2-1. 学生オススメ」カテゴリーアーカイブ

湊かなえ著 『白ゆき姫殺人事件』

 

 

文学部 2年生 Tさんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名 : 白ゆき姫殺人事件
著者 : 湊かなえ著
出版社:集英社
出版年:2014年

私が紹介する本は、湊かなえさんの『白ゆき姫殺人事件』というミステリー小説です。化粧品会社で働く美人社員、三木典子が黒こげの遺体で発見された次の日から物語が始まります。

赤星という記者が、容疑者として浮上した三木典子の同僚、城野美姫という女性の周辺人物に取材を始めます。その周辺人物の証言によって話が進んでいきます。その証言は不確かで、城野美姫が犯人と決まったわけではないのに話を盛ったり、噂話を広げて話したりと、城野美姫という一人の女性の人物像を勝手に作り上げる自覚のない悪意で溢れています。ネット上でも、匿名により他人が好き勝手に話し、様々な憶測が飛び交い、人の自覚のない悪意がどれほど怖いのかを感じることができます。

また、この小説の面白いところは、最後まで犯人の予想ができないところです。周辺人物による証言の中の噂話に、読んでいて振り回されているなと感じました。城野美姫が犯人で違いないと思う時もあれば、殺人などしなさそうだと感じる旧友の証言もあり、犯人は城野美姫なのか、他の人なのか、最後まで予想できないところが面白かったです。

『白ゆき姫殺人事件』という作品は、事件自体に焦点が当てられるというよりかは、この事件を取り巻く様々な噂話、人々の憶測、自覚のない悪意に焦点が当てられています。自覚のない悪意は、現実のネット社会にもはびこっていると言っても過言ではなく、噂話が大きくなって、歯止めが利かなくなっていく怖さには非常にリアリティーがあり、人間の怖さが感じられる作品です。

 

伏瀬著 『転生したらスライムだった件15』

 

 

知能情報学部 4年生 Nさんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名 :転生したらスライムだった件15
著者 : 伏瀬著
出版社:GCノベルズ
出版年:2019年

「転生したらスライムだった件15」はジャンルとしては、ファンタジー、異世界転生ものに分類されるライトノベルです。この巻の魅力としては圧倒的なまでの戦闘描写とこの作品にはなくてはならない「名付け」の重要性の再認識、様々な伏線の回収にあります。

この作品には、自身のエネルギーを引き換えに魔物や物に名前を付けることで名を与えられた者と与えた者との間につながりができ、与えられた者は飛躍的に成長、または進化し、強大な力を得ることができるという設定があります。また、相互に名前を付けあうことによって対等な関係を築くこともできるという設定もあります。これらの設定がこの巻では大きく活躍しています。

この設定は第一巻目から存在しているものですが普通に読んでいるだけでは仲間を成長、進化させるために必要なプロセス、戦闘能力インフレを加速させるためのシステムとでしか認識できないがこの巻を読むことで、「名付け」の真の意味が分かってきます。この巻で主に主人公が行ったことは3つあります。1つ目が配下の悪魔の召喚、2つ目が盟友である竜種ヴェルドラを取り込む、3つ目がスキルへの名付けの以上3つのことを行いました。主人公リムルがこれらの行動を行いによって、自分を含め、周囲に与えた影響、読者に与えた影響は非常大きいと考えられます。これらの行動は、それぞれ共通点として「名付け」に影響された行動であると考えられます。逆に今までの作品の中での「名付け」を漠然と読んでいただけではそこまでの驚きはないかもしれません。しかし、再度読み直すことでなぜ、「名付け」というシステムを成長、進化のためのプロセスに組み込んだのかが分かる巻となっています。

これらのことを総じて「転生したらスライムだった件」第15巻は、今までの作品の中で重要だったことを再認識させてくれる作品だと考えられます。ぜひ読んでみてください。

 

伏瀬著 『転生したらスライムだった件1』

 

 

知能情報学部 4年生 Nさんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名 :転生したらスライムだった件1
著者 : 伏瀬著
出版社:GCノベルズ
出版年:2014年

「転生したらスライムだった件1」はジャンルとしては、ファンタジー、異世界転生ものに分類されるライトノベルです。その分類の中でもこの作品は非常にユニークな設定を持つライトノベルであり、主人公がスライムという最弱の存在に転生するところから物語が始まります。この作品は、原作を伏瀬先生が「小説なろう」に投稿したことから始まり、後に書籍化されました。

第1巻は、主人公である三上悟が異世界に転生し、「リムル・テンペスト」という名前で新しい人生をスタートさせ、様々な出会い、別れをへて成長していきます。この巻の主な魅力としてはリムルが新しい異世界での生活を順応し、様々な仲間と出会う過程にあります。特にゴブリンやドワーフ、竜種のヴェルドラとの出会いは物語の進行に大きな影響を与えます。リムルがスライムという弱い存在でありながら、その知恵や能力を駆使して問題を解決し、仲間たちに慕われていく姿は、読者に爽快感を与えていると考えます。さらに、彼が「名付け」を行うことで、周囲のキャラクターたちが強くなるという設定によって、物語に成長要素を加えており、読者に次の展開を期待させることができています。また、バトルシーンや魔法、スキルの描写も非常に詳細で、ファンタジー要素を読者が存分に楽しむことができ、飽きさせない工夫があります。

この作品のもう一つの特徴は、主人公がただ強くなるだけではなく、彼の道徳観や人間性が物語に反映されている点にあります。魔物たちの常識とリムルが人間であった時の常識のズレ、これに悩ませられながらも魔物たちと協力しながら共存しようとする姿勢が描かれており読んで面白いと感じました。これらを総じて、「転生したらスライムだった件」第1巻は、異世界転生ジャンルに新たな風を吹き込んだ作品だと考えられます。

主人公がスライムという弱い存在から始まり、仲間とともに成長していく過程は、読者に共感と楽しさを与え、次巻以降の展開にも期待を抱かせる作品ですのでぜひ読んでみてください。

島田雅彦著 『パンとサーカス』

 

 

知能情報学部 4年生 Sさんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名 :パンとサーカス
著者 : 島田雅彦著
出版社:講談社
出版年:2022年

物語は、架空の未来都市を舞台に、社会のあらゆる階層の人々の生活を描き出します。タイトルが示す通り、「パンとサーカス」は、古代ローマの政策を引き合いに出しながら、現代社会における消費文化と娯楽の役割を問いかけます。主人公たちは、表面的な楽しみや消費に没頭することで、本当に必要なものを見失いがちな現代人の象徴です。

個々のキャラクターを緻密に描写し、それぞれの人生に共感を呼び起こす力があります。主人公たちの内面の葛藤や成長、そしてそれに伴う挫折や失望を通して、読者は自らの生活を振り返り、本当に大切なものとは何かを考えさせられます。特に、物語の進行と共に明らかになる人間関係の複雑さや、社会の構造的な問題には、深い考察が込められています。

もう一つの魅力は、その文体にあります。島田雅彦は、緻密で繊細な言葉選びと、時折見せるユーモラスな表現で、読者を物語の世界に引き込みます。彼の描く未来都市は、一見すると非現実的な設定ですが、その中に潜む真実味は、読者に強烈なリアリティを感じさせます。この絶妙なバランスが、物語の魅力を一層高めています。現代社会の問題点を風刺的に描く一方で、希望や救いの要素も取り入れています。これは、単なる批判に終わらず、読者に前向きなメッセージを届けることに成功していると言えるでしょう。島田雅彦は、絶望の中にも微かな光を見出すことで、読者に考える余地を与えています。

総じて、『パンとサーカス』は、現代社会の虚栄と本質的な幸福を探る深い洞察に満ちた作品です。島田雅彦の優れた物語構成力と魅力的なキャラクター描写は、多くの読者にとって忘れられない読書体験を提供します。本書を通じて、私たちは消費社会の中で見失いがちな本当の価値について、改めて考える機会を得ることでしょう。

池井戸潤著 『下町ロケット』

 

 

知能情報学部 4年生 Sさんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名 :下町ロケット
著者 : 池井戸潤著
出版社:小学館
出版年:2013年

池井戸潤の『下町ロケット』は、2013/12/26に刊行され、日本の中小企業の奮闘を描いた感動的な物語です。

主人公の佃航平は、大手企業を辞め、父が経営していた小さな町工場「佃製作所」を継ぎます。彼の夢は、自社製のロケットエンジンを完成させ、宇宙へ飛び立つこと。しかし、現実は厳しく、会社は経営危機に瀕し、社員たちの士気も低下しています。佃は、ロケットエンジンの開発に全力を注ぎますが、次々と壁にぶつかります。大手企業との競争、資金不足、技術的な課題など、数々の困難が彼を待ち受けます。特に、大手企業の圧力に屈しそうになる場面では、佃の苦悩がリアルに描かれています。しかし、佃は諦めず、社員たちと共に困難を乗り越えていく姿が感動的です。

本書の魅力は、単なる企業小説に留まらず、人間ドラマとしても優れている点です。登場人物一人一人が持つ背景や葛藤が丁寧に描かれ、読者は彼らに共感し、応援したくなります。特に、佃のリーダーシップと信念には心を打たれます。彼は、どんなに困難な状況でも、夢を諦めず、社員を信じ抜きます。この姿勢が、社員たちの士気を高め、一丸となって挑戦する原動力となります。また、技術に対する情熱も本書の重要なテーマです。

佃製作所のエンジニアたちは、自分たちの技術に誇りを持ち、常に高みを目指しています。彼らの技術者魂が、ロケットエンジン開発という壮大な夢に結実する過程は、読み応えがあります。技術の進歩と、それを支える人々の努力が描かれることで、読者は科学技術の素晴らしさと、その背後にある人間の力を実感することができます。日本の中小企業の現状と課題をリアルに描いており、経営者やビジネスマンにとっても示唆に富む内容となっています。そのため、社会人になる前の大学生にとってもためとなる作品です。

グローバル化が進む現代社会において、小さな企業がどのようにして生き残り、発展していくのか。その答えを佃製作所の奮闘に見ることができます。

【第8回 甲南大学書評対決】 岸見一郎・古賀史健著 『嫌われる勇気』

4月24日(木)に開催された第8回 甲南大学書評対決(主催:甲南大学生活協同組合)で紹介された本です。

 

卓球部チーム 法学部2年  植村 翔太さんからのおすすめ本です。

書名 :嫌われる勇気
著者 : 岸見一郎, 古賀史健
出版社: ダイヤモンド社
出版年:2013年

植村さんは大ベストセラーになっている本、嫌われる勇気を紹介してくれました。

 

以下、植村さんからの書評です。

 

みなさんは欧米で絶大な支持を誇り、「心理学の三大巨頭」と言われるアドラー心理学という考えをご存知でしょうか?この考え方は、「どうすれば人は幸せに生きることができるか」という哲学的な問いに、きわめてシンプルかつ具体的な答えを提示するものであるのですが、少し変わった考え方をします。

一つ例をあげると、ある問題が起こった場合は原因ありきの問題ではなく、その逆である目的ありきの問題であるという考え方です。例えば、ある人に怒鳴るという行為は怒りの感情が原因として起こった行為ではなく、大声を出すために怒ったという目的をかなえるための行為であるということです。これだけだと理解しにくいかもしれませんがこの本は物語形式を用いてまとめており、理解しやすいよう作られています。

自身の考え方と差異を強く感じてしまうかもしれませんが、「本当の勇気とは何なのか」と言うことに触れるために、是非この本を手に取ってもらいたいです。

 

第8回 甲南大学書評対決、生協書籍部で実施中! | 甲南大学図書館ブログ (konan-u.ac.jp)も合わせてご覧ください!