棚ONLINE]知能情報学部・田中雅博先生コラム「本学図書館の入館システムを作りました」

図書館報『藤棚ONLINE』
知能情報学部・田中雅博先生コラム「本学図書館の入館システムを作りました」

 図書館入り口の入館の際に、通常のカードタッチの横に別のカードリーダーが設置されていて、「それもタッチしてください」という表示が、3月頃から7月末まで続きました。入館される皆さんは、よくわからないけど何か面倒だなと思っていたのではないかと思います。
 8月以後、扉を常時開放状態にする、新しい入館システムに変更になりました。現在は、旧システムを停止させ、ゲートは常にオープンな図書館になっています!

 入館時にはゲートの上に設置してあるカードリーダーにIDカードをタッチしていただき、そのまま通過してください。カードを読み取れれば読み取り成功音が出されます。カードから個人IDを読み取り、それに従って3つのメッセージ、すなわち(1)図書館からの一律のメッセージ、(2)学部ごとのメッセージ、(3)個人ごとのメッセージ(ない場合は、ここにも別の一律メッセージ)がカードタッチ後、一定時間表示されます。カウンターから呼び出しがある方は、音声メッセージも出ます。別のセンサーで通過確認をしており、通過時にも音がでます。一方、IDカードを使わずに入館した場合は、ブブーという音で警告のメッセージが出ます。また、入館ゲートから退館しようとした場合も同じく音が出ます。音と表示がいろいろ出るようになっていますから、よく確認してください。カードが別の大学のものであったり、期限切れ、再発行時に無効になったカードなどを検知したりしたときはエラー表示がなされます。同じカードを続けて読ませようとしたら、しばらく動作しませんので、注意してください(一度のタッチで複数回読み取る誤動作を避けるための措置ですので)。手作りですから、さらに今後、機能を追加したり、図書館システムと連携させたりすることも原理的には可能です。

 大学が業務として使うシステムを、教員あるいは学生を含む研究室が作るというのはあまり例がないかもしれませんが、実は大学は、大学が必要とするものを中の教員や学生らが作ってそれを実験してみるという格好の場だと思っています(本システムづくりには学生は参加していませんが)。

 私の研究室では、7~8年前から数年前頃、同じく図書館入り口にKoRo(コロ)という、ディスプレイとインタラクティブに手の動作で指示を出し、Leap Motionというセンサーでそれを読み取り、動画を自動選択して進行する図書館館内案内、さらに、入館者自動検知、ディープラーニングによる顔認証、スクレイピングによる電車の遅延情報提供や気象情報の提示と、季節や天候に基づく俳句の提示、体操判定、ロボット音声での返答をする図書館職員との音声通話など、多種多様な機能を盛り込んだロボットを作って置かせてもらっていました(KoRoのボディは和田先生が主体的に設計して作られたものです(現在は、13号館玄関にあります。「KoRo、どこに行ったのかな?」と思っている方、是非13号館に来てみてください。会えますよ!)。KoRoの場合は、図書館自身の必要性というよりも、無理を言って置かせてもらったという感じでしたが、その時も図書館にはご理解いただき、当方の研究室アクティビティは大いに高まりました。設置場所も動線の脇にあって、無視すれば何も気にしなくてよいものでした。それに比べれば、この入館システムは単機能で技術的にも特段の新規性はありませんが、これを使わなければ図書館には入館許可がおりないという、図書館が必要としている業務用のシステムであるという点がKoRoとは根本的に異なっています。大学は、このように、実験の場として、あるいは、さらに、業務への応用の場として利用が可能であることを示すことができました。

 振り返ってみるに、知能情報に限らず、それぞれの学部では、研究している内容が大学そのものに関係づけられるものもいろいろあると思います。大学そのものを研究・実験対象として利用することもできる「中規模」大学の良さを本システムの開発を通じて実感じました。

 なお、手作りですから、いろいろ粗もあると思います。何かお気づきのことがあれば、是非知らせてください。可能な範囲で改良を続けていきたいと思います。