
知能情報学部 4年生 Iさんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)
書名 : 小説君の名は。
著者 : 新海誠著
出版社:KADOKAWA
出版年:2016年
新海誠による小説『君の名は。』は、身体が入れ替わるという非日常的な設定を通して、人と人とのつながりや運命の不思議さを描いた作品です。物語は、東京で暮らす男子高校生・瀧と、山深い田舎町で暮らす女子高校生・三葉が、ある日突然入れ替わるという出来事から始まります。二人は理由も分からないまま互いの生活を体験することになり、最初は混乱しながらも、スマートフォンのメモや日記を使って情報を残し合い、徐々に相手の存在を受け入れていきます。
小説版の大きな魅力は、登場人物の内面描写が非常に丁寧に描かれている点です。映画では映像や音楽によって表現されていた感情の変化が、文章によって具体的に言葉として表されており、瀧と三葉それぞれの不安や期待、戸惑いがより深く伝わってきます。特に、自分ではない誰かとして日常を過ごす中で生まれる違和感や、次第に相手を思いやる気持ちが芽生えていく過程は、小説ならではの説得力を持っています。
物語が進むにつれて、時間や記憶に関わる重大な事実が明らかになり、読者は「会いたいのに会えない」という切実な感情と向き合うことになります。それまで積み重ねられてきた何気ないやり取りが、この展開によって重みを持ち、物語全体に強い緊張感と切なさを与えています。入れ替わりという設定が、単なるファンタジーではなく、運命や選択、そして人の想いの強さを描くための重要な要素であることが印象的です。
『君の名は。』は、「名前」や「記憶」といった失われやすいものを通して、人と人がつながる意味を静かに問いかける小説です。読み終えた後には、自分自身も誰かと確かにつながっていた記憶や感情を思い返したくなる、深い余韻を残す一冊だと感じました。
