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ヴィクトル・ユゴー著 『レ・ミゼラブル』

 

 

文学部 1年生 Oさんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名 : レ・ミゼラブル
著者 : ヴィクトル・ユゴー [著] ; 永山篤一訳
出版社:角川書店
出版年:2012

『レ・ミゼラブル』は19世紀前半のフランスを舞台とした歴史小説である。日本では過去に「あゝ無情」というタイトルで翻訳されており、そのタイトルならば聞いたことがあるという人もいるかもしれない。今回はそんな『レ・ミゼラブル』について、少しでも知ってもらうことが出来れば幸いである。

この物語は窃盗の罪を犯したジャン・ヴァルジャンが数十年間の服役を経て、出所するところから始まる。どこにも受け入れてもらえる場所は存在せず、各地を放浪する彼はディーニュにあるビアンヴニュ司教の屋敷を訪れる。司教はそんなヴァルジャンを心優しく受け入れて、一晩泊めることを快諾する。しかし長年の投獄からすっかり心が荒れていたヴァルジャンは、司教が大切にしていた銀の食器を盗み出してしまう。翌日、ヴァルジャンを連れてきた警官たちに対して、司教は「それは元々彼にあげる予定のものだった」と彼を釈放するように求める。さらに、釈放されたヴァルジャンに対して司教は残りの銀の食器、燭台を手渡し、彼にこれからは正直者であるように諭す。ヴァルジャンはそんな司教の振る舞いに感動し、心を入れ替えて生きていくことを誓うのである。

物語中には物事や社会の本質を突く言葉が数多く存在する。例えば窃盗の罪で捕まった当初、ヴァルジャンは「俺がこういった罪を犯したのは貧しさのためであり、そういった状況を許している無慈悲な人間社会に人を裁く権利はあるのか」と考える場面がある。ヴァルジャンは幼い頃に両親を亡くし、7人の子供を持つ姉の一家のもとで育った。しかし姉の夫が亡くなってからは、状況が変わってしまったため、このような盗みを犯したのだ。そこから私は、こういった過去を持つ彼を一概に悪とは言えるのだろうかと考えた。

本書には感動する場面も、また存在する。先ほど述べたヴァルジャンが改心するきっかけになった出来事もそうだ。巧みな表現で描かれた文が更にそういった感覚を助長させる。無情な社会の中でも、自分が正しいと思うことを貫くヴァルジャンの姿は、見ていてとても考えさせられる。いったい彼はどのような生涯を送るのか、実際に読んでみて、様々なことを感じて欲しい作品だ。

今村翔吾著 『イクサガミ 地』

 

 

知能情報学部 4年生 Hさんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名 : イクサガミ 地
著者 : 今村翔吾

出版社:講談社
出版年:2023

「天」の巻が「有象無象が入り乱れるカオスな乱戦」だったとすれば、この「地」の巻は「選び抜かれた怪物同士による、高度で冷酷な殺し合い」だ。
4 部作の真ん中に位置する第 2 部は、物語のつなぎ目としてテンポが落ちる、いわゆる「中だるみ」が起きがちである。しかし本作において、その懸念は完全に杞憂に終わる。舞台は東海道の中盤から、天下の険・箱根へ。参加者の人数は大幅に減ったが、その分、生き残っているのは一騎当千の修羅ばかりだ。戦闘の密度、駆け引きの知能レベル、そして殺意の純度が、前巻とは比較にならないほど跳ね上がっている。ページをめくる手が次第に重くなるほどの緊張感――まさに「地」を這いずるようなヒリヒリとした焦燥感が、読者の精神を容赦なく削ってくる。

本作の魅力は、主人公・愁二郎の成長だけにとどまらない。立ちはだかるライバルたちのキャラクター造形が、格段に深みを増している点にこそある。彼らは単なる悪役ではなく、それぞれが「譲れないもの」や「歪んだ美学」を抱えている。その信念同士が正面からぶつかり合うからこそ、命のやり取りに避けがたい悲壮なドラマが生まれるのだ。中でも、ある「凶悪な敵」との対峙は、圧倒的なアクション描写の極致でありながら、生き残ることの意味を問いかける哲学的な名シーンとして強烈な印象を残す。

さらに、デスゲームの主催者の存在、そして「蠱毒(こどく)」の真の目的といった、物語の根幹に関わる謎が、少しずつ、しかし不気味な輪郭を伴って姿を現し始める。アクションの興奮と並行して、「このゲームの裏で何が起きているのか?」という知的好奇心が脳を刺激し続ける構成も見事だ。

読み終えた直後、読者を襲う感情は二つある。「凄まじいものを読んだ」という虚脱感と、「頼むか
ら今すぐ続きを読ませてくれ」という強烈な飢餓感だ。「地」は、「人」へと至るための、あまりにも贅沢で、そして残酷な滑走路である。覚悟を決め、この激流に身を委ねてほしい。

今村翔吾著 『イクサガミ 天』

 

 

知能情報学部 4年生 Hさんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名 : イクサガミ 天
著者 : 今村翔吾

出版社:講談社
出版年:2022

もしあなたが「時代小説はおじさんが読むもの」「歴史の知識がないと楽しめない」という偏見を持っているなら、この一冊でその価値観は完全に覆されることになるだろう。今村翔吾の「イクサミ 天」は、歴史小説の皮を被った、極上のノンストップ・エンターテインメントだ。

舞台は明治 11 年。武士の時代が終わりを告げ、刀を奪われた侍たちが生きる場所を失いつつある頃。京都に集められた 292 人の猛者たちに告げられたのは、東京までの道中で殺し合い、「木札」を奪い合うという狂気のゲームだった。
優勝賞金は現在の価値で 100 億円。まるで「イカゲーム」や「ゴールデンカムイ」を彷彿とさせる設定だが、本作の凄みは、それが「明治」という過渡期に行われる必然性にある。時代の波に飲まれ、誇りだけでは食っていけなくなった男たちの悲哀が、このデスゲームに重厚なリアリティを与えているのだ。

主人公・嵯峨愁二郎は、ある少女を守るためにこの修羅の道を行く。彼に襲いかかるのは、異形の武器を操る怪人や、戦闘狂の剣士たち。特筆すべきは、その圧倒的なリーダビリティだ。著者の筆致は驚くほど視覚的で、ページをめくるたびに脳内で鮮明な映像が再生される。もはや小説を読んでいる感覚ではない。ハリウッド級のアクション映画を、文字を通して脳に直接インストールされているような感覚に陥る。

大学の講義や課題、アルバイトに追われる日々のなか、これほどまでに時間を忘れて没入できる作品に出会えることは稀だ。「天」の巻を読み終えた瞬間、あなたは間違いなく書店へ走り、続編の「地」の巻を手に取ることになるだろう。退屈な日常を打破する刺激が欲しいなら、迷わずこの「蠱毒(こどく)」に足を踏み入れてほしい。

植松努著 『NASAより宇宙に近い町工場 : 僕らのロケットが飛んだ』

 

 

知能情報学部 4年生 船本 敬人さんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名 : NASAより宇宙に近い町工場 : 僕らのロケットが飛んだ
著者 : 植松努

出版社:ディスカヴァー・トゥエンティワン
出版年:2015

宇宙やロケットと聞くと、多くの人はNASAのような巨大な研究機関や特別に優秀な人だけが関われる世界を思い浮かべるだろう。しかし本書は、そのような固定観念を大きく覆す内容となっている。北海道の小さな町工場から宇宙開発に挑戦した実話が描かれており、「夢や挑戦は遠い存在ではない」ということを強く感じさせられた。

本書では、著者が経営する町工場が人工衛星や探査機に使われる部品を製作するようになるまでの過程が語られている。ミクロン単位の精度が求められる加工や極低温・高温といった過酷な環境に耐える技術など高度な内容が扱われているが、難しい専門用語は少なくて技術に詳しくない読者でも理解しやすい構成になっている。また、成功の話だけでなく、資金不足、失敗、周囲からの反対といった現実的な困難についても率直に描かれており、挑戦の厳しさがリアルに伝わってくる。

本書で特に印象に残ったのは、著者が繰り返し述べている「どうせ無理」という言葉への疑問である。周囲の大人や社会が無意識に発するこの言葉が若い人の挑戦する気持ちを奪ってしまうことを著者は自身の経験を通して訴えている。町工場という限られた環境であっても、工夫と努力を重ねることで世界に通用する仕事ができるという事実は将来や進路に悩みやすい大学生に対して大きな励ましになると感じた。

本書は宇宙開発をテーマにしながらも、その本質は「挑戦する姿勢の大切さ」にある。特別な才能や恵まれた環境がなければ夢は叶わないという考えを否定し、まず行動することの重要性を教えてくれる一冊である。特に、失敗を恐れずに挑戦を続ける姿勢や身近な場所からでも大きな目標に向かえるというメッセージは学生生活の中で進路や将来について考える機会の多い大学生にとって強く心に残るものだろう。読み終えた後に自分の中にある「できない理由」や「どうせ無理」という考えを見つめ直し、一歩踏み出してみようと思わせてくれる点に本書の大きな価値があると感じた。

パウロ・コエーリョ著 『アルケミスト』

 

 

知能情報学部 4年生 船本 敬人さんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名 : アルケミスト
著者 : パウロ・コエーリョ著 ; 山川紘矢, 山川亜希子訳

出版社:KADOKAWA
出版年:2014

人は誰でも一度は「自分はこのままでいいのだろうか」「本当にやりたいことは何だろうか」と考えた経験があると思う。『アルケミスト』は、そのような人生の問いを難しい言葉ではなく、一人の少年の旅の物語として描いた作品である。物語形式で書かれているため読みやすく、普段あまり本を読まない人でも最後まで読み進めやすい一冊だと感じた。

本書の主人公は、羊飼いの少年サンチャゴである。彼は夢に見た「宝物」を求めて旅に出る決意をし、スペインからアフリカの砂漠へと向かう。その旅の中で王、商人、錬金術師などのさまざまな人物と出会って多くの言葉や経験を通して成長していく。物語自体はとてもシンプルでありながら運命、選択、失敗の意味などの人生に関わるテーマが随所に散りばめられている点が印象的であった。

本書で特に心に残ったのは「本当に望んでいることに正直であることの大切さ」が繰り返し描かれている点である。サンチャゴは旅の途中で何度も迷いや不安を抱くが、そのたびに自分の心の声に向き合って前に進む選択をしていく。その姿は、進路や将来について悩むことの多い大学生の姿と重なる部分が多いと感じた。また、本書では失敗や遠回りも無駄ではなく、それ自体が意味を持つ経験として描かれており「うまくいかない時間」にも価値があるという考え方は印象的であった。

『アルケミスト』は、成功の方法を具体的に教える本ではない。しかし、何かに挑戦することや自分の気持ちを信じて行動することの重要性を物語を通して静かに伝えてくれる作品である。読み終えた後には、自分自身の目標やこれから何を大切にして生きていきたいのかを自然と考えさせられた。特に、日常生活の中で見過ごしがちな小さな選択や出会いが将来につながっていくという視点は印象深く、普段の行動を振り返るきっかけにもなった。人生に迷いを感じている人や新しい一歩を踏み出すことに不安を抱いている人にとって、心に残る一冊であると感じた。

 

望月麻衣著 『満月珈琲店の星詠み』

 

 

法学部 2年生 Iさんからのおすすめ本です。(KONAN ライブラリ サーティフィケイト)

書名 : 満月珈琲店の星詠み
著者 : 望月麻衣著 ; 桜田千尋画

出版社:文藝春秋
出版年:2020

この物語は桜田千尋という方の『満月珈琲店』というイラスト集にインスピレーションを受けて書き下ろされた小説という珍しい特徴がある。そのため作中に出てくるメニューもフルカラーイラストで見る事ができ、より一層物語に没入することができる。皆さんぜひ満月珈琲店で調べてみてほしい。とても綺麗でかつ気分が落ち着く優しいイラストが見られる。

満月の夜限定で色んな場所に気まぐれに現れるという、喫茶店「満月珈琲店」では、直立歩行の巨大な猫のマスターと店員が働いており、それぞれのお客さんにぴったりな極上のスイーツとドリンクでお客さんをもてなす。そんな店に導かれた様々な人々の視点で物語が紡がれていく。スランプに陥ってしまったシナリオライターや不倫しそうになったディレクター、恋する実業家など幅広い。しかしそれぞれに共通点がありリンクしていく。彼らの共通点は何で、どうしてこの店に導かれたのか是非読んでみてほしい。

この話のモチーフの一つに占星術がある。そもそも作者さんが占星術を信じ、それに従って行動する人であり、本作では西洋占星術講師の監修も入っているため、作中で猫のマスターが占星術を行うが、その内容はとても本格的で面白い。占星術という言葉は知っていてもその内容など全く知らなかったので、理解が少し難しかったが非常に興味深くおもしろかった。特に作中の「四千年前の人間も現代の人間も、知識量に差に差はあっても、創造性や思考力に差があるわけではない。当時の人はそれを占星術に注ぎ込んだのです。それは占いではなく、学問つまり科学でした。」という会話は今までの自分の偏見が変わる物だった。占星術や神学や蘭学など当時の最先端の学問もリスペクトすべきだと思った。

またクラシック音楽もこの物語のキーの一つで、様々な名曲が出てくる。「愛のあいさつ」や「悲愴」などでこれを機に聞いてみるとより物語の中に入って登場人物の心情がわかるような気分になれた。心が休まる時間となるので疲れた時に是非読んでほしい。