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[藤棚ONLINE]新図書館長・村澤康友先生(経済学部)ご挨拶

図書館報『藤棚ONLINE』
新図書館長・村澤康友先生(経済学部)ご挨拶

 はじめまして.4 月より新たに図書館長に就任いたしました,経済学部教員の村澤と申します.甲南大学の教育・研究を支える基盤として,図書館は重要な役割を担っております。本学図書館が引き続き学生・教職員の皆様のお役に立てるよう,微力ながら尽力してまいります.何卒よろしくお願い申し上げます.

 「読書は豊かな人間を,議論は機転が利く人間を,執筆は正確な人間を作る」という格言があります.私の知る限り,賢くなるための唯一の方法は読書です.読書を通じて私たちは,時間や空間を超えて偉人から学ぶことができます.漫画でも娯楽小説でも構いませんので,自分を豊かにしてくれる本を見つけ,積極的に読むことをお勧めします.

 私自身を豊かにしてくれた一冊として,私からはジョン・スチュアート・ミル『自由論』をお勧めします.私は本書から,自分の自由を貫き,他人の自由を尊重することの大切さを学びました.また本書は人生の指針となる格言の宝庫です.いくつかご紹介しますので,ぜひ味わってください.

人が良いと思う生き方をほかの人に強制するよりも,それぞれの好きな生き方を互いに認め合う方が,人類にとって,はるかに有益である.

自分の頭で考えず,世間にあわせているだけの人の正しい意見よりも,ちゃんと研究し準備をして,自分の頭で考え抜いた人の間違った意見のほうが,真理への貢献度は大きい.

どんなに正しい意見でも,十分に,たびたび,そして大胆に議論されることがないならば,人はそれを生きた真理としてではなく,死んだドグマ(教条)として抱いているにすぎない.

自分が言いたいことしか知らない人は,ほとんど無知に等しい.

意見の衝突は,熱を上げている当事者には良い効果をもたらさないが,もっと冷静でどちらの側にもつかない傍観者には益をもたらす.

人生の設計を自分で選ぶのではなく,世間や自分の周辺の人々に選んでもらうのであれば,猿のような模倣能力のほかには何の能力も必要ない.

人が一生をかけて完成させ,磨き上げるべき作品のなかで,一番重要な作品はまさしくその人の,人間そのものである.

無気力で無感動な人よりも,エネルギッシュな人のほうがかならず世の中に多くの益をもたらす.

たしかに,天才はごく少数しかおらず,そして,つねに少数のままだろう.しかし,天才が現れるためには,天才が育つ土壌を保持しておかなければならない.

改革の精神は,かならずしも自由の精神ではない.なぜなら,それは気の進まないひとびとにも改革を強いる場合がありうるからだ.

人が自主的に選択したものは,それが本人にとって望ましいもの,あるいは少なくとも我慢できるものだったことを示す.そして,人がもっとも幸福になれるのは,全体として,その幸福の追求手段をその人が自分で選択できるときである.

人は一般に自分の自由よりも自分の権力を守りたがる.

 現代社会を生きる上で,「自由」の意義を正しく理解することはきわめて重要です.自由主義が経済にもたらす利益を論じたミルトン・フリードマンの『選択の自由』と,自由であることに耐えられない人間の弱さを指摘したエーリヒ・フロムの『自由からの逃走』を併せて読むことで,その理解はいっそう深まるでしょう.

 それから漫画も立派な読書の一つです.現代では世界中の若者が日本の漫画を読んでおり,国際交流においても重要な教養の一つとなっています.私の秘かな願いは,甲南大学図書館に日本の漫画の名作を所蔵することです(私の一押しは『進撃の巨人』です).図書館に置いてほしい漫画がありましたら,ぜひご意見をお寄 せください.


【図書館事務室より】
 藤棚ONLINE2026年度第1号は、今年度新たに図書館長に就任されました経済学部教授・村澤康友先生よりご挨拶いただきました。先生からご紹介いただいた「自由」に関する本、とても大切なことだと思いますので、ぜひ読んでみてください。
 図書館では、HPだけでなくX(Twitter)やこのブログでも情報発信していますので、定期的にチェックしてみてくださいね。学生の皆さんのご利用をお待ちしています。

[藤棚ONLINE]全学共通教育センター・西浦太郎先生推薦「風の歌を聴け」

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全学共通教育センター・西浦太郎先生より

風の歌を聴け(村上春樹、講談社、1979年)

 今回、ご紹介したいのは村上春樹さんのデビュー作「風の歌を聴け」です。私は普段、あまり小説を読まないのですが、この作品は、ある人に勧められて読み、とても印象に残っています。

 本書を読んだ後の私の感想は、「この人は化け物だな」というものでした。そして、この人が今後、表現し、生み出していく世界はどのようなものなのだろう、と感じずにはいられませんでした。(他の人にはあまり分かってもらえませんが・・・)。いずれにしても、彼の後の作品の萌芽が多く含まれた一冊なのかもしれません。

 あまりネタバレになると良くありませんが、小説は世界に対して無関心なトーンで進み、最後にある女性との出会いと、別れがあり、そしてDJの言葉があります。

 人の言葉にならない悲しみや気持ちを聴き、苦しむ人と共に居続けようとする姿勢について考えさせられる作品です。

 また、読んだ後に、本のタイトルについて考えてみるのも面白いかもしれません。

[藤棚ONLINE]フロンティアサイエンス学部・赤松謙祐先生コラム「紙の新聞を読むという、ささやかで確かな習慣」

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フロンティアサイエンス学部・赤松謙祐先生より

 近年、「学生はあまり紙の本を読まなくなった」と耳にすることが増えました。スマートフォンやタブレットが身近になり、必要な情報を素早く検索できる現在、その変化はごく自然な流れとも言えるでしょう。電子媒体は利便性が高く、学習や研究においても大きな役割を果たしています。一方で、紙媒体に触れる機会が以前より減っていることも、また事実のように感じられます。

 その影響と断定することはできませんが、学生のレポートや卒業論文を読んでいると、句読点の位置が少し分かりにくかったり、主語が省略されすぎて文意が一度ではつかみにくかったりする文章に出会うことがあります。いずれも致命的な欠点というほどではなく、少し整えるだけで読みやすくなる場合がほとんどです。ただ、「自分の書いた文章を、第三者がどう読むか」を意識する経験が、やや不足しているのかもしれないと感じることがあります。

 そこでおすすめしたいのが、「紙の新聞を読む」という習慣です。新聞記事は、日本語表現のプロである記者が執筆し、さらに校閲のプロが丁寧に確認を重ねています。限られた紙面の中で、事実を正確に、かつ誤解のないように伝えるため、無駄のない構成と明確な日本語が用いられています。言い換えれば、新聞は「正しい日本語の実例集」とも言える存在です。

 特に、新聞の一面記事は、国内外の重要な出来事を簡潔にまとめており、文章の骨格を学ぶのに適しています。毎日すべてを読む必要はありません。一面を中心に、10分程度目を通すだけでも十分です。これを継続することで、自然と「正しい文章のシャワー」を浴びることになります。新聞の記事内容は、新聞社によって傾向が異なりますので、1種類の新聞だけでなく幅広い種類の新聞を読めば、「物事に対する異なる見方、立ち位置」を学ぶことにもなります。

 実際に、筆者の研究室では、長年にわたり学生に新聞を読むことを勧めてきました。全員が同じように効果を実感するわけではありませんが、日々の習慣としてきちんと継続した学生ほど、文章の構成力や表現の明瞭さが目に見えて向上していきました。特別な作文訓練を課さなくても、正しく書かれた日本語に触れ続けるだけで、文章感覚は確実に磨かれていくようです。

 さらに新聞を読むことは、文章力だけでなく、社会への視野を広げることにもつながります。日本や世界が直面している課題、経済や科学技術の動向、文化や教育の話題などに日常的に触れることで、知識が点ではなく線として蓄積されていきます。これは、将来社会に出たときに求められる「社会人力」の基盤にもなるでしょう。

 読む際には、ぜひ「朗読」も試してみてください。声に出して読むことで、文章のリズムや構造がより明確に感じられますし、発声や滑舌の練習にもなります。人前で発表する機会が多い大学生活において、プレゼンテーション時の発話能力向上にも役立つはずです。

 このように、新聞を読むという行為は、特別な道具や多くの時間を必要とせず、文章力・語彙力・表現力を総合的に高めることができる、非常にコストパフォーマンスの高い方法です。図書館に並ぶ紙の新聞を、ぜひ一度手に取ってみてください。そこから始まる小さな習慣が、皆さんの「書く力」を静かに、しかし確実に伸ばしてくれるはずです。

*図書館1階 新聞コーナー

[藤棚ONLINE]マネジメント創造学部・榎木美樹先生推薦『民際学者、アジアをあるく: 中村尚司と仲間たちの時代』

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マネジメント創造学部・榎木美樹先生より

民際学者、アジアをあるく: 中村尚司と仲間たちの時代(林真司、みずのわ出版、2024年)

今年(2025年)は、戦後80年の節目の年だった。日本は、世界唯一の被爆国として広島・長崎の経験を世界に伝え、核軍縮・不拡散に中心的な役割を果たそうと努めている。
例年に比して特徴的だったのは、こうした日本の被害の側面のみならず、日本の加害の側面も直視しようとする動きだったと思う。公式サイトの閉鎖を受けて平和教育の点で話題になった漫画『はだしのゲン』(中沢啓治著)への注目も然りだ。これに著わされた主人公のゲンや、ゲンの生き方に決定的な影響を与えるゲンの父親の姿を通して、作者(中沢)は徹底的に戦争反対を貫き、戦時中の朝鮮人差別とも向き合っている。
こういう節目の年だったからこそ、若者にぜひ読んでもらいたい本がある。
戦後日本の歩みをアジア各国の人びととのかかわりの中で「アジアの一員として」「日本人として恥ずかしくないように」道筋をつけてくれた中村ら先人たち生き方と実践の記録である。
「日本はアジアの一員」を当たり前だと思ってくれる若者、あるいは「日本はアジア民衆を犠牲にしてきた責任があるのだから、それに真摯に向き合わねばならない」と考えている人なら、彼らの思想や生き方が一朝一夕にできあがったものではなく、連綿と連なる託されたバトンのリレーの中にあることを確認してほしい。
アジアに学び、共に生きていく姿勢を貫き、「民際学」を提唱する人たちの記録が『民際学者、アジアをあるく』(2024年、みずのわ出版)である。

「民際学」は、「国家」の枠組みをこえる民衆の学としての知識と実践の体系・あり方で、「あるく・みる・きく」を実践するため、フィールドワークを重視する。私自身がアジアに軸足を置き、フィールドワークに基づくヒト・モノ・コト調べをしたいと思った原点の学問体系である。
民際学を大きく打ち出した中村尚司*は、日本に暮らすマイノリティの生活条件を少しでも改善しようと、東奔西走してきた研究者であり実践家である。彼は、鶴見良行**との知的・実践的交流を通して、その思想と体系を発展させた。 中村が民際学を打ち立てる上で、多大な影響を受け、半世紀以上ともに仕事をしてきたのが田中宏***だ。田中は、在日外国人の処遇改善に長年奔走してきた、この分野におけるパイオニア的な存在である。「日本人として恥ずかしくないのか」という気持ちが、田中の仕事の原動力で、自分が取り組んできた一連の仕事について、日本という国が、どういう国なのかを示す、格好の教材になっていると言う(本書pp.135-137)。その田中の人格形成と生き方に大きな影響を与えたのは、真っ当な「人間であるために」日本人の価値を再吟味し続けた、穂積吾一**** である。
本書の筆者・林真司は、「彼らは、鬼畜米英という、敵役がいなければ成り立たぬ、反動としての興亜主義者ではない。アジア諸民族と平等な関係を作るために、全身全霊を傾け続けた、真のアジア主義者なのである」と評する(同、p.137)。
中村がともに仕事をしてきた彼らに共通するのは、仮想敵を想定して攻撃して奪い取る姿勢ではなく、戦争の加害の側面を意識しつつも、「日本人として恥ずかしくない行い」を念頭に、苦しみのただなかにある人、在日外国人の不運と不幸に対する共感(empacy)と義侠心をベースに人と人との関係性を重視する「民際」の立場で行動を起こすという点である。他者への共感と義侠がゆえの行動の上に「民際学」は立っている。
被差別部落のみならず、在日のアジア人たちも、日本社会において差別や貧困に直面してきた。有色人種に対する蔑視観は、明治以降の欧米を手本とした国家の発展観に基づく。さらに日本はアジア各地を侵略し、大勢の住民を犠牲にしたにもかかわらず、そうした責任を認めようとしてこなかった。これらの反省と義侠心ゆえの「脱欧入亜」であり、国民国家を前提とする「国際」ではない、人・民が中心の「民際」なのである。本書を読むと、民際学のよって立つ思想基盤と実践のありかたの流れが必然であることがよくわかる。

戦後80年の今、また外国人へのヘイトが日本を守るうえで正統性を持つかのような錯覚が起きやすい今だからこそ、この本を手に取り、戦後の日本人の来し方を見つめなおし、行く末を見定めてもらいたい。
中村のバトンは私や同時代に学んだ当時の大学院生・学部生・出会った人々に渡されていると思っている。そのバトンをあなたは受け取ってくれるだろうか。

*)中村尚司(1938年-現在)。経済学者。地域経済論、エントロピー論、南アジア研究などをフィールドにした「民際学」を提唱。主著は『人々のアジア』(岩波新書、1994年)など。
**)鶴見良行(1926-1994年)。アジア学・人類学者。主著は『バナナと日本人』(岩波新書、1982年)『ナマコの眼』(ちくま学芸文庫、1993年)など。
***)田中宏(1937年-現在)。経済史学者。主著は『在日外国人』(岩波新書、1993年)
****)穂積五一(1902-1981年)。社会教育家。アジア学生文化協会、アジア文化会館の創設者として知られる。

[藤棚ONLINE]知能情報学部・灘本明代先生推薦『アンラーン(Unlearn):人生100年時代の新しい「学び」』

図書館報『藤棚ONLINE』
知能情報学部・灘本明代先生より

Unlearn(アンラーン) 人生100年時代の新しい「学び」(日経BP, 2022)

みなさんは、自分の「行動の癖」や「行動パターン」に気づいていますか?
たとえば、レポートの締め切りギリギリにならないと手をつけない、朝起きたらまずLINEやインスタをチェックしてしまう――これらは典型的な行動のパターンです。
実は、思考にも同じように「癖」や「パターン」があります。
「私は数学が苦手だ」と最初から決めつけてしまったり、アイデアを出すときに「先生や周りがどう思うか」を基準に判断してしまったりすることも、思考パターンの一つです。
こうした行動や思考の癖は、時に自分の成長を妨げることがあります。
そのため、これまで自然に身についてしまった癖や思い込みをいったん手放し、新しい見方ややり方を取り入れることを 「アンラーン(unlearn)」 と呼びます。
この本では、
「自分の思考や行動が、無意識のうちに固定化されていないかを自分に問いかける」
ことの大切さが述べられています。
その結果、自分の癖やパターンに気づき、アンラーンすることで、可能性が広がり、学びの効率も高まると提案しています。
誰にでも、行動や思考の癖・パターンはあります。
だからこそ、この本をきっかけにアンラーンを実践し、ご自身の新しい可能性を広げてみてはいかがでしょうか。

[藤棚ONLINE]経営学部・杉山善浩先生推薦『成瀬は天下を取りにいく』シリーズ

図書館報『藤棚ONLINE』
経営学部・杉山善浩先生より

『成瀬は天下を取りにいく』シリーズは、宮島未奈氏による『成瀬は天下を取りにいく』、『成瀬は信じた道をいく』、『成瀬は都を駆け抜ける』の3作品で構成される青春小説シリーズです(完結編の第3作は2025年12月1日発売予定)。第1作目の『成瀬は天下をとりにいく』は、型破りな主人公・成瀬あかりの突飛な行動を通して、自己表現と青春の輝きを描いた傑作と言えるでしょう。滋賀県大津市を舞台にしたこの第1作では、主人公の中学校2年から膳所高校3年までの期間が描かれています。西武大津店への通い詰め、M-1挑戦、坊主頭からの髪の成長実験など、常識をはるかに超える主人公の姿は、読者に爽快感と勇気を与えます。奇抜でありながらも、友人との絆や別れに揺れる繊細な心情も丁寧に描かれ、笑いと涙が交錯します。社会の枠にとらわれず、自分らしく生きることの大切さを教えてくれる青春小説であると実感します。シリーズを通して言えることは、主人公の揺るぎない個性が、周りの人々に影響を与え、彼らの人生に新しい光をもたらす様子が描かれているということでしょう。主人公のキャラクターの魅力と読後感の良さが特徴の小説です。

参考: 宮島未奈「成瀬あかりシリーズ」特設サイト | 新潮社